今宵も喫茶ドードーのキッチンで。 (双葉文庫)

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  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575525700

作品紹介・あらすじ

住宅地の奥にひっそりと佇む、おひとりさま専用カフェ「喫茶ドードー」。この喫茶店には、がんばっている毎日からちょっとばかり逃げ込みたくなったお客さんが、ふらりと訪れる。SNSで発信される〈ていねいな暮らし〉に振り回されたり、仕事をひとりで抱え込んだりして、疲れたからだと強ばった心を、店主そろりの料理が優しくほぐします。

感想・レビュー・書評

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  • さて、質問です。

     『幸せの反対語は何だと思いますか?』

    さて、どうでしょうか?単純に考えると『不幸せ』という言葉が思い浮かびます。『幸せって文字の上にそれを否定する不が付いているわけですし』ね。ただ、わざわざこんな質問をしていることを踏まえるとそれでは単純すぎるとも感じます。

    私たちは『幸せ』というものを希求しながら生きています。その一方で、そんな『幸せの基準はひとそれぞれ』です。誰もが羨むような生活をしているように見えても必ずしも本人が『幸せ』と思っているかはわかりません。例えば『自分が成長したって感じられたとしたら』それは間違いなく『幸せ』でしょう。しかし、『自分なんて駄目だ、と自信をなくしている状態』であったとしても、それを『この先ののびしろや、あるいは新たな形を見いだせるチャンス、と考えた』としたら、それは『不幸せ』なのでしょうか?

    さてここに、それぞれの日常に行き詰まりを感じる主人公たちの物語があります。そんな主人公たちが『ある街の奥にひっそりと佇む小さなカフェ』を訪れるこの作品。そんなカフェでその先へと続く”起点”を見つける主人公を見るこの作品。そしてそれは、『がんばっている日常から、ちょっとばかり逃げ込みたくなる』、そんな主人公たちの気持ちに触れる物語です。

    『ミナト運輸です』とカメラの前に立つ『小包を片手に』抱えた男性を見て『オートロックを解除』したのは主人公の小橋可絵(こばし かえ)。『海外の翻訳本を主に刊行している』出版社で『大学時代に』『アルバイトをしていた』ことをきっかけに卒業後『翻訳の仕事』を始めた可絵は、『ステイホームが求められ』るようになったことから『一日のほとんどを家で過ごすようにな』った今を思います。『いわゆる「おうち時間」を充実させることがもてはやされるようになった』中に『アラフォーと呼ばれる年齢を迎える』可絵は、『いまこそ、食べものや暮らし方にも気を配る生活に変えていくチャンスなのではと思い、ライフスタイル系の通販サイトやSNSをチェックするようにな』りました。そんな中に『sayoさんの投稿に出会った』可絵は『ていねいな暮らし』とつぶやくと『自分がその住人の一員になれたような気がして、くすぐったくな』ります。そして、届いた小包を開ける可絵が『段ボールを開けると』、そこには『このたびは当店の商品をお迎えいただき、とても嬉しいです。小橋さまの豊かな暮らしのお手伝いができますように』という手書きのカードが添えられています。『購入者ひとりひとりに書いているのだ』と感心する中に『真っ黒い鉄器』を取り出し、餃子を調理し始めた可絵。しかし、『熱を伝導しやすい鉄』に苦戦する中に『もはや餃子ではない』ものが出来上がりました。後始末の『面倒な作業』をする可絵は『疲れたな』と思う中にスマホに『「疲れに効く」と入力してみ』ます。そんな検索結果に『免疫力を高めましょう』というサイトが表示され『免疫力か…』と思う可絵。そんな時、『編集部の坂下さん』から連絡を受けた可絵は『運動不足解消がてら』編集部へと出かけます。『締め切り守ってくださいね』というプレッシャーを感じながら帰途についた可絵は、『夕飯を作る気力もない』と感じます。そして、『大通りを避け、一本奥に入った』時、『あれ?こんなところにカフェ?』と『小さな看板』を目にします。そこには『おひとりさま専用カフェ 喫茶ドードー』という看板の下に『免疫力を上げるコーヒーあります』と『マジックで走り書きしたカードが画鋲で留められてい』ました。『え、免疫力を上げる?これはまさにいまの私のための店…』と思う可絵は『誘われるように』店の中に入ると『いらっしゃいませ。ようこそ喫茶ドードーへ』と『黒い厚手の胸当てエプロンをかけた背の高い男性』に迎えられます。『こんなところにカフェがあるなんて、これまで気がつかなかったです』、『来たい人だけ来てくれればいいと思っているのです』と会話する中に『入り口に近い席に座った』可絵は『コーヒーいただけますか。あの、表に書いてあった免疫力を上げるっていう』と注文します。そして、しばらくすると『免疫力を上げるコーヒーです。ハンドルを下げてからお飲みください』と『フレンチプレス』が使われた『スパイス入りのコーヒー』が届きました。『なんか落ち着くなあ』と感じる可絵。そんな可絵が『おしきせの素敵』に気づいていく、そんな物語が描かれていきます…という最初の短編〈第一話 自己肯定力を上げるやかんコーヒー〉。主人公となる女性が『喫茶ドードー』で何かを掴んでいくというこの作品の土台を独特な雰囲気感の中に描き出した好編でした。

