健全なる精神 (双葉文庫)

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  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575713923

感想・レビュー・書評

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  • 「犬儒派だもの」以来久しぶりに呉智英を読んだ。一見、暴論の様だが、論理的で至極まっとうな考えは健在であった。「空気」や世論に汚染された意識を洗浄するために、時々呉智英を読む必要がある。

  • まあすべてに納得というわけにはいかないけれど、なかなか示唆に富んだ本である。
    三島の自決について三島は自衛隊員を「武士」と呼んだが、「自衛隊員は武士ではなく、自衛隊法に基づく国家公務員」なのだ、三島の「本気」のロマンは(公務員の)「実務」の前に膝を屈した、と。

    なぜかマスコミにたびたび顔をだす「学歴無用論」「リベラル・アーツ」、血液型占いや超能力などオカルト記事もばっさり。

    爽快。

  • 新たな視点と元気が得られる

  • 新聞のエッセイ等をまとめたものなので、短い批評が多いが、相変わらず真面目に皮肉を言っているところが面白い。

  • 健全なる精神は健全なる言論に宿る
    健全なる精神を保つために
    健全なる精神のフットワーク

  • 呉先生の最新文庫。
    双葉から出ている文庫は学生時代から買い続けていてかなり読んでいたりする。
    これまで新聞等に寄稿した文をまとめたものなので、これまでの主張してきたことと重なるものも多かったが、本の性質を考えると仕方がないところか。
    それでもやはりこの人のぶれない主張は読んでいてスッキリする。
    右派左派問わず、矛盾した言動には鋭く批判できる人はそうそういないと思うので。
    中途半端な問題意識を持った人っていうのは結構いて、まあそれはテレビでコメンテーターするような知識人から居酒屋やらブログやらで語らずにはいられない人まで沢山いるが、基本的には言っていることがつまんないんだよね。
    何か偽善的って言うのかな。
    そういうのが溢れている昨今だからこそ呉先生の著作が求められていると思う。
    「いじめた奴には復讐せよ。少年法が君を守ってくれる」で論議呼んだ文章も所収されている。
    今度は一つにテーマを絞った著作が読みたいところ。

  • 呉師の最新著作。

    内容に目新しさがないのは、
    ずっと軸と信念がブレてない証拠かしら。

    いつもの学歴論、反日論、人権論に加え
    今回は団塊世代論がなかなか秀逸です。

    新刊で買うべし。

  • いつも教えられることが多いなあ。知識や考え方においても教えられることは多いけれど、それよりも、正しいと信じることは人の顔色をうかがったり損得を計算したりせず主張するという生き方の姿勢を教えられます。

  • 「ハングル語」などというものはない!
    「すべからく」の誤用は今回も登場。

  •  久々のゴチエイ先生本。方々に寄稿した原稿の集成。一部ネタの重複が見られはしましたが、相変わらずのゴチエイ節で面白かったです。

     修辞学者の香西秀信さんの本では、著者の好む論法は類比の議論である、と指摘されています。
     類比の議論とは、ある事柄Aを非難するのであれば、それと本質的な部分で同質であるBについても同様に非難されなければならない、という「正義原則」に基づくものです。著者が上手いのは、Bに当たる部分には今更変えようもないくらい当然に使っているものを持ち出すところです。そうして「Aがダメなら当然Bもダメって事になるけど、もちろんBに対しても禁止の声を上げるんですよね?」とやりこめるのが著者の得意とする論法です。
     著者を評論家としての師匠筋に当たるという宮崎哲弥さんは、このような相手の理屈をそのまま相手に適用してやり込める論法を「相手の神で相手を撃つ『帰謬法』」と呼びます。いかにもカシコな表現です。私が、相手医の論理を内部から破壊する帰謬法のことを「レトリック北斗神拳」と呼んでるのとは大違いですorz。

     このレトリック北斗神拳、もとい帰謬法は、言論の内容だけでなく、言論をする者の一貫性や態度といった言論行為をも射程に入れます。どちらかというと後者の方に重きを置いた攻撃と言えなくもなく、それは「変な理屈でも構わないけど、お前さん、その理屈、当然自分にも適用するんだよね?」と詰め腹を切らせる形で使われることに表れています。
     著者がこういう論法を好んで使うということは、著者が言論を内容だけでなく論者との一体性で見ていることを示します。論者と言論内容の一貫性を求める著者にとって、一番許せないのは「自分がどういう前提に基づいて議論を構築しているか、その足下が見えておらず、自分の議論の射程がどこまでなのかもわかっていない奴」なんだろうと思います。
     それは、極端な例ではありますが、本書の初めの方に収録されている坂東眞砂子の「子猫殺し」についての文章にも表れています。著者は、板東氏のやってることには賛同できないとした上で、それを責め立てる人たちも、そもそもペットを飼うこと自体が人間のエゴであり、両者の差は程度問題でしかないということに気づいていないことを指摘しています。
     本書を読んでいると、著者のイラッとくるポイントが「お前はどうなんだよ!」にあるんじゃないかな、と思えてきました。

     足下を掬うような原理的批判や、言葉に関する批判も、読んでいてスカッとしました。
     最近、韓国・朝鮮人名だけでなく、中国人名までも中国語の発音に従うべきとするような風潮がありますが、「何で日本人が外国語の発音や読み方まで勉強しなきゃならないんだ」という批判はしごくもっともだと思います。そもそも、日本語は音韻が比較的単純な言語ですから、それを以て外国語の発音が表記しようとしても限界があります。結果として、漢字の音読みとも、現地語の発音とも違う、何とも奇っ怪な表記・発音が生み出されるわけで、こういうことをするときには、「する・しない」以前にまず「できる・できない」を検討しろよ、と思ってしまいます。

     比較的短い文章を集めた本なので読みやすいです。本書を読んでたら、久しぶりにゴチエイ先生の本を読み返してみたくなりました。

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著者プロフィール

評論家。1946年生まれ。愛知県出身。早稲田大学法学部卒業。評論の対象は、社会、文化、言葉、マンガなど。日本マンガ学会発足時から十四年間理事を務めた(そのうち会長を四期)。東京理科大学、愛知県立大学などで非常勤講師を務めた。著作に『封建主義 その論理と情熱』『読書家の新技術』『大衆食堂の人々』『現代マンガの全体像』『マンガ狂につける薬』『危険な思想家』『犬儒派だもの』『現代人の論語』『吉本隆明という共同幻想』『つぎはぎ仏教入門』『真実の名古屋論』『日本衆愚社会』ほか他数。

「2021年 『死と向き合う言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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