平謝り: K-1凋落、本当の理由

著者 :
  • ベースボール・マガジン社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784583105086

作品紹介・あらすじ

史上唯一、紅白歌合戦に視聴率で勝った番組"K‐1"有頂天プロデューサーの栄光と転落!「世界一難しいビジネス」の実態を当事者が初激白。K‐1の運営会社「FEG」破産、その本当の理由がここにある。

感想・レビュー・書評

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  • 谷川さんという人がいかにK-1の社長としての自覚がなかったかがわかる本。
    この人は、自分のことをプロデューサーと思っていて、世間にインパクトを与えることしか頭にない。そして、その自慢がたくさん書いてあります。

    谷川さん自身が、「格闘技はテレビ番組を中心に考える」と宣言しているだけあって、視聴率至上主義の谷川モンスター路線が見事にブレない方針であったことは理解できた。
    プロデューサー業に専念できたらもう少しK-1は延命したかもしれません。(谷川モンスター路線はまったく見たいと思いませんが)
    石井館長から引き継いだ時点で役割分担が明確になってなかったのですね。
    やっぱり、言い訳ばかりする谷川さんは好きになれない。
    谷川さんが嫌いな人は、この本を読むことによってもっと嫌いになる凄い本だ。

  • 谷川さんがなにを考えてK-1を運営してたのが分かった。

    K-1を世に出す為に、メディアと戦っていた。
    普通の人はまずイベントを成功させる為の段取りを考えるのだが、谷川さんはまずメディアであるフジテレビ、日本テレビ、TBSに放送してもらうにはどうすればいいのかを考えて来たんだと。
    だからそのテレビ局の意向に沿った形で進めていくことになり、モンスター路線と言う形が生まれた。
    結果的にK-1を衰退させてしまったんだと思うけど、K-1を伸ばして行くにはその方法が最善だったと考えたらしい。
    逆にこのモンスター路線がなければここまでメディアに出ることはなかった。


    秋山vs.桜庭のことやバンナはキャラだったとか、裏側を見れたのは面白かった。

  • K-1, FEGの谷川さんの懺悔録。
    なんだかんだいって、一つの興業を破たんさせた(本書を信じるならば、かなり不運な部分もあるが)責任者なので、破たんビジネスの一つとして読むと面白い。
    延滞税を含めた税金10億円の支払いの金策、
    ファイターには20%の源泉税がかかるのでファイトマネーが1000万円ならば1200万円が必要となること、外国人でも年収1000万以上ならば消費税5%も支払わなければならないこと。
    著者が色々なコネを使ってスポンサーを見つけてきても、最終的に石井館長のところで駄目になるなど、凋落会社の社長と会長の関係みたいだったなぁ。
    でも、谷川さんは格闘技関連でまた復活してきてほしいですね。
    日本の格闘界の復活とともに。

    感動的な部分は、Dynamaite USA開催しようとしてもアメリカのユニオンやコミッションが嫌がらせで開催に対してNoを言ってきたときに登場したYOSHIKI。州知事のシュワルツェネッガー、ロス市長からの支援を取り付けて、最後はヒラリー・クリントンまで持ってこようとした行動力と影響力。YOSHIKI恐るべし。

  • 平謝り
    K-1凋落、本当の理由

    著者 谷川貞治
    ベースボール・マガジン社
    2 0 1 2 年1 0 月2 8 日発行

    2003年12月31日夜、民放地上派3局が格闘技を長時間中継した。
    K-1,PRIDE,イノキ・ボンバイエ。そして、TBS系列が中継した「K-1 PREMIUM 2003 Dynamite!!」が、瞬間最高視聴率43パーセントを記録し、史上初めて紅白歌合戦を超えた。その時の対戦が、元アメリカンフットボール選手で薬科大学出のインテリ怪物ボブ・サップと、相撲を引退して間もない曙だった。ボブサップが曙を1ラウンドでノックアウト、曙は前のめりのままマットで眠り続けた。

    1990年代から盛り上がってきた日本における格闘技ブームは、ある意味、この2003年がピークであり、象徴すべき年となった。この大晦日のビッグイベントに先立ち、同年1月にPRIDEの森下社長が自殺、2月にはK-1の創設者、石井和義館長が法人税法違反で逮捕。
    多くの金持ちや華やかな芸能人が群がった格闘技の世界。派手な演出とプロモーションが繰り返された“貴族的”なそのシーンの裏側では、想像も出来ないようなことが同時進行していた。中継席で悠々と解説をしていた谷川氏は、中継と同時にカネや人のことでギリギリに追いつめられた対応をこなしていた。そして、ついに破産、雇われ社長だった彼は、家や車を失い、借金と無職生活へと転落していく。

