風紋 下 (双葉文庫 の 3-2)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575505801

感想・レビュー・書評

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  • 姉の家庭内暴力、父はなかなか帰ってこない、家庭内崩壊の家庭で母親が殺された。
    読み応えのある作品で長編にもかかわらずどんどん読みすすめられた。
    加害者妻からの視点もあるので、より深く状況が想像できて生々しい。
    建部の存在が救い。

  • 事件後約1ヶ月が過ぎ、被害者家族と加害者家族を取り巻く影響が、いろんな方向から様々な形で現れて来ます。 被害者家族では真裕子、加害者家族では香織、そして事件を取材する立場から建部の目を通して時間が流れて行きます。事件は自分にとって何だったのか、登場人物それぞれが葛藤する姿に考えさせられました。続編の晩鐘へ続きます。

  • 乃南さんの人物描写は本当に素晴らしいと思う。淡々と描いているようで、ぐっと心を掴まされ、こちらも重い気持ちになります。下巻は被害者家族の再生や主人公とその姉の成長など描いています。加害者家族はやはり苦しいですね。ただ犯人の妻の最終的な行動には納得がいきません。子供を守らずにどうするのか。その後のお話は「晩鐘」へ繋がっていきます。重い重い作品でした。面白かったの一言です。

  • 読みごたえがあった。上巻では、家族を殺害された家庭の混乱が渦巻いて混乱していたけれども、下巻ではそんな中でも日常生活はすすんでそれぞれの気持ちや生活にも変化があり、少しずつ凪いでいく様子が感じられた。
    この先どうなってしまうのか、精神が破綻してしまうのではないかと心配になった真裕子も色々な出会いや別れを通して成長している。少しほっとした。
    消してしまいたい過去、忘れてしまいたい過去、というのはあっても、人はやはりそれと共に生きていかざるをえないと感じた。どんなに隠そうとしても、その隠そうとした自分自身の心が自分を苦しめるのだと思う。

  • ある女子校の先生が不倫の末に殺人事件を起こす。
    なんと不倫相手は、元教え子の母親。
    被害者、加害者それぞの家族がこの事件によって変わっていく。
    普通に生活していた人たちが、事件をきっかけに
    変わっていってしまう。
    事件に関しては、先生がはっきりと罪を認めたわけでもなく、決め手の凶器もわからずじまいでなんとなくモヤモヤ…

  • 結局凶器は何だったんだろう。松永夫婦は二人とも恐ろしい。弁護士にも嘘をつく強かで計算高い夫とお墓の前でも謝らない非常識で自分勝手な妻。こんな事件を起こさなくてもいずれ破綻していただろう。千種ちゃんが立ち直ってよかった。建部が真裕子ちゃんとお互い好意を持つのはなんかありがちで余計な展開かなと思ったけど、よく考えたらそれくらいないとこの物語に救われる点がない。

  • 結局凶器はわからず、しかも容疑者の鞄を押収してなかったとかちょっと考えられないミス過ぎて「え?」ってなったが、この小説は推理小説でも刑事ドラマでも裁判ものでもない。あくまでスポットが当て続けられているのは被害者の家族と加害者の家族、そしてその身内だ。そしてその家族の周りを取り巻く環境に至るまであらゆる社会に影響を及ぼしていることがよくわかる小説だった。普段、殺人事件は他人事のように思っているがそれが自分の家族、または友人や会社の同僚などに起こってしまうと自分の環境にまで影響を及ぼしてしまうので衝撃だ。作者がひたすらにその家族の描写を細かく丁寧に書いているので本当に胸が締め付けられる思い..と言いながら実は当事者じゃないからわかっていない笑。
    「あなたに何がわかるの!」って怒られてしまいそうだ。
    冤罪疑惑でいったん整形逆転になった時の心理状態、そしてまた覆される審議で三度身辺が騒がれる。そこには被害者、加害者本人の問題は置き去りに罪についてだけの裁判なので被害者家族はどこまでも報われない。
    殺人を犯す予備軍の人たち、どうかこの本を読んでよく考えてほしいと願わずにはいられない。

  • 時間のかかる裁判が進んでいる間も犯罪被害者には高校生活や大学受験のようなイベントがあって、普通の生活を送っている人に混ざって過ごさなくてはいけないことに改めて気付かされ考えさせられる。

    無罪になるかもしれない流れになった時は、まさか、と心が震えた。自分が犯罪被害者になったかのように、犯人だと思っていた人に対する気持ちが切り替えられない。最後はホッとした。

    実際罪を犯したのに無罪になった人の被害者が世の中にいるんだろうなと思うといたたまれない。

  • 内容紹介
    「犯罪被害者に限定して言えば、事件の加害者となった人間以外はすべて、被害者になってしまうのではないかと、私はそんなふうに考えている。そして、その爆風とも言える影響が、果たしてどこまで広がるものか、どのように人の人生を狂わすものかを考えたかった」-乃南アサ

  • 重いテーマを扱いながら、息切れすることなく描ききった感あり。惹き込まれました。凄い作品だと思います。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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