    “住宅地の奥でひっそりと営業している、おひとりさま専用カフェ「喫茶ドードー」。この喫茶店には、がんばっている毎日からちょっとばかり逃げ出したくなったお客さんが、ふらりと訪れる…今宵も「あなたの悩みに効くメニュー」をご用意してお待ちしております。心がくつろぐ連作短編集、開店”と内容紹介にうたわれるこの作品。美味しそうなアップルパイの描かれた柔らかい表紙が食欲を誘います。

    そんなこの作品はそれぞれに異なる女性主人公が登場する五つの短編が連作短編を構成しています。そして、そんな短編をひとつにまとめ上げるのが『喫茶ドードー』です。物語の構成としては、それぞれの人生に何かしら迷いや疲れを感じる女性たちが、ふらりと『喫茶ドードー』を訪れ、そこに”起点”を見出していくという展開です。では、そんな短編共通の舞台となる『喫茶ドードー』がどのようなお店かをご紹介しましょう。

     ● 『喫茶ドードー』について
      ・『駅からまっすぐに続く坂道をのぼりきり、ひとつめの交差点を入って少しだけ歩いた先の路地。その突き当たりにあ』る
      ・『路地の入り口には小さな看板が出ているのに、気づく人はあまり多くありません』
      ・『都会の喧噪から少しだけ遮断され』、『訪れた人はこの店を「森のキッチン」なんて呼んだりもします』
      ・『店内は、厨房というよりも台所と呼んだほうがふさわしいコンパクトなキッチンとカウンターのみで、カウンターには五脚ほどの椅子が置かれている』
      ・『庭にアウトドア用のテーブルセットがひとつ』
      ・『店内は鍋や食器が整然と並び、木のおもちゃや植物なんかも置かれている。柱には小さな額入りの絵が飾られている。力の抜けたようなおどけた表情の鳥は、たぶんお店の名前のドードーを描いたイラストだろう』

    いかがでしょうか?どことなくイメージが湧きそうです。『都会の喧噪から少しだけ遮断され』という言葉が、読者が思い描く『喫茶店』のこうあって欲しいというイメージに上手くあっているように思いますが、いずれにしてもなんだかとても落ち着けそうなお店です。そんなお店には『そろり、と名乗るこの店の主』がいます。では、そんな そろりについて見てみましょう。

     ● 『そろり』について
      ・『丸首のセーターにコットンパンツ。黒い厚手の胸当てエプロンをかけた背の高い男性』
      ・『三十代後半か四十代前半くらい』
      ・『寝癖のような縮れ毛』
      ・『黒縁の丸眼鏡』

    こちらはどうでしょうか?小説に『喫茶店』が登場する作品は多々あり、そんなお店には必ず個性ある店主が登場します。例えば、望月麻衣さん「満月珈琲店の星詠み」の”エプロンを着けた大きな大きな三毛猫”のマスターなどインパクト最大級な存在が登場しますが、それに比べると店主・そろりは常識的なイメージという気もします。それは、ファンタジーっぽいけどファンタジーではない、というこの作品の独特な雰囲気感にはピッタリと言えるかもしれません。

    そんなこの作品はコロナ禍を扱った作品でもあります。そして、その描写がかなり踏み込んでいるのも特徴です。二箇所ほど抜き出してみましょう。

     ・『渡した雑誌は数ページめくったっきりだ。紙類に付着したウイルスは二、三日は生存するらしい。週末まではこの雑誌は他の客に渡せない』。

     ・『ワクチンに関しては様々な意見があるのは知っている。接種するしないは個人の自由だと思うし、体質的に出来ない人もいる。未知のワクチンだから不安だという考えももちろん理解できる』。

