知覚の扉 (平凡社ライブラリー)

  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582761153

作品紹介・あらすじ

幻覚剤メスカリンが、かつての幻視者、芸術家たちの経験を蘇らせる。知覚の可能性の探究を通してハクスリーが芸術を、文明の未来を語り、以後のさまざまなニューエイジ運動の火つけ役ともなった名エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 著者によるメスカリン体験記。メスカリンにかなり肯定的な論調で、普通に試してみたくなる。

    人間は本来、自分の身に起きた事は全て記憶でき、宇宙で起きる全てを知覚できる意識「偏在精神」であるが、生存への適応のために脳や神経系である「減量バルブ」を通して意識の量を少なめに調節している。メスカリンは「減量バルブ」を緩め、人間を本来の姿に近づけるとある。

    天才と言われる芸術家は、生来的に「減量バルブ」が緩んでいるため、私たち常人とは物の見方が違うとあり、ゴッホやフェルメールの作品を解説している箇所が興味深い。特にベルニーニの彫刻「聖テレサの法悦」に関し、作家の感受性は人物ではなく衣服の質感に現れている、という捉え方はとても共感する。

  • メスカリンが如何にして人間の知覚に変容をもたらすかをその体験から記された本。
    一部、実際に体験しないと分かり得ないであろう内容もあるが、人間が言語と時間などにどれだけ縛られているかなど、自分が未知である事は痛感した。

  • 「すばらしい新世界」で有名なオルダス•ハクスリーによる名エッセイ。

    ハクスリーはいわゆるヤク(メスカリン)推奨派で、本書もその効能や在り方を多くの文化的/宗教的/芸術的背景から擁護している。
    時代が時代なら発禁本だったろうなぁコレ…。

    ハクスリーが持つ文学的才能から語られるメスカリン効能はとても読んでいて楽しく、作者のイキイキとした息吹を感じることができる。
    それでいて宗教的恍惚を『CO2の濃度の増大で減量バルブとしての大脳の働きが弱まり…』と科学的に看破している点は素晴らしい。決して体験だけに委ねるわけではなく、理論とそれが払う代償(対人関係)にも気を配っていてハクスリーの知見の深さが窺える。

    内容は分かりにくいが、先に解説を読んでるとスッと読めるかもしれない。最近読んでる本はそんなんばっかだなー…。

  • ・知覚の扉澄みたれば、人の眼に
     ものみなすべて永遠の実相を顕わさん
     ──ウィリアム・ブレイク

  • 幻覚剤メスカリンを自身に投与し、体と精神の変化を記録した貴重な書籍。彼の観察力と語彙力が高すぎて、前半は理解に苦しんだが、後半は一気に読めた。

    言語は人間の唯一の特権で、知識を得るために必要不可欠だが、その言語が同時に人間の脳みその可能性を制限しているという理論には賛成。

    付録と訳者の後書きもすごく面白かった。

  • 大学時代に一度、今回50代を目前にして再購入して二度目の読了。
    何度読んでもわからない。
    怖いものみたさで読むのだが、2回読んでもやっぱり怖いとか以前に「わからない」。

    知らなくていい世界があるということなのか…。

  • これ発売時に買った。20歳代のころ。
    ドアーズの元ネタになったというか、昔のミュージシャンがみんな読んでたサイケ系幻覚剤についての本。
    こういうの漁って読み倒してたなぁ。

    脳と薬物。実体験をもとに書かれた小説。例えばひとつの絵を見て突然それが何を意味するのか理解出来たり、経験者には言わずもがな。再版されたんですね。

  • ニューエイジやヒッピームーブ花盛りの60年代米国を生きた若者たちが読み、彼らの精神を熱く駆り立てたハクスリー著のメスカリン体験談にして、薬物による効能と宗教における恍惚体験、この二つを結びつけながら、ブレイクやゴッホ、静物画や西洋絵画を引き合いにし、非論理的な超越世界を論じる。
    とても面白かったが、その前に読んだベンヤミン先生の大麻とメスカリンの記録の方が良かった。正直この本のビッグネームに対して拍子抜けした感がある。
    ハクスリーがザ・文筆家として社会や文化や芸術など、広範の領域にまで論述を伸ばす「外向き」の文章なら、ベンヤミンは執拗に個人的主観の枠組みから陶酔体験を機械的に記述する、まさに「内向き」の文章で、どちらもエッセイと記録という形式上の差異はあるが、個人的にはドラッグ体験記としてはベンヤミンの方が優れていると思う。
    あとベンヤミンの方が友達と一緒にやってる感じが超グッドなんだよな。
    ハクスリーは人間の言語にまでその視野を向けているあたりが特に素晴らしく感じた。
    理性が脅かされた時代故の神秘体験への憧れと東方ロマンス。

  • 脳が不要な情報を制御してるという話は、たしかにそうなのだろうと思う。
    集中してると音が聞こえなくなるとかあるので。
    それを解放した時の感覚が記載されているが、素晴らしく思えてならない。
    ただ、人により地獄のようになるといい恐ろしい。
    難しいところもありましたが、最後まで読めました。
    付録はちょっと読めませんでた。

  • ちょっと難しいところが多くて飛ばし読み。

    しかし、語感や言語は、脳機能は人間が受け取る情報を制限するためのバルブという表現はとても面白かった。

    たしかに、言語を覚えた時点でかなり考え方は制限されるし、それを解放した先に芸術があるというのも納得できる気がする。

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著者プロフィール

1894年−1963年。イギリスの著作家。1937年、眼の治療のためアメリカ合衆国に移住。ベイツメソッドとアレクサンダー・テクニークが視力回復に効を成した。小説・エッセイ・詩・旅行記など多数発表したが、小説『すばらしい新世界』『島』によってその名を広く知られている。また、神秘主義の研究も深め『知覚の扉』は高評価を得た。

「2023年 『ものの見方 リラックスからはじめる視力改善』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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