オランダの共生教育 学校が〈公共心〉を育てる

  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582834826

感想・レビュー・書評

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  • 「地球イチバン~地球でイチバン“子どもにやさしい”教育 20120308NHK総合」でオランダの教育を知り、もう少し知りたいと思ったところに出会った本。
    オランダの教育事情にびっくり!
    理想!でも実現できている・・・何年か先にどれだけ差がつくのだろうと思うと怖い。
    自分のできるところで何かできないのか、と切に思う。

    そしてこの本を読んでいる間に、「アナザースカイ尾木直樹 20120413」も放送された。
    やはり放ってはおけないと思っている人たちがいるのだと思う。

    サラマンカ宣言 1994年6月
    「子どもはすべて、教育に対する基本的な権利を持っており、満足できるレベルの学習をすることができ、また、それを維持できる機会を与えられなくてはなりません」

    共生教育とは~他の人とともに生きていく意欲と姿勢を持つ人間を育てる教育
    共生教育を支えているのは、「特別支援教育」「シチズンシップ(市民性)教育」

    学校とは、新しい世代の子どもや若者を育てる学校という場を大人たちが、理想と考える社会についての意思を表明する場として設定する。
    共生を原則とする社会をより良く実現するために、子どもたちに共生社会への参加を練習させる

    「社会というものは、その社会を構成しているすべての個人が完全に成長できるようにと真実をもって取り組むときにはじめて、その社会自身にとって真実のものとなる。そして、社会が、こうしてみずからの方向を切り開いていこうとするとき、学校ほどに重要なものは他に何もない。

    学校がその社会の独りひとりの子どもを奉仕の精神を持ってしっかりと包み込み、効果的に自分自身で物事を決めることができるような道具を用意してやりながら、学校という小さな共同社会の中の一員として導き育てるとき、わたしたちは、価値のある、好ましくて、調和的な、より大きな社会を、最も深く最善のものとして保障することができるだろう。」ジョン・デューイ『学校と社会』1915

    第一部 自尊感情と自己肯定感を育てる~共生教育の要
    第一章 特別支援教育
    障がいは本人のせいではない
    制度
    ①もう一度一緒に学校へ政策1996
     対象は軽度の学習困難や発達障がいを持つ子どもたち&秀才
    ②リュックサック政策2003~追加予算を背負ってくることから
     対象は身心障がいを持つ子ども

    「教育遅滞」という考え方
    心や体の問題ではなく、外から環境要因のために発達が送らされていると考えられる子どもの状態のこと、子どもが本来持って生まれた力が外的要因によって十分に発達させられない状態にあるという意味
    外国籍、低学歴の親は子どものせいではない
    2歳児からの無料オランダ語教育 オランダ語強化教育

    第二章 個性尊重の授業
    進歩的な学校~生徒たちがそこにいることに意義を感じられる教育的環境にあり、生徒自身が、一定のカリキュラムの枠組みの中で、また教員と相談しながら、自分の学習の道筋を自分で決め、学習を自分で進め、その成果を自分で評価できる学校、さらには、他の生徒と協力して仕事をすることができる学校

    デューイ~子どもたちをにんげんとして尊厳を尊重して育てることを重視した(当時は産業社会の歯車として育てようとする学校教育があった)

    先生は本当に何でも知っている人なのでしょうか。
    子どもは本当に何も知らない存在なのでしょうか?
    そもそも、先生といういのは何でも知っていなくてはならないものなのでしょうか。
    先生、上巳、年長者は、本当に生徒や部下や年少者から学ぶことのなにもない、いつも多くの知識を持っている人たちなのでしょうか。

    サークル対話は、「教える者」「教えられる者」「知っている人」「知らない人」という一方向に情報や知識が流れる関係を前提にした授業を否定するものどちらも平等に発言の機会を持ち、お互いに学び合う関係であることの形を体現している

    先生の役割は、学ぶとはどういうことなのか、学び方を教え助け導くため。学びへの意欲を引き出し、学ぶことの大切さと楽しさを教える

    多様な能力を引き出す~多面的インテリジェンス(アメリカ人ハワード・ガードナーの考え)
    1空間把握的インテリジェンス(空間スマート)
    2身体的インテリジェンス(身体スマート)
    3言語的インテリジェンス(言語スマート)
    4論理・数学的インテリジェンス(数理スマート)
    5自己内省的インテリジェンス(思考スマート)
    6人間関係的インテリジェンス(社会スマート)
    7自然派的インテリジェンス(自然スマート)
    8音楽・リズムインテリジェンス(音楽スマート)

    経験を重視する~learning by doing
    ラーニング・バイドゥーイングbyデューイ 実際にやってみて学ぶ

    古い考えでは、子どもは未熟で未完成なものというふうに考える。
    だから規則を作っていつも監視しなければ秩序がうまれない、大人になるということは大人社会の規則を守れるようになること、と考える。だが、オランダでは、規則には元来それを守らなくてはならない意味があり、その意味を子どもたちが自覚できれば、子どもたちは進んで規則を守る行動ができるようになる

