短編小説集 朴泰遠「小説家仇甫氏の一日」ほか (朝鮮近代文学選集)

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  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582302356

作品紹介・あらすじ

若き小説家(事実上、無職のインテリ青年)が、自宅を出てソウルの街をぶらつく。その半日の徘徊で出会った人と風景を、J・ジョイスの「意識の流れ」の手法を使いながら技巧的な文体で綴る『小説家仇甫氏の一日』。植民地都市における青年の鬱屈と倦怠を描いた朴泰遠の表題作をはじめ、抵抗と屈従、憤怒と悲哀、参加と韜晦といった錯綜する思想と感情が交差する植民地支配下の近代朝鮮の多面的な表象空間を描き出し、朝鮮文学のイメージを塗りかえる新しい短編小説集。

著者プロフィール

一九一〇~一九八六 筆名、号は泊太苑(パク・テウォン)、夢甫(モンボ)、仇甫(クボ)、丘甫(クボ)など多数。一九一〇年にソウルに生まれる。幼い頃から文学に強い興味を示し、李光洙、廉想渉、金東仁などの作品を通じて文学に傾倒してゆく。京城第一公立高等普通学校に在学中の一九二六年に詩「ヌニム(姉上)」が「朝鮮文壇」の佳作に入り、早くも文壇にその名を登場させる。三〇年に渡日し、法政大学の予科に入学するも中退。しかし留学時代に現代芸術全般にわたり幅広い見識を得る。初期には主に詩を書いていたが、のちに短編小説を書き始める。三三年には李泰俊の誘いで「九人会」に参加、その頃から文壇の注目を集めはじめ、中編「小説家仇甫氏の一日」(三四)などを発表、芸術派作家としての地位を確固たるものにしてゆく。特に一九三六年には、長編「川辺の風景」、全編がひとつの文章からなる「芳蘭荘の主」など、彼の代表作となる作品が多数発表された。特に当時の都市の様子を精密に描写した「川辺の風景」は、「リアリズム小説」、「世態小説」などと称され、話題を呼ぶ一方で、プロレタリア作家らから批判を受けるなど、文学界に論争を引き起こしもした。一九三九年以降は、主に自らの体験をモチーフにした小説や中国の歴史小説の翻訳などを発表していたが、一九五〇年の朝鮮戦争勃発を機に北に渡り、平壌文学大学で教鞭をとったりしながら主に歴史小説を執筆した。代表的なものとして「甲午農民戦争」(一~三部、七七~八六)があるが、これは北朝鮮で最高の歴史小説と評価されている。朴泰遠の初期の小説は文体や技法、テーマなどにおいてモダニズム小説の特徴を如実に示しており、作品のイデオロギーより文章の芸術性や人物の内面の描写を重んじている。こういった作品傾向から、韓国では友人である李箱とともに三十年代を代表するモダニズム作家とされている一方で、北朝鮮では歴史小説の大家と評価され、 七九年には国家勲章も受けている。

「2021年 『オリオンと林檎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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