    いかがでしょうか?コロナ禍を描写した作品は多々ありますがこの作品はかなり細かい視点で相当の文字数を使って描いていきます。これには少し驚きました。私が読んできた小説の中でもコロナ禍に触れる描写の多さ、細かさは一、二位を争うレベルではないかと思います。この辺り、若干細か過ぎ、踏み込みすぎと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

    また、この作品は上記した通り、人生に何かしら迷いや疲れを感じる女性たちが、ふらりと『喫茶ドードー』を訪れる先に何かを掴んでいくというストーリー展開を軸に展開します。私はこのような構成の作品を”起点もの”と呼んでいます。そんな”起点”は必ずしも喫茶店とは限りません。それこそが作家さんの腕の見せどころです。例えば、青山美智子さん「お探し物は図書室まで」では、” 残りの人生が、意味のないものに思えてね”など人生に思い悩む主人公たちが図書室の司書・小町を訪ねることに”起点”を見出します。また、瀧羽麻子さん「ありえないほどうるさいオルゴール店」では、”世界にたったひとつ、あなただけのオルゴールを作ってみませんか?”というオルゴール店への訪問を”起点”として何かを掴んでいきます。さらには村山早紀さん「コンビニたそがれ堂」は、”大事なものを探していて、それを心の底からほしいと思っている人だけ”がたどり着けるコンビニが”起点”を演出していきます。いずれも連作短編ですが、共通となる”起点”を作るのが場所や人、モノであるということ。そんな”起点”を元に主人公たちが再び前を向いて歩き出す…というのがそのストーリーです。そんな”起点もの”に属するこの作品はそんなお店を訪れる主人公たちにそれぞれの今にあったものが提供されていきます。それこそが、それぞれの短編タイトルに象徴的に記されているものでもあります。五つの短編タイトルをご紹介しておきましょう。

     ・〈第一話 自己肯定力を上げるやかんコーヒー〉

     ・〈第二話 心が雨の日のサンドイッチ〉

     ・〈第三話 自分をいたわる焼きマシュマロ〉

     ・〈第四話 森のおとしものと森のおくりもの〉

     ・〈第五話 幸せになる焼きリンゴ〉

    例えば〈第一話〉では、主人公で翻訳家の小橋可絵はSNSに展開する『ていねいな暮らし』のような言葉に影響を受けるものの、その実践に疲れた日常を送っています。そんな中に訪れた『喫茶ドードー』で『なんか落ち着くなあ』という中にコーヒーを飲む姿が描かれていきます。そんな中に何かをつかんでいくというのが物語の大筋となります。これは、”起点もの”の王道とも言える展開です。一方でこの作品のオリジナリティを見るのが、”起点”となる場所『喫茶ドードー』を主人公が二度にわたって訪れるという点です。これは、少なくとも私が今までに読んできた”起点もの”の作品にはみられないものです。短編の中でそれぞれの主人公たちが二度訪ねるという中に主人公たちの心の内がどのように変化していくのか、一回目と二回目に提供されるものも異なります。そんな具合含めてこの効果はなかなかに絶妙です。”起点もの”はもう読み飽きた…とおっしゃる方にもこの新機軸で読ませてくださる標野凪さんの試みを是非体感いただきたいと思いました。

    そんなこの作品は”起点もの”らしく、極めて前向きな考え方、主人公たちが顔を上げ前に進んでいくための言葉が綴られています。それは当然にそんな言葉を必要としていた主人公たちの元に届けられるものでもあります。例えば〈第二話 心が雨の日のサンドイッチ〉ではこんな言葉が綴られています。

     『だから心が雨の日、つまり疲れ果ててしまったときこそ、考え方をぐるりと変えてしまえばいいんです。発想の転換ですよ。雨はつまらない、憂鬱だ、っていう考え方を、服装を変えれば雨は楽しい、愉快だ、ってね』。

    短編タイトルに含まれる『心が雨の日』という言葉を起点に、悩み苦しみにどう対峙していくか、ヒントとなるような言葉を語りかけてくれる店主の そろり。この抜き出しだけではレビューを読んでくださっている方にどの程度響くものかはわかりません。しかし、主人公の世羅はもとより、そんな世羅の悩み苦しみを読んできた読者にこの言葉はスーッと入ってきます。それは決して強い言葉ではなくあくまでヒントを与えるもの。この作品ではこの点が一貫しています。

