天の蚕が夢をつむぐ ~大島紬ものがたり (フレーベル館ノンフィクション)

著者 :
  • フレーベル館
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784577050392

作品紹介・あらすじ

日本が世界に誇る大島紬は、2021年7月、世界遺産登録された鹿児島県・奄美大島の伝統的な織物だ。
奄美大島で大島紬の織元をしている南修郎さんは、還暦を機に、この伝統技術の原点に立ち返ることを思いつく。
南さんの夢は「100%奄美産の大島紬」というストーリーのある着物をつくること。
そのために彼は、現在輸入に頼っている絹糸でなく、奄美で育てた蚕のまゆから糸をとることを考え、鮮やかな黄色をした自らのブランドまゆ「奄美黄金繭(あまみおうごんまゆ)」をも開発する。
さらに、ガの専門家たちの協力で、古代の大島紬が奄美の野生に棲息するヤママユというガのまゆからとった糸を使っていた事実をつきとめる。
次なるチャレンジは、奄美のヤママユを捕獲して卵から育て、天然のまゆから糸をとった大島紬をつくること。それは果てしない道のりだが、南さんは、70歳を超えた今も、伝統工芸品である大島紬の歴史に新たな1ページを加えるチャレンジを続けている。
すでに名誉を得て完成したかに思える人でも、まだ新たなことをやってみようとする姿勢のすばらしさ、尊さを描き、夢に向かって行動を起こすことの大切さを、今を生きる子どもたちに伝える、「伝統」と「革新」をテーマにしたドキュメンタリー読み物。
ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 大島紬の凄さは、それとなく知っていたが、ここまで深い歴史と、受け継がれてきた技術に裏打ちされたものとは思わなかった。その超絶技巧ゆえに、分業化が進んだと思うのだが、著者はゼロから製品となって送り出すまでを、自分自身で体験する。さらに飼育が難しい天蚕を使った新しいプロジェクトを立ち上げ、最後までやり遂げている。気の遠くなるような地道な研鑽の連続。読んでいても息が詰まりそうになったが、非常に感動した。
    いつかそんな着物に袖が通せるようになりたい。夢のまた夢である。

  • 「1300年の歴史を持つ大島紬の伝統に立ち返り、野生のヤママユ(天蚕)の糸から着物をつくることにチャレンジした「織物名人」のドキュメンタリー」

    大島紬に興味を持った著者が、蚕の養殖、糸をとり、染め織りまで、全ての工程にこだわり、百%奄美産の大島紬を産み出した南修郎さんの人生を紹介する


    〇南さんの人生、家族愛、奄美愛、好きへの情熱がまぶしい
    〇取材した著者らしく、蚕と職人に焦点をあてた物語。織物や染色に焦点をあてたものもいつか読みたい。
    〇奄美大島の蚕、蚕から糸をつむぐ、その出会いと発見が面白く興味深い。紬に生涯をかけた南がドン引きする研究者の行動には笑った。
    〇巻頭の奄美黄金繭、奄美の自然、ヤママユなど、豊富な写真やイラストが読みたい気持ちを引き出してくれる。
    〇伝統工芸に対する関心
    〇花綵列島

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著者プロフィール

谷本雄治(たにもと ゆうじ)

愛知県生まれ。児童書を中心にノンフィクション作家として活躍。
主な作品に『ぼくは農家のファーブルだ』(岩崎書店)
『カブトエビの寒い夏』(農山漁村文化協会)
『ご近所のムシがおもしろい!』(岩波書店)
『天の蚕が夢をつむぐ ~大島紬ものがたり』(フレーベル館)
『牧野富太郎ものがたり 草木とみた夢』(出版ワークス)など。

「2023年 『牧野富太郎物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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