- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582477481
作品紹介・あらすじ
室町幕府滅亡までの約20年の実態とは。将軍足利義輝期の政治を押さえつつ、信長―義昭の政治史を読み解く。「天下」と地方の関係性を重視、「天下人」の理解への再考も促す。
感想・レビュー・書評
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織田信長との確執から京都を追われることになった足利義昭は室町幕府最後の将軍としてそれなりに知られており、例えば戦国時代を舞台とするテレビドラマなどにもよく登場する。ただ、その実際のところについて、どんな将軍だったのか、また将軍としてどのような意味があったのかなどを考えることはほとんどないだろう。
本書は、その室町幕府の晩年に生きた実の兄弟にして征夷大将軍を務めた足利義輝と足利義昭の考察であり、1歳違いの、またお母さんも同じ真の兄弟であるふたりがたどった足跡である。本書では本質的には相反する兄弟として解釈が進む。
歴史上の重要な地位にあったこのふたり、ただ兄と弟としての関係に視線を移せば、また少し違った感覚を想像することもできるだろう。
もしも現代に生きていたらどんな兄弟だっただろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
近年、戦国期畿内地方の研究が急速に進んでいる。これまで信長上洛以前の畿内地方は、混沌といったような言葉で片付けられてきた。しかし実際には、信長に先行する先進的な政策を推進した三好政権(1549-64)が存在したことや、戦国期足利幕府が一定の自律性を有して独自の政治を行っていたことが、次々と明らかにされている。
本書は第13代将軍足利義輝と第15代将軍足利義昭の兄弟が将軍を務めた時代に注目し、「天下」(=中央、畿内)と「地方」の関係を通して当時の世相を活写する。中央については、義輝が従来将軍の暮らした御所ではなく二条に城を築きそこに暮らしたことに注目し、そこに地方から尊崇され多くの献上品を受け取る将軍の姿を描き出す。さらに義昭政権についても、義昭期に新たに築かれた二条城に着目し、信長・義昭関係が如何に推移したのか、対地方政策に留意しながら説明する。地方については、足利幕府が地方の大名に与えた栄典(朝廷の官位や幕府の役職)を中心に、足利幕府が地方と取り結んだ関係を説明することで、なぜ足利幕府が地方の大名から尊崇されたのかを明らかにする。
戦国期足利幕府に関する書籍は、近年多く発売されている。しかし本書のように、足利幕府の対地方政策(外交)に特化した書籍は、これまでなかったのではないか。自律的な存在としての戦国期足利幕府の重要な側面を紹介した書籍として、この時代・地域に関心を持つすべての人にとり必読の書籍といえる。
本書の記述は三好政権の研究者とは大きな隔たりがある。第一に本書では「三好政権」という用語の使用を避けている。また二条城築城や義輝外交はいずれも、三好政権の研究者からは極めて否定的な評価を受けてきた。しかし戦国期畿内地方の研究が深化したのは比較的最近であり、通説的な理解が確立されたとは言い難いのが現状である。今後多くの研究者の議論を通じて、一定の着地点が見出されることを期待したい。
(文科三類・2年)(1)
【学内URL】
https://kinoden.kinokuniya.co.jp/u-tokyo/bookdetail/p/KP00032447
【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus -
義輝による造営から破却までの京都二条城の歴史的位置づけや、遠方との通交姿勢から見える義輝期と義昭期の政治姿勢の違いといった点が興味深かった。戦国期から織豊期への断絶と継承という連続的な視点が面白い。
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東2法経図・6F開架:210.47A/Ku77t//K
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詳しく知りたい人に最適だと思う