アール・ブリュット アート 日本

制作 : アサダワタル 
  • 平凡社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582620573

感想・レビュー・書評

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  • アール・ブリュットについて保坂健二郎朗監修で美術の分野、医療福祉、ジャーナリスト、思想家などからの視点で論じている。
    1940年代ジャン・デュビュッフェによる収集と作品の展示が始まり、協会設立までされている。精神医学と芸術との課題共有についても詳細に論じている。アウトサイダー・アートという言葉との比較も興味深い。
    以前、アール・ブリュット展覧会を見た時に障害者の作品を見世物にしているような単純に感動するとはいいがたいもやもやとした違和感が生じ楽しめなかった。それが払しょくされたわけではないが、生まれた背景や欧米と日本との違い、可能性については視野が広がる体験となった。

    覚書
    描く側、見る側、双方に対する絵画の力 「自然のままの/生の/精製されていない/事実そのままの/野生の/原始的な」という多義的な意味を持つブリュット(保坂)
    「美」の基準や真実は一つではなく、角度を変えれば全く異なる「知性」や「美」が発見できる。(嘉納)
    「誰が発見するのか」ということが大事 批評や鑑賞の対象に足りうるのか、診断がその芸術作品と関係があるのか「症状としての芸術」
    「表現者を演じる訓練を得ていない表現者」
    倫理綱領(1)批評の禁止(2)鑑賞の禁止(3)診断の禁止(4)目撃し、関係せよ(斉藤)
    「純粋」で、「切実」な行為や表現が「逸脱」した存在となったときに「芸術」(中村)
    「人は何のために表現をするのか」「この表現はこの人にとって何なのか」
    「造形表現をすること」への動機が「自分を保つこと、守ること」「自分を残すこと、存在を証明すること」(はた)
    「支える」という行為がいかに大事か 作家を支えるシステム テオの場合は、画商という職業において糧を得つつ、そこで得た利益を兄ゴッホに還元している(保坂)

  • アールブリュットと呼ばれるものの意味や具体的な内容を知りたくて本書を手に取った。

    とてもよく整理された章立てで、おぼろげながら理解することができた。

    個人的には、以前、しょうぶ学園のotto&orafuの演奏を聞き、これまで感じたことのない奇妙な音の連なりとまとまりのあるようで、どこかずれている、しかし心に響いてくるという不思議な音楽体験をしたことで、アール・ブリュット芸術に関心を寄せるようになった。

    彼らの演奏のような、一部に障害をもった人の芸術は通常私たちがさらされているノイズに妨げられることのない「純粋無垢」な表現、ととらえることもできるが、彼らの世界の捉え方を「無垢」と決めつけるのもまた違和感があった。

    では、アール・ブリュットとはなにか、また既存の枠組みを超えようとする現代芸術との差異はなにか、など考えてみると、日本のアール・ブリュットの変遷やその間のアートシーンを並列して見ていく必要がある。

    本書は、そうした試みを行い、非常にうまく整理された一冊だと考える。もう少し踏み込んだ議論は個別の著者の書籍や論文にあたるのが良いと思う。

  • そういうカテゴライズさえなくなることが望ましいのだろう。

  • 保坂さんの最初の稿が特に勉強になった。日本のアール・ブリュットをずっと見てきた人だからこその意見も入っていて、読んでよかったと思った。

    ただ、本の中の全てに同調できたわけではない。ちょっと神格化、あるいは陶酔しすぎじゃないのか?と思ったところもあった。

    基本も発展も抑えているし、なによりこの手の本の中では読みやすい印象だったので、日本のアール・ブリュットについて知りたい人にはおすすめしたい一冊になった。

  • 日本のアール・ブリュットについていろんな観点で語られている。すごく理解が深まるというものでもないがサラッと読める。
    海外ではアール・ブリュットは主に統合失調症のアートである(ヴェルフリ然り)が、日本では知的障害を含む障害者のアートと捉えられている、なるほど。アウトサイダーアートという表現は障害者=アウトサイダーというのが嫌われて昨今あまり使われないが、ファインアート=既存の美術界=インサイダーの対義語としては的を射た表現という見方もある。ふむふむ。定義は揺れる。
    斎藤環氏のあまり掘り下げられていないが「アール・ブリュット作品はどれも似たりよったりといえる」という指摘は以前から興味を持っている。緻密な書き込みや反復など、共通してそうさせる何かが脳の働きにあるのだろうか。

  • 作品紹介は少なめ。対談、論考。斎藤環、中沢新一。

  • 二年前に
    アドルフ・ヴェルフル展に
    寄せてもらった時の
    難解であるのに心惹かれる
    不思議な感じを持ったことが
    蘇ってきた

    自分の中の
    アール・ブリュットが
    心地よく刺激され
    心地よく整理された
    そんな気がする
    一冊です

  •  この本のタイトルはちょっと不思議だ。「アール・ブリュット」と「アート」と「日本」という位相の異なる三つの言葉が並列している。通常「アール・ブリュット(art brut)」は「アート(art)」の下位概念とされているから、少なくともその二つを並べるのはおかしい。だがここではあえてそうしているのだ。どういうことか。

  •  日本のアウトサイダー・アートについて書かれた一冊。

     主に障害者のアートについて書かれている。
     こんな活動があったのか。アートや福祉、精神医学、哲学など色んな専門家の文章からアールブリュットを知ることができる。
     もっと色んな作品が見れるとなおよかった。

  • 中沢新一氏が、原発やTPPを否定し世界を再設計することとアール・ブリュットを研究するのは同じと言っている。なるほど!

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