    「選ぶ」ことと「責任」を持つこと

    学校の施設の考え方
    「ニッチェ」と「ロフト」
    子どもは同じ進み(成長)ではない、一人で思考する静かな時間と場所が必要
    トライ・アンド・エラー野考えやってみて失敗して成長する

    成績表ではなく、ポートフォリオ
    「自慢できるもの」
    「良くできたと思うもの」
    どういう点で~自分で選ばせる
    大人は子どもが今どういう位置にあるかを知る、クラスの位置ではなく、その子自身の能力の中の位置を知るべき

    勉強は学校でするもの=学校でやればいいと、学校での勉強がおろそかになるから
    ただ、家庭での話題や遊びの中に補えるものをいれるのはよい

    第三章 社会に参加する市民を育てる
    いじめられている子が自分自身を守れるようにすることも大事

    個人主義の功と罪
    自分の行動や言動の責任をだれにも転嫁できず、孤独と不安でたまらないというふうにもなってきた。
    一方で、自分さえよければいいという利己主義や独善主義を増長させた
    個人主義の浸透には両刃の剣がある

    みんな違って当たり前「ピースフル・スクール」教育
    違いを尊重する
    例)
    自分の好きなことを言う
    お互いの言葉を聞く それぞれ好きなことが違う
    「世の中には、いろいろな人がいて、いろいろなものについていろいろな考え方をしますね。もしある人が自分の考えが正しいと思う時、私たちはそれを「意見」と呼ぶ。

    民主的な態度は放っておいて育つものではない
    ミシャ・デ・ウィンター氏 ユレヒト大学の教育学

    もし本当にそのことについて何も知らずに言うのであれば、それは偏見。自分でおもっていることが、本当にあなたが思っているとおりなのかどうかは、まず、じぶんでよく見て確かめてからでなければいけません


    民主的な法治国家の基本的な価値意識
    表現の自由とは
    自分がかんがえていることを述べたり書いたりしてもいい、言いかえれば他の人の意見に反対の意見を言ってもいいということを意味する。すべての人は自分の信念を説き広めること、自分の意見を他の人に対して提示することが許されるただし、法律に決められていることは守る

    平等とは
    人々が同党の価値をもつものであることを意味する。その際、人々がどんな考え方をするとか、何をしんじているかということは一切問題されない。
    異なる考え方や習慣を持つ人たちを自分自身や自分が属している集団よりも価値が低いとしてはならない

    他の人への理解とは
    人や集団がなぜ一定の考え方や習慣をもっているのかはいけいについても理解しよう。なぞそれらがその人たちとって重要なのかを考える。

    寛容とは
    他の人の意見や行動を、自分が同意できなくても受け入れることをいみする。
    法律の上で。

    自律とは
    誰もが自分がどういう人になりたいのか、どういう人生をおくりたいのかについて、自分自身できめることができること

    不寛容の拒絶とは
    寛容の逆

    第四章 先生を支える社会制度
    トレーナー制度 先生のトレーナー

    第五章 学校が未来をつくる
    わたしたちは、皆、自分が生きている時代の産物だ。そしてその時代を再生産するようなやり方で行動している、古臭いジョークに「魚たちは何について話をしているのかを知るのは困難だ。でも、彼らが水について話しているのではないことは確かだ」
    社会に生きているわたしたちにとって、産業化時代が私たちの世界観に与えている影響がどんなに大きなものか、ということを実際以上に認めている人は多分hごとんといないことだろう。この、わたしたちにとっての「水」
    つまり「文化」のなかにすっかり埋め込まれてしまった物事の理解の仕方・取扱方などに、私たちはすっかりなじんでしまっている。それだけに、わたしたちが、この産業化時代の一つの制度、つまりわたしたちが「学校」とよんでいるものを、根底から考え直し、もう一度新しい形でつくりなおしてみようと試みるとき、それがとても厄介なことになるのであるピーター・センゲ『学習する学校』

    大人にとって、いったん慣れ親しんだ自分のものの考え方を客観的に見直したり、修正することは容易ではない。修正したくとも環境が許さないこともある

    保護者のコミュニケーション
    *お母さんモーニング
    お母さんたちの茶話会だが、先生がファシリテーターとなり、テーマを持って話す
    *ストーリーバッグ・プロジェクト
    オリジナルバッグとその中身の作成
    テーマの絵本+それを活用するためのゲームやその他のツールを作って
    入れ、貸し出す。

    終章 競争から共生へ
    ポルターモデルー生存のための共生

    「ボローニャ・プロセス」(日本は参加していない)

    「イエナプラン教育」
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%8A%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3%E6%95%99%E8%82%B2


    リヒテルズ直子
    http://www.naokonet.com/

  • 34 心や体の問題ではなく、外からの環境要因のために発達が遅らされている、と考えられる子供の状態を「教育遅滞」と呼んでいます。

    37 オランダでは、〈教育の自由〉の理念のもと、小学校の先生たちには、学級経営、授業の展開、さらに教材の選択などに大きな自由裁量権が認められています。

    41 教授の言うところの「進歩的な学校」とな、「生徒たちがそこにいることに意義を感じられる教育的環境にあり、生徒自身が、一定のカリキュラムの枠組みの中で、または教員と相談しながら、自分の学習の筋道を自分で決め、学習を自分で進め、その成果を自分で評価できる学校、さらには、他の生徒と協力して仕事をすることができる学校」を指しています。

