- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575710830
感想・レビュー・書評
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中島らもの幻の対談集です。特に前田日明氏との対談がよかったです。前田氏は格闘家でありますが、読書家のようでもあり、知識が多岐に亘っている印象です。ジャイアント馬場の16文キックの話しは笑いました(P76)。
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2018/03/18 初観測 / 知っていても使うかどうかは別、ゲーム理論が教えるように、相手が使ったときに、使うことができるかどうか。
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第一部は、60頁ほどで各種の「へらず口」を解説してあるのだが、これがめっぽう面白い。
正攻法の悪口(何だそれ?)だけでなく、「押入れにまだ紅茶キノコひそかにかくしているような奴」や「肉っていったら鶏のスキヤキしか思いつかない貧乏たれ」などの殺し文句を持っておけ、という"実践的なアドバイス"がなされている。悪口やへらず口に限らず、極端な表現を使う人間というのは印象に残ったインパクトのあるフレーズをストックしていて、ここぞというときに出してくる。言われた方は「ようそんなこと思いつくなぁ」と言うが、正しくは「ようそんなこと覚えてるなぁ」というべきだと思う。
へらず口の実例を集めた部分はもっと読みたくなる。特に、相手からの悪意ある言葉に対して見事に言い返すものは、思わずニヤリとしてしまう。本書で足りない部分は阿刀田高『ブラックジョーク大全』が補ってくれるかな、という感じ。
最後に「反則技」とそのメカニズムが説明してあるのが興味深い。ここは本文を引いておく。
《「タルトルの野郎、メガネなんかかけやがって、若者のアイドルなんかになりやがって、たれた尻しやがって」
セリーヌの小説『夜の果ての旅』に出てくる一節である。タルトルとはもちろん、J・P・サルトルのことである。
「人がメガネかけようが、尻がたれようがほっといてくれ!」
などと叫んでもムダなのだ。
この技に関しては先にしかけられたほうが負けであって、同じ手で応酬すればそのあまりの次元の低さに自らを卑しめることになってしまう。
かといってクヤシいことはかなりクヤシい。無視するか、正論で立ちむかっていくかしかないわけで、ナンギな技である。》(51-52頁)
著者は別のところで「低次元の罵声に対しては無視するか相手のレベルにまで降りていって相手をするしかない」と言っていた。しかし、小田嶋隆さんが「(ネットの、匿名の)野次や罵声を無視するのにも精神力を消費する」と言ってるように、一度気になってしまうと無視というのはなかなか難しい選択なのも確かである。そういう意味で「仕掛けられた方が負け」「見たら負け」なこの技はなかなかにタチが悪いと言える。
さて、後半は松尾貴史・鮫肌文殊・いとうせいこう・吉村智樹・前田日明の五人との対談。個人的にツボだったのは、松尾氏と吉村氏。
松尾氏が、ジャイアント馬場が旅館の鴨居に頭をぶつけたのをきっかけに「脳天カラタケ割り」に開眼する話に対し、
「にぶいですねぇ(笑)。背の高いのはその日に始まったことじゃないでしょ」
こういうことをさらりと言える人間になりたいっ!(笑)
吉村氏は、「日本入墨資料館」に置いてある『間違いだらけの彫り師選び』のファイルの話や、鳥羽SF未来館の話など、「探偵ナイトスクープ」で取り上げられていないだろう(そしてこれからも取り上げられないだろう)"リアル・パラダイス"の話に爆笑…って、これ、もう「へらず口」関係ないですね(笑)。 -
ま、これは読まなくても良い本だったかな。らもの考え方が良くわかって良いけどね。キッチュといとうせいこう。なかなかの交友範囲を持ってたんだなぁ。
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序盤でへらず口における寝技、投げ技、関節技などを解説して、その後へらず口界における猛者たちとの対談ならぬ対戦をするという構成なのだが、序盤の解説が意外とよく書けている。
ほんの40ページくらいの小品なのだが、レトリックの解説として機能しているだけではなく、文章としてもおもしろいという、なかなかの出来。
それ故、後半に期待してしまうと残念なことに。後半は、まあ、普通の対談。ファン向け。どうでもいい話だけど、高橋源一郎に触れていることにちょっと驚く。二人とも灘高ってのは知ってたけど2年しか離れてなくて、しかも、顔を覚えてるとは思わなかった。
しかし、「面白かったね。さようならギャングたち」って言葉がなんだかとても意外だった。 -
この人は笑いの反射神経がいい。さらに笑いについてむちゃくちゃ細かく分析している(そういう本も出ている)。
そういう理論をつくるやつの言う事はたいていくそつまらないのだけれど、彼のは大阪という水のせいかなんなのか、おもろい。
本書は「へらずの口の叩き方」「二歳でもへらず口はたたける」をテーマに、実践レッスン+後半芸人との対談デスマッチがあったりらも盛りだくさんの一冊。