    そして、この物語にはもう一つの仕掛けが用意されています。”起点もの”は、その”起点”の側には視点は移動しないという原則があります。あくまでそんな”起点”をきっかけとして再び顔を上げ前に向かって歩き出す主人公、そんな主人公に光が当たる物語だからです。しかし、この作品では、店主の そろりの側にパタパタと細かく視点が切り替わります。具体的には”*”のマークで区分された先に唐突に視点が切り替わります。

     『そろりは冷蔵庫を開けて、庫内灯に照らされた庫内に頭を突っ込んで、食材を選び出しています。「きゅうりにタマネギでしょ。ハーブは絶対必要」とつぶやきながら…』

    そもそもこの作品の〈第一話〉は、そろり視点から開始していますので、そろり視点に切り替わるという表現自体が逆とも言えますが、いずれにしてもこの切り替えによって読者は店主のそろりがどういった人物で…というイメージを掴んでいくことができます。それは、恐らくは多くの方にとって『喫茶ドードー』のイメージそのものであり、この店主込みで『喫茶ドードー』のイメージが形作られているとも言えます。そんな『喫茶ドードー』にホッとひと息つく物語は、最終的に五つの短編が繋がっていることにも気づかされます。”起点もの”の連作短編を読みたい!そんなあなたの選書候補に加えたい一冊、重すぎず、軽すぎず、そんな物語がここには描かれていたと思います。

    『いらっしゃいませ。ようこそ喫茶ドードーへ』

    店主の そろりにそんな言葉で迎え入れられる五人の主人公たち。この作品ではそんな主人公たちが『喫茶ドードー』で提供される飲み物、食べ物に”起点”を見つけていく物語が描かれていました。『おひとりさま専用カフェ』、『喫茶ドードー』を二度訪れるという点に個性を感じるこの作品。その一方で王道の”起点もの”が描かれていくこの作品。

    行き詰まりを感じる世の中だからこそ、こんな『喫茶店』に行ってみたい!そんな風に感じるどこかまったりとした作品でした。

  •  街の奥にひっそり佇むおひとり様専用のカフェ、「喫茶ドートー」。ドートーは、不思議な国のアリスに出てくる飛べない鳥のことのようで、オーナーはそろりと名乗る…。そろりは背が高く黒縁メガネのもじゃもじゃ頭で、人見知りなのかな…。そろりという名前はもちろん実名ではなく、「森の生活」の作者であるソローさんからのとってそう名乗っているらしいんですね!ちょっと「森の生活」にも興味が惹かれますが…。

     「喫茶ドートー」を訪れるのは、日々の生活を頑張り続けている女性たち…そろりと出会いお店の特別メニューを口にしながらそろりと会話することで、頑なだった心に風穴が開くかのような…ちょっと素敵なお話が読めます。そろりは、ちょっと独特な感じだけれど、感受性が豊かで人の心の痛みがわかるんでしょうね…そんな人に一対一で接客してもらえたらいいですよね!!

     ただ、このお店、採算採れるんだろうか??と、ちょっと心配になっちゃいますよねぇ…。そして、訪れるお客さんが女性だけってのも…この後の続編では男性もお客さんで登場するのかな??と、ちょっと期待します。標野凪さんの作品は「本のない絵本屋クッタラ」と「終電前のちょいごはん」の文月にお邪魔しましたが、「喫茶ドートー」が一番好きです(けども…やっぱり、あのお店が恋しい…)。

    • かなさん
      1Q84O1さん、おはようございます。
      ぜひぜひ、直談判して続編を!!
      1Q84O1さん、みんなの期待を背負って頑張ってくださいね、
      ...
      1Q84O1さん、おはようございます。
      ぜひぜひ、直談判して続編を!!
      1Q84O1さん、みんなの期待を背負って頑張ってくださいね、
      いっぱい期待していますからねぇ(@^^)/~~~
      2023/10/30
    • 1Q84O1さん
      責任重大…(;・∀・)
      責任重大…(;・∀・)
      2023/10/30
    • かなさん
      1Q84O1さん、
      もう、コメントしちゃったんだから、
      取り消さないでくださいネ(*^▽^*)

      なんてね、みんなで続編が出るように...
      1Q84O1さん、
      もう、コメントしちゃったんだから、
      取り消さないでくださいネ(*^▽^*)

