駅の名は夜明  軌道春秋Ⅱ (双葉文庫 た 39-02)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575526097

作品紹介・あらすじ

我が子を失った夫婦、イジメに遭い転校を決意した少女、離ればなれになった家族の再生を願う少年、妻の介護に疲れ死に場所を求めて旅に出る老夫婦、絶縁した父の余命を聞き故郷に戻る青年……鉄道を舞台にした感動の家族ドラマの最新作。時代小説の名手が贈る、苦難の時代に家族の絆に寄り添う9つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 英語の勉強中、ちょっと一休み。

    この本もよかった~。
    高田郁さん よいですね。
    短編連作。
    特に最初の2編、「トラムに乗って」、「黄昏時のモカ」はシビれました。
    あとがきもよくって、そうだったんだ~ って。
    高田さんのいろいろな思いが詰まった一冊でした。
    この本も手放せないな。。

  • この作品は、電車の中では読めません。
    涙が自然と溢れ出てしまうから。
    収められているのは九つの短編。
    悩む人、苦しむ人、弱い立場にある人たちへの
    温かいまなざしに溢れています。

    一作目と二作目は、
    ウィーンの街で起こる不思議で優しい出会いの物語。
    今は亡き大切な人への想いが
    今を生きる人に力を与えてくれます。

    三作目と四作目は、
    北海道の小さな駅舎が舞台。
    悩みを抱える子どもたちに優しく寄り添います。
    「疲れたら降りてもいいんだよ。次の列車は必ず来るからね」
    なんて素敵な言葉でしょう。

    五作目と六作目は、
    タイトルになっている夜明駅が舞台。
    『駅の名は夜明』は、読んでいて辛かった!
    「人生のどん底にいたら、ひとは、
    駅の名前にさえも救いを求めるのかもしれない」
    この言葉、ずしんと胸の奥に沈みました。

    七作目はちょっと箸休め的な…??
    八作目の『約束』は、
    作家さんならではの視点で書かれた長編かな。
    本当に大切なものを見つけるって一筋縄じゃない。

    そして、最後の『背中を押すひと』。
    大きな愛に溢れていて、目がウルウル。
    「せっかくの一生を大事に生きろ」という
    全霊を込めた父親の大きな愛の言葉。
    この作品は、作者の大切な第一歩だったことが
    『あとがき』に記されていました。

    辛い人には、エールを送るのではなく
    何もしないでただ傍に居ること。
    自分の作品がそんな存在であればいいと、
    高田郁さんはそう締めくくっていました。
    いい言葉だなぁ!

    • いるかさん
      yyさん こんにちは。

      素敵なレビューですね。
      このレビューを読ませていただき、思い出してまた目がウルウルしました。
      高田さんの思...
      yyさん こんにちは。

      素敵なレビューですね。
      このレビューを読ませていただき、思い出してまた目がウルウルしました。
      高田さんの思いの詰まった一冊。
      大切にしたい一冊です。
      これからもよろしくお願いいたします。
      2023/04/04
    • yyさん
      いるかさん

      コメントありがとうございます。
      すっごく嬉しい☆彡

      この本に収められている短編たち、本当に心に滲みますよね。
      私...
      いるかさん

      コメントありがとうございます。
      すっごく嬉しい☆彡

      この本に収められている短編たち、本当に心に滲みますよね。
      私自身、色々と辛い時期もあったし、
      今、大変な最中にある友人もいて、
      ただ傍に居て「いつでも話を聞くよ」っていうのが
      何より心強いってこと、実感します。

      いるかさんのレビューにあった「カーテンコール!」
      ぼちぼち読み始められそうです。
      楽しみ~♪

      こちらの方こそ、これからもよろしくお願いしまぁす。

      2023/04/04
  • じんわりと胸に沁みる短篇ばかり。

    「トラムに乗って」〜娘を病いで亡くした母親が、一緒に行こうと約束したウィーンへ。
    そこでの奇跡に一歩踏み出す希望をもらう話に始まり「黄昏時のモカ」は、金婚式前に亡くなった夫を思ってのひとり旅のつもりが現地の青年との一期一会。
    「途中下車」と「子どもの世界 大人の事情」は、子どもが前に進める未来を見せてくれた。
    「駅の名は夜明け」は、妻の介護に疲れた夫が死に場所を求め辿り着いた駅が…。
    なんとも言えず哀しくなった。
    「夜明けの鐘」で、何処かで救いが用意されていたという文中のことばに、そうかもしれないと思った。
    「ミニシアター」も電車の中での様子が映画のように伝わった。みんなが同じ思いを共有、にほっこり。
    「約束」は、苦しさや辛さ、悲哀さまざまな気持ちに感涙。
    それ以上に涙が溢れたのは「背中を押すひと」。
    息子が老いた父を背負う姿にも涙するが、ちゃんと自分の足で立ち息子の夢が叶うように背中を押してやる父親に涙した。

  •  髙田郁さん、軌道春秋シリーズ第2作。
    本作も、9編からなる短編集です。
     格調高いウィーンの路面電車(トラム)、オホーツクの「レストラン駅舎」、大分の夜明駅舎、自死救済の踏切等を背景に、2編が微妙に重なったり、作家と一読者、旧国鉄職員と喧嘩別れした息子が、救い救われたりと、設定は多様です。