    一体、何があったのか?
    自身は格闘家ではない。大学を出てベースボールマガジン社に入り、格闘技通信の編集長を勤めつつ、格闘技のマッチメイクをしたり、石井館長と組んでK-1を誕生させたり、テレビ局を積極的に結びつけたり、そして、石井館長逮捕にともなってK-1プロデューサーとなり最高潮へと持っていった功績があるのに。
    どうして、彼は落ち、やがて石井館長と溝ができていったのか。K-1やプライドなど格闘技はどこに行ってしまったのか?急速に格闘技ブームが去っていった理由はなんだったのか?それは、実に単純な理由でもあったことがあかされている。

    なかなか、いや、とってもおもしろかった。
    ここで、せっかくなので私と石井館長との関わりを。

    私は正道会館の石井館長と、1985年に出会った。前田日明(新日プロレス→UWF→リングス)が石井館長を「人たらし」と言ったらしいが、オイラもそう思う。温厚な話ぶり、人あたりがよく、頭がいいがそれをあまり出さずに人を持ち上げ、そして人の能力を引き出していく。角田信朗を初めとする弟子たちも多く育てた。
    私が出会った1985年は、正道会館は実力ナンバー1ではないかという人も多かったぐらい空手では有名だったが、マスコミでは知られておらず、もちろん、K-1など影も形もない。でも、石井館長がとてもいい人だったので、テレビ番組の構成や企画書を無料で作って差し上げたりした。道場近くの小さな居酒屋でお酒をおごっていただき、空手ナンバー1の大会の招待席に招待されて、それで十分だった。

    元々、プロレス好きの私。そこに空手や格闘技が絡んで、これ以降、私としてはこの世界から目が離せなかった。石井館長は有名人になり、東京の高級ホテル住まいとなったが、1997年に私が会社を作ってその案内状を出すと、すでに疎遠となっていたのに、夜、直接電話がかかってきて、「次の日曜日あいてる?」と気さくに声をかけてくれ、東京ドームでK-1するから見に来てよ、チケット送るから、と言ってくれた。
    2-3日後、館長手書きの封筒が来た。会場でいろんな人を紹介するから声をかけてね、と言われていたが、当日は超VIPを連れて歩いている、私は横からこんにちは、というのがせいぜいだった。

    館長に関しては、いろんな憶測や噂が飛び交っているけど、デタラメなものが非常に多い。
    例えば、館長は国際勝共連合(統一教会系の反共団体)メンバーだと言われた時期があり、私も友人からそう言われた。もちろん、私はそれがデタラメだということを知っていた。館長は子供の頃、統一教会とは激しく対立するある宗教の信者となっていて、大人になってからは信仰していなかったが、考え方はそれに近かったから、統一教会に関わるなんて考えにくい。そして、そんな噂が出る少し前、こんなことがあった。ある日、私の小さなマンションにやってきて、「北原ちゃん、世界日報(統一教会系の新聞)って知ってる?」というから、たまたま取り上げていた文藝春秋だったかなにかの雑誌があったので貸してあげた。館長は熱心に読み、なるほどなあと初めて知った顔をしていた。なにかあったのですか?と聞くと、弟子の一人にこういう団体に関わっているやつがいるらしくて・・・と言っていた。
    つまり、弟子に統一教会メンバーがいたから、館長までそうだと決めつけられていたわけである。

    派手な世界、儲かっている世界にはいろんな噂が飛び交う。この本を読んで、そうした部分を知るのもおもしろい。

    *****

    (メモ)

    谷川氏は愛知県下随一の進学校である県立旭丘高校出身だが、共通一次(当時)の出来が悪く、滑り止めの受験先を探していると、猪木とウイリー・ウイリアムスの試合が東京行われる日と日大法学部の試験日が重なることを発見。東京行きの口実に受験したが、結局、そこしか受からなかった。

    1993年、フジテレビから格闘技のイベントを頼まれた石井館長が、キックのルールでヘビー級の格闘技トーナメントを企画。当時、フジテレビでF1中継が人気だったことから、キックや空手、格闘技のKからとって、K-1にしようと石井館長が提案した。

    アンディ・フグが臨終の際、病院で心肺蘇生される横にいた角田信朗は、「キープ・ゴーイング・オン、キープ・ゴーイング・オン」と励まし続けた。
    *角田は外大卒、英語教師の免許を持つ。

    ボブ・サップをラスベガスに呼んで、最初に谷川氏と会ったとき、サップはぺこぺこ頭を下げながら「イエッサー」を繰り返す、インテリの紳士だった。しかし、1年後には言わなくなり、態度ががらりと変わる。

    マイク・タイソンはいつ切れるか分からない。理由も分からない。当時のガールフレンドを呼び寄せたが、彼女にも分からなかった。ドン・キングも殺されそうになった。

    2003年の名古屋ドームでのK-1,アメリカ国家を歌うハズだったスティービー・ワンダーは当日になってごね、ギャラを吊り上げてきたうえ、ハモニカ演奏しかしないと言い出した。中継をしながら谷川氏は裏で連絡をして、高額ギャラを飲んだ。すると、ギリギリになって遠くの方に彼は現れ、ハモニカを吹いて帰っていった。遠かったので、よく見えない。本当に本人だったかどうか、今も谷川氏には自信がない。

    名古屋でのK-1開催、PRIDE創設、これをしたのは名古屋の東海テレビ事業というイベント会社の榊原氏、その後、PRIDEを引き継いだのが名古屋の家電「EIDEN」のハウスエージェンシー森下氏。
    谷川氏を含め、格闘技は名古屋パワーが源泉?