      なんてね、みんなで続編が出るように
      Halloweenの神様(いるのか??)に、お願いしましょう!!
      2023/10/31
  • 心が癒されるだろうジャンルの本、というふわっとした知識でした。
    図書館で順番が来たので読み始めましたが、今そんなにメンタル弱ってないからどうかなぁ…って思ってました。

    あーすっごい疲れてたんだ、わたし。

    主に仕事で疲れてしまったり、ちょっと立ち止まる事が必要な人へのそろりさんの言葉がとっても沁みました。

    よし!また明日から頑張ろう!!っていうより、そうか、頑張ることだけが解決ではないんだなって思えるような内容でした。上を見て一息つく、みたいな。

    出てくる食べ物もとても美味しそう。お鍋でココアをゆっくり作って、アップルパイが食べたくなりました。

    • aoi-soraさん
      にゃんちびさん、おはようございます^⁠_⁠^
      癒しの本…いいですね。
      美味しいものが出てくる作品、好きです。

      ところで、ずっとフォローさせ...
      にゃんちびさん、おはようございます^⁠_⁠^
      癒しの本…いいですね。
      美味しいものが出てくる作品、好きです。

      ところで、ずっとフォローさせて頂いていると思っていたら、いつの間にか外れてしまっていたようです^^;
      改めてよろしくお願いします(⁠ ⁠ꈍ⁠ᴗ⁠ꈍ⁠)
      2023/12/08
  • 美味しそうな料理やコーヒーのよい香りが、本の間から漂ってきそうな、小さなカフェの物語。
    店主のそろりは、背の高い黒縁眼鏡の人見知りな男性で、夕方から開店する〈喫茶ドードー〉を一人で切り盛りしています。

    背景にコロナ禍の頃の生活が織り込まれているのですが、森の中のおとぎ話を読んでいるみたいで、心が癒されます。

    疲れた時には、ほんの少しのゆったりとした時間と、発想の転換が必要なのですよね。
    悩みを抱えたおひとりさまをさり気なく迎え入れてくれる、こんな素敵な丁寧な空間があったら、鬱々とした気分もすっと晴れて、軽やかになれそうです。

  • おひとりさま専用カフェ『喫茶ドードー』での5篇の短編連作集。
    一生懸命頑張る人を癒やし、頑なになった心をそっと解きほぐす。訪れた人は笑顔でまた自分らしく歩き出せる。


    こんな素敵なカフェ、リピート率100%ですよ!
    季節ごとに行きますよ!いや、もっと頻繁に行きますよ!そろりさんが最後に渡そうとしてくれたエンピツもペンギンも「ありがとうございます!」で、全部持って帰りますよ!
    世界観が台無しだと言われそうですが、それくらい『喫茶ドードー』に行きたい。見つけたい。
    絵本のような素敵なお話でした。

    • かなさん
      ピザまんさん、おはようございます!
      私も行きたいですねぇ…喫茶「ドートー」に(*^^*)
      そろりさんに逢いたいです!!
      でも、おひとり...
      ピザまんさん、おはようございます!
      私も行きたいですねぇ…喫茶「ドートー」に(*^^*)
      そろりさんに逢いたいです!!
      でも、おひとり様で行かなきゃだから
      緊張しちゃいそうですよね!!
      2023/11/23
    • ピザまんさん
      かなさん、おはようございます
      コメントありがとうございます
      確かに!緊張しちゃいますね
      そろりさんとお話ししたいけど、アワアワしてしまいそう...
      かなさん、おはようございます
      コメントありがとうございます
      確かに!緊張しちゃいますね
      そろりさんとお話ししたいけど、アワアワしてしまいそうです(⁠ノ⁠*⁠0⁠*⁠)⁠ノ
      2023/11/23
  • 優しい短編

    凝り固まった考えや日常の悩みを
    ふわっと解決してくれる。
    こんな場所があったら心のトゲトゲも可愛いささくれくらいにしてくれそう。

  • おひとりさま専用カフェの"喫茶ドードー"は、日々の暮らしから逃げ出したいと感じているお客さんに、それぞれの心情にピッタリのメニューを出してくれる。
    そして、お客は店主のそろりさんとの会話を通じ、気づきを得たり、元気をもらったりして帰っていく。