     離婚・死別夫婦、いじめ、介護疲れの老夫婦、孤独な作家と読者‥。第1作よりも、辛く切ない描写が色濃くなっている印象です。
     それでも、やっぱり髙田さん。最後は必ず温かい気持ちにさせてくれます。予期せぬ難事は、一人では乗り越えられずとも、誰かの手を引き引かれつつ脱することができる、と思わせてくれます。

     最後の「背中を押すひと」は、著者の漫画原作デビュー作品(加筆修正)で、髙田郁さんの原点として意義深いもので、髙田ファンのみならず一読の価値があると思います。

  • 髙田郁さんはいつも時代ものばかり読んでいるので、デビューのきっかけになった作品が現代もの(漫画原作)だったことに驚いた。しかも塾講師として働きつつ司法試験を何度も受けていた、ということは小説の書き方もよく知らない素人の状態での特別賞受賞。そして現在人気作家になっている…人生は何があるか分からない。

    『あとがき』に書かれた言葉「何もしない、でも、傍に居る」。
    今作のみならず髙田さんの時代ものにも通じるテーマだと思った。
    決して恩着せがましくなく、あくまで自然体で。ふと気がつくと側にそっと寄り添ってくれる。その存在は一見地味ではあるけれど、しっかり滋味になっていて温かく心に染み入る。

    今作の九つの短編も、巧くいかない日常から逃げ出す人たちの気持ちが丁寧に描かれている。逃げ出す人たちを一期一会で温かく受け入れてくれる人がいて救われる。そんな安心感に包まれた短編集だった。

    「目的地に行くために必要な途中下車もあるさ。疲れたら、降りていいんだよ」
    「寂しいのは本当にそうね。ただ、時々、『ああ、今、傍に居る』と思う瞬間があるのよ」
    「嫌いなものが一致しない方が悲劇」
    今回も共感しきりの文章が多かった。

  • 癒され愛おしい一冊。

    書店で目が合いビビっときて大正解。

    読みながら今自分が求めていたのはこういう物語だったんだとしみじみ浸る。

    そう、まるで温泉に浸かったような瞬間と温もりに癒された。

    9つのささやかなストーリーは小さきながらも大きな温もりのプレゼント。

    奇跡が繋ぐ心、一期一会の優しい時間、少年が抱えた想いの深さ、老夫婦が選んだ終着駅、他人同士が育んでいく優しさ、大切な気づきに何度涙が目尻に溜まり鼻がツンとしたか。

    見ず知らずの人の手の温かさも、家族、男女の愛もこの物語を彩る人、時間全てが今、めちゃくちゃ愛おしい。

  • 高田郁さんのおっかけです(笑)
    時代小説もいいけど、これもよかったな
    鉄道を軸にした9編
    どれも好きだけど
    「ミニシアター」がほっこり、いいなあ
    「夜明け」という駅、大分県にあるんですね
    高台にある無人駅とか
    行けないから想像を膨らませる

    ≪ 日がのぼる 今は夜明けの 暗がりに ≫

  • 軌道春秋の第二弾
    短編9つ…ちょっと悲しい話が多かったな(/ _ ; )

    タイトルになっている「夜明」駅が実在しているとは知らなかった。

    どの話も30ページ程ですが、切ないけど暖かいその後が見える…そんな作品でした。

    人生色々あるよね、頑張っていきましょうよ。
    そんな気持ちになる一冊です(^ ^)

    高田郁さんの文章は読みやすく心にスッと入り込んでくる心地良さがあるなぁ♪

  • 髙田郁『駅の名は夜明 軌道春秋Ⅱ』双葉文庫。

    『ふるさと銀河線 軌道春秋』の続編。著者が川富士立夏という筆名で書いた漫画原作を小説に仕立て上げた短編とオリジナル短編とで構成されている。最初の『トラムに乗って』でいきなり泣かされた。心に沁みるような味わい深い短編9編を収録。

    『トラムに乗って』。最初の短編でいきなり泣かされる。老女の言葉とラストシーンとが重なり、思い掛けない感動の涙に驚かされた。7歳の愛娘を病気で失ったことが切っ掛けで夫婦関係は次第に冷め、ついに破綻。一方的に夫に別れを告げて、ウィーンに旅立った真由子は愛娘が行きたいと願っていたウィーンの街を巡りながら、幸せだったあの頃を思い出す。そんな中、真由子は成田空港で助けた老女とウィーンの街で再会する。★★★★★

    『黄昏時のモカ』。先の『トラムに乗って』と対を成す物語。この話もまた非常に素晴らしい。夫の遺影を携えながらウィーンを旅行する72歳の美津子が主人公。美津子は真由子と偶然出会った老女である。美津子の前に現地の32歳の好青年が現れ、彼女を親身にエスコートする。何か目的がありそうな青年の行動をいぶかしむ美津子。そして、ラストに再び感涙の瞬間が訪れる。★★★★★