    2006年大晦日のK-1,柔道出身の秋山成勲と桜庭和志の決勝。ここで秋山ぬるぬる事件が発生。秋山の体にオイルが塗られているとの疑惑。試合後確認するが、本人はやんわり否定。しかし、TBSが裏でオイルを塗っている姿を撮影していることが分かり、本人も認める。これがきっかけで格闘技に大手スポンサーがつきにくくなり、凋落が始まっていった。

  • 2017/10/14購入
    2018/3/17読了

  • 元格闘技通信編集長だった彼がFEGのトップに就任して以降のモンスター路線と金の話。

    石井館長の抱えてた負債を払うために……という言い訳から。
    選手のギャラ遅れなどもさらっと書いてますが(未払いとは書いてない)。

    Amazonの評価もイマイチですが、K-1全盛期を知ってれば楽しめるかと。

  • 何を今さら、な感も正直ある。
    ただ、読むのだったらやっぱり年末がいちばん良いタイミングか、と思い、
    ようやく。

    元FEG代表取締役にしてK-1プロデューサー、異名はミスター大晦日。
    しかし僕的には格闘技通信の敏腕編集長というのがしっくり来る、
    谷川貞治氏の作品。そう、実質的にK-1を終焉に導いた男の回顧録である。

    プロレスも格闘技も大好きな僕だが、やはりつくずく思う。興行ビジネス
    って怖い、と。特にK-1の凋落振りは絵に描いたような悲惨さで、
    ピーク時にドームに6万人を集め、大晦日に40%を超える視聴率を叩き出
    したキラーコンテンツとは思えない程だった。
    そして、責任を取らされたのが谷川氏。いや、もちろん絶頂期に調子に乗
    ってなかったか?と言われたらなんなのだけど、本当ならもっと責められ
    るべき人が居るべき事態だったと思う。

    僕がこの本を購入した理由は2つ。
    1つはK-1崩壊時に負債を全て抱えた元FEG社長を応援するためであり、
    もう1つはあの格通というマニア層向けの媒体をバカ売れ雑誌にまで育て
    た名編集者の文章を、キッチリ読んでおきたかったから。実際この作品
    でも谷川さんの文章は理路整然としながらもおもしろく、興味は最後まで
    途切れない。週プロのターザン山本やゴングの故・竹内さんなど、編集長
    出身者の本が多々読んできたが、こと文章に関しては間違い無く谷川さん
    がNo.1かと。

    この本でのテーマは「K-1はどこで間違ったのか?」。
    僕はこのテーマには明確な回答を持っている。責められるべき人が逮捕
    された時に、その人が完全に引かずに院政を敷いた事が諸悪の根源。
    コレ、ファンならきっと皆解っている筈。
    だから、谷川さんは(それほど)悪く無い。
    なんらかの形で是非また表舞台に!

  • 谷川さんの元部下の朝岡さんがプロデュースした本。骨法の尻拭いさせられたのに偉いな朝岡さん。この本の印税が選手の未払い金支払いに当てられるば良いなと思います。

  • サダハルンバ谷川の格通(とターザン山本の週プロ)で90年代を生きてきた自分にとっては面白く読める本でした。
    特にK-1創生期からアンディ・フグの死去まで、K-1がアツかった(アツく感じられた)時代に関する部分は、当時を思い出して興奮しました。
    一視聴者ながら、K-1の存在感が日に日にデカくなっていくのも目の当たりにしていた時代だったし。
    谷川プロデューサー体制になってのモンスター路線は、当時からテレビを向いて仕事してるのが見え見えだったけど。
    (それゆえ、つまんなかったけど)
    谷川氏はそれ以前から一貫して、テレビありきのビジネスモデルを志向していた(と書かれている)ので、当然の帰結だったのかなと思いました。
    それにしても、あの時代ってテレビの力って強大だったんですね。
    その強大な力でのし上がっていった谷川氏が、逆に翻弄されることになろうとは…皮肉だな~。
    アツかった時代も寒かった時代も、読者として視聴者として谷川氏に楽しませてもらった格闘技ファンなら楽しめる一冊だと思います。

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