- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784577051863
作品紹介・あらすじ
吹き抜ける風が心をゆらす——
ぼくらは自分のままでいたいだけ。そうあるように、ありたいだけ。
7つの短編が連作に。
軽やかに、でもたしかに、
心に響く『ぼくら』の話。
episode1 シロクマを描いて
親友・早緑(さみどり)とけんかして以来ひとりぼっちの六花(りっか)。放課後、スケッチをする彼女の前に現れたのは……。
episode2 タルトタタンの作り方
お菓子作りが趣味の虎之助(とらのすけ)。ある日、見知らぬ先輩に「タルトタタンは作れるか」とたずねられ……。
episode3 ぼくらのポリリズム
吹奏楽部のパーカス、夏帆(かほ)。元気のない後輩・湊(みなと)を保健室に連れていくと、そこにはおなじクラスの男子がいて……。
episode4 いたずら男子の計画は
テストも終わって浮かれる葵生(あおい)。親友の悠磨(ゆうま)と颯太(そうた)の3人で、「中2らしいいたずら」の計画を考えるが……。
episode5 ヘラクレイトスの川
受験勉強に励む3年生の正樹(まさき)。ずっと心配していた不登校気味の妹・梢恵(こずえ)が、不思議なことを言いだして……。
episode6 ウサギは羽ばたく
新船中のカリスマ・羽紗(うさ)。記憶の古傷に向きなおり、かつての友人・玲衣(れい)と話をするため向かった体育館の裏で……。
episode7 くろノラの物語
異動を控えた養護教諭の三澄(みすみ)先生。保健室をたずねてきたひとりの男子と話すうちに、昔のことを思いだし……。
感想・レビュー・書評
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学校では、「笑顔」で「普通」に「何事もなく」過ごしているように見える生徒たち。
でも、本当はいろんな悩みが溢れているんだなぁ...と実感した作品。
クラスや部活、委員会、色々な場所に所属する生徒たち。
学年や性別、年を取ればどうってことのないことが、いちいち肌にヒリつくように付きまとう。
著者は、そんなはた目には目立たない、ちょっとした傷をつけてくるカケラたちを集めて、物語にしてくれた。
これはおばさんが何か言うよりずっといい、子どもに寄り添ってくれる物語だと思い早速学校図書館に購入した。
予感は的中。いつも誰かが借りている、予約の入る本になっている。
2023.6詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
多感な中学生の短編連作集。
主人公それぞれの悩みや葛藤がなかなかリアルに描かれていた。
話を聞かせてと言ってくれる誰かがいるって、すごくありがたいこと。
そして心の内を話す時って、まとまった文章でなくても、もやもやしたそのままの気持ちを伝えればいいんだよな。
黒野君みたいな子がいてくれたら、自分の進むべき道が自然と見えてきそうだなと思った。
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『キャンドル』以降、目が離せない作家さん。
今作は7つの連作短編集。
同じ中学に通う1年生から3年生までの登場人物は、それぞれ出身小学校、部活、兄妹というようなつながりがある。
聞くことが大事だとわかっていても難しい。
大人も子どもも「らしさ」の枠にはまってないと不安になる気持ちと、その「らしさ」に苦しめられる気持ちが痛いほどよくわかります。
中学生、そしてその年頃の子供を持つ親世代にも強くおすすめします。 -
10代の頃はちょっとした言動に傷付き、心が折れてしまう。なのに、相手の気持ちを深く読み取れずについつい軽い気持ちで心無いことを言ってしまい、傷つかせてしまう。
そんな描写がリアルに感じられる1冊。
最後、みんなの傷が癒やされていく様にホッとして、その中心に常にいる黒野くんの存在が大きい。 -
親友と仲違いして教室にも部活にも居場所がない六花(りっか)
趣味のケーキ作りをひけめに感じている虎之助
友だちと楽しんだいたずらに傷ついた葵生(あおい)……
白い観音様の見える新船中学校を舞台に紡がれる7つの物語
《軽やかに、でもたしかに、心に響く『ぼくら』の話。》──帯の紹介文
『あの子の秘密』(2019年)でデビュー、同作で第49回児童文芸新人賞(2020年)
『キャンドル』(2020年)、『りぼんちゃん』(2021年)と、子どもたちの心をがっちりつかまえた若手作家、20か月ぶりの最新作、2023年4月刊
深いテーマが重くならないのは
悩みを抱える中学生たちに読者が自分ごととして寄り添えるのは
著書ならではのユーモアとアイロニー、そして設定と構成の妙のなせるわざ
登場するどの子も愛おしくなる
〈4作目は、中学校を舞台にした短編連作です。主要キャラクター総勢15名全員が、いままでの村上作品の登場人物に匹敵する程、魅力的で、たしかな質量を持った子たちになっております(自分で言うスタイル)。短編連作ならではの、軽やかで奥行きのある物語を、どうか楽しんでいただけると幸いです。〉──「NetGalley」著者メッセージ
読むほどに、作中のある人物が著者に重なって見えてくる
以下、ネタバレにならない範囲で、名言集
ずっとあなたに気づいてほしかった。ほんとうは、私が気づくべきだったのに。
いや、わかったようなことを言えるのは、なにもわかってないからかもしれない。
ぼくらは自分のままでいたいだけ。そうあるように、ありたいだけ。
「あのね、夏帆。世界をさ、かんたんに敵と味方のふたつに分けるなんて、できないんだよ。いろんな人に、立場と事情と気持ちがある」
──心配しないでいい。ちゃんと伝わる。きっとなにもかもうまくいく。
世の中に、「素直ないい子」なんて生きものが、存在するはずがない。
全力で応援したい一冊 -
人と話すのがこわくなる。
なにをはなしたら、その人の気分を害してしまうのか、迂闊に口をひらけないなとおもってしまった。
最後はふっと救われるんだけど、読んでいる間ずっと、がんじがらめにされているようで。 -
まさに群像劇。すごく優しい物語。登場人物たちにちょっとしたヒントや手助けをくれる、不思議な存在もそれはそれで良いんだけれど、黒野くんはそうじゃない。みんなと同じように悩んで感じて、考えている一人の中学生なんだ。
三澄先生と黒野くんの会話、助けてやろうと思ってるんじゃなくて、ただ好きだからいっしょにいるって良いな。黒野くんの飄々としたキャラも、タイトルの「聞かせてくれよ」も良い。 -
7つの短編が連作に。
何気なく言っていた言葉、
この人はこうだろうという決めつけが
誰かを傷つけ苦しめてるのかもしれない
誰かに話を聞いてもらうだけで
楽になるよね
それをこの物語では黒野良輔がしている
かつていたくろノラみたいに
テセウスの船
ヘラクレイトスの川