    さらっと読めて、ほっこりした気持ちになれる本。
    こんな喫茶店が近所にあるといいなぁ。。

  • 柔らかな文章表現と、喫茶ドードーの主人そろりさんのおもてなしに心がほっこり癒されました。出会えて良かった作品。
    続きを読むのが楽しみです。

  • 路地奥にひっそりと佇むカフェ「喫茶ドードー」。
    ドードーは、『不思議の国のアリス』にも登場するのろまな飛べない鳥。
    だけどそのおかげで自分のペースが守られていた。
    そんな生き方を見つけたいと店の名前にしたという店主のそろり。

    彼の美味しい料理と優しい会話が、悩みを抱えてやってくるお客の心をときほぐす。
    ほんとうにさりげない感じが、なんとも心地よく思える。
    5話の連作短編集になっている。
    悩みを知っているかのようなメニューにやられる。
    そして、もう一度足を運んでしまう。
    なんとも不思議なお店。


    他人に振り回されて、自分を見失っている…
    これってあるかも。
    ていねいな暮らし〜人それぞれだから自分が快適ならそれが理想の暮らしになるはず。
    必要なのは、ささやかな時間。

    そういうことをそっと教えてくれる。
    自分を労わる甘いものを提供してくれる。
    ゆっくりとゆったりとした時間をくれる。
    そんな「喫茶ドードー」だった。

  • 初めて読む作家さんでした。

    1話完結で、メイン人物であるカフェ店主だけは毎回登場する。NHKとかで週末の夜11時くらいから放送されて、見終わったあとはほっこりして、いい気分のまま布団にもぐりこむ。

    本書を読んで、そんなドラマが脳内で出来上がりました。ところどころにナレーション風の文章が入るので、余計にそんなドラマのように感じたのかもしれません。

    悪くないんです。SNS疲れとか、他人軸の「ていねいな暮らし」に振り回される感じとか(これについてはなんか身に覚えがあるな~)、コロナが出現してからの生活の変化とかうまく物語に取り入れているし、平易な文章でも、心にすっと入る素敵な言葉もある。それぞれの物語の終わりは、主人公とともに前向きになれて、極悪人が出てくるわけでもない。そしておいしそうな料理や飲み物がエッセンスとして物語の中心に据えられる。しかもそれらはただ単に「おいしそう」というだけでなく、「これ、どんな味がするんだろう」と読み手の想像力が掻き立てられるような、ちょっと外国風の料理だったりする。
    ・・・あれ、なんだか、既視感。どうしてもどこかで読んだことあるような気がしてなりませんでした。青山美智子さんかなー、近藤史恵さんかなー、最近読んで、いい意味でも悪い意味でもあまり癖のない作家さんたちを、こうミックスした感じが、どうしてもぬぐえなかったです。最近はこういう作品が人気なんでしょうか。なんか傾向のようなものも感じます。もし、読む順番が違っていたら。本書を先に読んで、さっきの作家さんたちの作品を後に読んでいたら。たぶん同じように思ったと思います。だから、決して悪くはないんです。それに、もしこういう作風が本当に最近の傾向であるのなら、こういった短く、優しい物語が求められているということで、なんとなく、「あぁ、みんな疲れてるのかな、読書で癒されるっていいな」、と思います。

    ただ、私の中でこういう感じはしばらくいいかな、という満腹感がありました。(が、標野凪さんの作品を3つまとめて借りたので、「しばらくいいかな」と言いながらも読みますが。)

    この喫茶店の名前「ドードー」はあの絶滅した飛べない鳥からとったものだとか。実は最近、この「ドードー」という鳥を検索して、そのビジュアルを見て、ふーん、こんな鳥だったのね、と思った記憶があるのですが、何がきっかけでドードーを検索したか思い出せなくて、なんかモヤモヤします。「不思議の国のアリス」にも出てきたりと度々登場する有名な鳥みたいなので、やはり読書で引っかかって検索した気がするのに思い出せない。最後はレビューでもなんでもなくなってしまいました・・・。

    サクッと読めて、ほっこりしたくて、元気をもらいたい時。
    そんな時のお供におススメです。

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著者プロフィール

静岡県浜松市生まれ。東京、福岡、札幌と移り住み、現在は東京都内で小さなカフェを営む現役店主でもある。2018年「第1回おいしい文学賞」にて最終候補となり、19年『終電前のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ』でデビュー。その他著書に、『終電前のちょいごはん 薬院文月のみちくさレシピ』『占い日本茶カフェ 迷い猫』『伝言猫がカフェにいます』『本のない、絵本屋クッタラ おいしいスープ、置いてます。』等がある。

標野凪の作品

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