沖晴くんの涙を殺して

著者 :
  • 双葉社
4.04
  • (57)
  • (65)
  • (43)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 631
感想 : 61
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575243277

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 人の感情の中で喜び以外の4つを失った高校生、沖晴。しかも家族をのみこんだ津波に襲われたなかで死神から命の代わりに奪われたという…なんという設定だ…
    そんな沖晴が出会った元高校教師京香。末期がんで余命一年という。
    「死」に近い場所にいる二人の出会いは偶然か必然か。



    精いっぱい生きた京香のそばで、沖晴が必死に生き始めた日々。その中で生まれた新しい感情。
    名前の付けられないその感情の尊さ。
    死と生、そして命。大切な人を失っても日常は続く。いつかどこかで会ったとき、たくさんの土産話をするために、今日を精いっぱい生きよう。今日、始めの一歩を踏み出そう。

  • 死が身近にあるが故に、沖晴の歪さを受け止められた京香だったと思う。

    また、大切な人の死と、それゆえの感情の複雑なゆらぎを、的確に表現している、と感じた。どうしても涙してしまう、感情を揺さぶられる箇所がいくつかあった。

  • タイトルと ジャケットのデザインと 「最高の感涙小説」というコピーに 「えー?ホントにー?? よくあるやつじゃないのー??」少し 斜に構えて読み始めたけれど...

    まんまと やられた

    ファンタジーではあるし 青臭くもあるのかもしれない

    でも 辛い気持ちにきちんと向き合う
    不安な未来を ちゃんと見つめる

    煩わしくても 周囲の好意に感謝する

    大事なコトがたくさん描かれている

    大切な人を失った経験のある人に読んで欲しい

    素敵なお話でした

  • 喜び以外すべての感情を失った少年が、1人の女性と出会い失った感情を少しずつ取り戻していく……。背景には10年ほど前に日本を襲った未曾有の災害があり、彼と心を通じる女性にも秘密がある。少年は一種の“超人”として描かれているが、その理由はスーパーナチュラルなものだ。ある現象がなければ少年の悲惨な体験が生み出した妄想と思えてしまう。作者が敢えてそこに踏み込んだことを評価したい。いわゆる“喪失と再生”ものだが、彼にはさらに過酷な運命が待ち受けている。わかりきった結末を変えられない現実、生と死の明暗に涙があふれた。

  • 沖晴は、勉強もスポーツもパーフェクトで常に微笑んでいる。周りから浮いていた沖晴には、辛い過去があり…

    京香と出会った事によって、人間らしさを取り戻していく沖晴がとても愛しかったです。あんな悲惨な体験をしていて普通で居られる訳がない。それでも前へ進もうとしている周りから置いていかれてしまった沖晴と、死期が迫っている京香。真逆の二人だったからこそ生きる意味を見出せたのかもしれないですね。

    京香の元彼の冬馬と、奥さんの陽菜との出会いも良い方向へ進めて良かったです。産まれてくる瞬間に出会えてようやく光が見えた気がしました。

  • 感情を失った沖晴くんは、とても不思議な存在。傷が治るっていうのが一番不思議。感情を失うのは聞いたことがあるのだけど。死期が近い人の顔がぼやけたり・・・。だからやっぱり死神に会ったのかなぁ。余命を知ったうえで、そんな風に生きて誰かに深くかかわれる京香をとても強い人だと思った。だから沖晴くんは取り戻せたのかもしれない。最後は涙で、ほっとした気持ちで読了です。

  • 震災で家族を亡くし、喜び以外の感情をなくした高校生の冲晴くんと、余命一年を宣告された元音楽教師の京香の物語。 沖晴が、感情を取り戻していく度に戸惑い苦しむ姿が、読んでいて辛かった。喜怒哀楽、当たり前にある感情ですが、9年間も「喜び」以外の感情を失っていたのだから。 合唱コンクールで歌った曲は「花は咲く」でしょうか? 沖晴と京香の出会いは、あるべきしてあった出会いだと思う。京香がいたから沖晴は前へ進め、沖晴がいたから京香は自分の死と向き合えるようになったと思う。 生きることって、大変だけど愛おしい。

  • 「死神は呪いをかける。志津川沖晴は笑う。」
    いつも笑っている。
    生死を彷徨っている時に取引を申し込まれたら、多くの人が条件を適当に聞き流して願ってしまうだろうな。

    「死神は嵐を呼ぶ。志津川沖晴は嫌悪する。」
    突然感じたことは。
    何も知らない子供のような優しさだったのかもしれないが、周囲から見れば異常なことにしか見えないだろ。

    「死神は命を刈る。志津川沖晴は怒る。」
    広まっていく噂話。
    護りたい気持ちが先行してしまっているのだろうが、全ての情報を知らない他人が口出しするのは違うだろ。

    「死神は連れてくる。志津川沖晴は泣く。」
    戻ってきていない。
    何も感じなかった期間が長ければ長いほど、取り戻した時に溢れてきた気持ちを止めることは不可能だろう。

    「死神は弄ぶ。志津川沖晴は恐怖する。」
    失う悲しみを知る。
    全てを思い出してしまったからこそ、相手の気持ちを考えるよりも先に自分の気持ちを優先したのだろうな。

    「踊場京香は呪いをかける。志津川沖晴は歌う。」
    乗り越えて生きる。
    一生癒えることはない傷になるかもしれないが、それでも向き合うことが出来たのならば大丈夫なのかもな。

    「死神の入道雲」
    失った日に産まれ。
    話すどころか会うことすら出来ないことを、時間はかかってしまったが受け入れることが出来たのだろうな。

  • 東北大震災で家族を失い一人ぼっちになった沖晴。孤独な彼に残されたのは「喜び」という感情。大切な人ができた時、沖晴はさまざま感情を取り戻して強くなっていく。ネガティブな感情も生きていくには必要なものかもしれない。「死」と「生」そして人とのつながり。悲しくて切なくも、人の温かさが伝わる。

  • 震災をきっかけに喜び以外の感情を失くした"沖晴"と、余命一年と診断されて故郷に戻ってきた元音楽教師の"京香"の関わりを描いた恋愛小説のような小説。
    余命幾ばくもないヒロインという設定はありがちだが、そこに感情をなくした相手役という設定が組み合わさり、面白かった。
    読みやすかった。

全61件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部卒業。2015年、「ウインドノーツ」(刊行時に『屋上のウインドノーツ』と改題)で第22回松本清張賞、同年、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞する。著書に、『ラベンダーとソプラノ』『モノクロの夏に帰る』『弊社は買収されました!』『世界の美しさを思い知れ』『風は山から吹いている』『沖晴くんの涙を殺して』、「タスキメシ」シリーズなど。

「2023年 『転職の魔王様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

額賀澪の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×