    『途中下車』。人生には様々な出来事があり、思うように前に進めない時がある。前に進めないどころか後戻りを余儀無くされる場合の方が多い。都内の中学校時代から同級生にシカトされ、希望を持って入学した高校でもシカトされ続け、ついに母親にその事実を打ち明けた亜希。転校を決意した亜希は祖父母の元から高校に通うために単身、北海道に渡る。この先、亜希に幸あらんことを。★★★★

    『子どもの世界 大人の事情』。『途中下車』と連なる短編。大人のエゴで迷惑を被るのは何時も子供だ。子供の力ではどうにも出来ない大人の事情。もうすぐ小学4年生になる川上圭介はラジオ番組の企画に応募して北海道旅行を手に入れる。圭介の両親は離婚し、圭介は母親と暮らしていたが、かつて父親がいつか連れていくと約束したオホーツクの流氷を見るために独りで北海道へと旅立つ。★★★★

    『駅の名は夜明』。表題作。老人にとって生き難い世の中になったものだ。年金は支給開始が60歳から先延ばしにされ、支給額も目減りしている。健康保険の負担額も増加の一方で、介護保険も充分ではない。現役時代にあれだけ働き、あんなにも払ったのに。これは、政府による詐欺であり、老人は早く死ねと言わんばかりだ。パーキンソン病で寝たきりの妻・富有子を介護する俊三は死を決意し、二人で死ぬ場所を求めて旅に出る。寝たきりの妻を伴い、死ぬ場所を探さざるを得ないという悲しい現実。最後に降り立った駅の名は『夜明』だった。★★★★★

    『夜明の鐘』。タイトルから推測した通り『駅の名は夜明』と対になる短編だった。あの老夫婦の話は未来へと繋がっていたのだ。女友達同士が旅行に行き、なかなか言えないでいた自身のことを互いに打ち明ける。★★★★

    『ミニシアター』。珍しいコメディタッチの短編。車内で起きる人間模様と優しさの連鎖が描かれる。東日本大震災の直後、ガソリンがなかなか手に入らず、次第に走る車の数が減り、街には食糧や水を求めて歩く人の数が増えた。この時、行き交う人たちは見知らぬ人でも互いに挨拶を交わす光景が見られ、悲惨な状況も少し気持ちが楽になったように思う。★★★★

    『約束』。この短編集の中では異質な感じの短編。大人の恋。男と女の不思議な出会いと破局、再会がドラマチックに描かれる。両親に先立たれ、駅の立ち食いそば屋で働き、慎ましく暮らす久仁子は50歳の誕生日を目前に控えていた。ある日の帰り道、踏切に寂しく佇む男性の姿を目にする。その男性が死のうとしていることを察した久仁子は形振り構わずに男性の命を救う。★★★

    『背中を押すひと』。11年前に断絶した父親と息子の物語。幾つになっても親は親、子供は子供なのだ。歳を重ねるとこうしたことを沁々感じるような気がする。11年前に父親と喧嘩した挙げ句に役者を目指して家を飛び出した時彦。ある日、妹の路から連絡があり、数日で良いから家に戻って欲しいと頼まれる。★★★★★

    本体価格720円
    ★★★★★

  • 一般財団法人 高田郁文化財団 | 一般財団法人 高田郁文化財団の公式サイトです
    https://dokusho-culture.or.jp

    駅の名は夜明 軌道春秋II | 双葉社
    https://www.futabasha.co.jp/book/97845755260970000000?type=1

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      現代を舞台にした温もりあふれる9つの物語が収録!時代小説の名手が描く、短編シリーズ第2弾|髙田郁『駅の名は夜明 軌道春秋Ⅱ』 | ほんのひき...
      現代を舞台にした温もりあふれる9つの物語が収録!時代小説の名手が描く、短編シリーズ第2弾|髙田郁『駅の名は夜明 軌道春秋Ⅱ』 | ほんのひきだし
      https://hon-hikidashi.jp/enjoy/159863/
      2022/12/12
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著者プロフィール

髙田 郁(たかだ かおる)
1959年生まれ、兵庫県宝塚市出身。日本の小説家、時代小説作家。元々は漫画原作者で、その時のペンネームは川富士立夏(かわふじ りっか)。
中央大学法学部卒業後、1993年集英社の女性向け漫画雑誌『YOU』で漫画原作者としてデビュー。その後山本周五郎の「なんの花か薫る」に衝撃を受けて、時代小説の執筆に至る。2006年「志乃の桜」で第4回北区内田康夫ミステリー文学賞区長賞(特別賞)を受賞。2007年「出世花」で第2回小説NON短編時代小説賞奨励賞を受賞。そして2008年に同作を含む短編集『出世花』で小説家デビューを果たした。
代表作に、全10巻で300万部を超える大ヒット『みをつくし料理帖』シリーズ。同作は2012年にテレビドラマ化。2013年に『銀二貫』が大阪の書店員らが大阪ゆかりの小説の中から「ほんまに読んでほしい」本を選ぶ「Osaka Book One Project」の第1回受賞作品に選出、2014年にNHK木曜時代劇にて林遣都主演によりテレビドラマ化された。

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