    42 デューイは、子どもたちを人間としての尊厳を尊重して育てることよりも、産業社会の歯車として育てようとする当時の学校教育の変化を深く嘆いています。

    47 サークル対話は、まず、「教える者」と「教えられる者」、「知っている人」と「知らない人」という一方向に情報や知識が流れる関係を前提にした授業を否定するものです。

    56
    Learning by Doing

  • 表紙の装丁に惹かれて本書をとった。多くの点で示唆や感銘を受けたが性教育についてのあまりにもドライで中庸的な姿勢は本邦の国民性に相容れないと感じた。

    オランダ国民の教育や市民参加への意識が高いだけでなくて、それ合わせた教育政策を行うオランダに強く興味を覚えた。本書の最後にある提言については首肯できない点があるが、非常に感銘を受けた著作であった。

  • オランダが不思議でならなかった。大麻も売春も合法の国。
    なぜだろうと思っていた時にこの本に出会った。
    読んでいる最中は、こんなに大切に育てた子ども達になぜこれらを合法とるすの?と思った。
    半分を過ぎた頃、疑問は折り合った。
    自らの行動に責任を持たされ、
    幼い頃から行動を未際める。
    大人の概念でなく、自ら考えた自らの判断。
    そのようなトレーニングを積んでいる彼らには、
    そこを自ら判断する能力も備わっているという考え方なのだと思う。
    大麻も売春も彼らが必要で選んだものという考えなのだと思った。

    至らぬ先入観を植え込まない。

    オランダの最強オレンジのサッカーを思い出した。

  • オランダの共生教育とは?
    他の人とともに生きていく意欲と姿勢を持つ人間を育てる教育。
    その上で、実現する為に、特別支援教育とシチズンシップ教育が重要である。
    学校は、二つの重要な役割がある。
    ①新しい世代の子どもや若者を育てる学校という場を、大人たちが、理想と考える社会についての意思を表明する場として設定すること。
    ②子どもたちに共生社会への参加を練習させること。


    オランダの制度
    リュックサック政策
    普通校か、特殊教育校かを選ぶのは、あくまでも、子どもの代弁者である親

    もう一度一緒に学校へ政策
    子どもたち一人一人の発達状態を定期的に、客観的な方法で、モニター

    オランダの学校教育は、高校卒業まで無償 公立、私立も同額

    二歳児からの無料オランダ語強化プログラム
    移民の子どもたち向け

    生徒自身が一定のカリキュラムの枠組みの中で、教員と相談しながら、自分の学習の道筋を自分で決め、学習を自分で進め、その成果を自分で評価できる学校、さらには、他の生徒と協力して仕事をすることができる学校

    多面的インテリジェンス
    ラーニングバイドウ


    この学校が私たちに教えているのは、規則は元来それを守らなくては、ならない意味があり、その意味を子どもたちが自覚できれば、子どもたちは、進んで規則を守る行動ができる。

    学習の内容や進めかた、教室での役割は、可能な限り子どもたちに選ばせる。そして、自分が選んだことに責任を持たせる。

    授業は自立学習が中心である。



    すごくこの著書は、勉強になりました。

  • オランダは子供の適正、教育進度に応じた教育が適用されている。
    子供の頃から考える、議論する文化がある。
    低所得者層、障害児でも普通の学校に通える努力をしているし、オランダ語教育にも力を入れている。
    性教育も非常にオープン。
    そんなオランダでもいろいろと民族問題はある。特にイスラム系との間で。
    オランダの学校はみんなでマルクなって議論する、先生が一方的でない。

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著者プロフィール

リヒテルズ 直子 Naoko Richters
九州大学大学院修士課程(比較教育学)及び博士課程(社会学)単位取得修了。アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国に歴住後、1996年よりオランダに在住。オランダの教育及び社会について自主研究し、成果を著作・論考で発表。2011年3月、JAS(イエナプラン・アドバイス&スクーリング社)よりイエナプランの普及に貢献した人に贈られるエイル賞を受賞。「一般社団法人日本イエナプラン教育協会」特別顧問。日本での講演やワークショップ、シンポジウムのほか、オランダでは、日本人向けのイエナプラン研修や視察を企画・コーディネートしている。著書に『手のひらの五円玉 私がイエナプランと出会うまで』『祖国よ、安心と幸せの国となれ』(以上ほんの木)、『公教育をイチから考えよう』(日本評論社)、『今こそ日本の学校に! イエナプラン実践ガイドブック』(教育開発研究所)、共著に、『親子が幸せになる 子どもの学び大革命』『いま「開国」の時、ニッポンの教育』(以上ほんの木)など著書多数。子どもたちの「対話力、考える力」を引き出す『てつがくおしゃべりカード』『てつがく絵カード』(以上ほんの木)日本語版翻訳者。

「2020年 『イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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