翻訳家の奏は、クリスマスを控えたある日、久しぶりに街に出て、いい気分になった酔っ払いたちに絡まれてしまう。
繊細な容姿で女性と間違えられて、声をかけられたのはいいが、男だとわかっても相手は引いてくれる様子はなかった。
元々口下手な上に、幼少期から海外を転々としていたせいで、あまり人と話すことが得意ではない奏は、その誘いをうまくかわすこともできず、困り果てていた。
そこに、端麗な紳士が現れ、そっと断ってくれる。
「これから接待に向かう途中だった」という男は、酔っ払いを追い払った後も、体よく仕事を断り、奏の誘いに乗ってくれた。
人と話すときには緊張しがちな奏もどういうわけだか、男に対してだけは自然体で話を交わすことができた。
その男の細やかな気配りにいつになく楽しい時間を過ごし、気づけばホテルのベッドの上にいた。
突然のことに、戸惑う奏だったが、きざした本能に従い、恥じらいながら大胆に身体を開いた。
けれど、翌日、別れ際に男から差し出されたお金に、奏は自分が「男娼」と間違えられていたことを知る。
お金を受け取ることに躊躇いを感じた奏だったが、男に会いたいという一心から、正体を明かさずに逢瀬を重ねることを決意する。
本当の名前を聞かず、封筒の模様から「薄水さん」と名づけた彼と身体をつなげるが、ある日、追い討ちをかけるように、薄水が奏を「友人にも紹介したい」と言い出して――。
という話でした。
口下手から、男娼だという誤解を受けて。
その誤解を解くために、言葉を尽くすこともできないから、あえてその誤解を受けたまま、付き合いを続ける奏。
そんな奏に「紹介したい」と言った二人の友人は、奏が考えた、新たな身体を売る相手を紹介するということなんかではなくて、た二人の男女・萌黄と紫は、奏のことを大事にしてくれて、仕事が忙しく、なかなか奏に会えない薄水の代わりに奏のことを構ってくれる感じで、修羅場は回避。
ただ、他にもう一つ、トラブルの種はあって。
それは薄水につく秘書の存在。
彼女は、奏にお金を渡して「別れるように」と言ったり。
レストランで奏に恥をかかせたりする。
そして最後には、とっておきの罠を仕掛けてくるんですが。
それにも何とか事なきを得て、ハッピーエンド! でした。
なんというか……
途中から、薄水の仕事が忙しくなって、あまり出番がなくなって。
その代わり出てきた萌黄と紫がなんともまぁ、魅力的な二人で、なんかこっちがメインなんだと思ってしまいそうな勢いでした。
いいキャラでした。
後、最後のオチもかなりよかったです。
多分、冷静に考えたら、薄水と奏の恋愛は切ない系だったと思うんですが、萌黄と紫のおかげで、華やかな話になっていたと思います。
魅力的な脇役さんを楽しめる余裕のある人はどうぞ!