殺人に至る「病」 精神科医の臨床報告 (ベスト新書)

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  • ベストセラーズ
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584125816

作品紹介・あらすじ

社会に溶け込める一見普通の人が、大それた事件を起こすのはなぜか。『発達障害』で16万部の精神科医・岩波明がサイコパスやカルト宗教殺人犯、集団リンチ事件を例に、悪とは何かを問う。

感想・レビュー・書評

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  • 過去の事象を丹念に解説! 臨床(現場)を積み重ねて来た著者だからこそ辿り着ける場所...。ご都合主義では何も解決しないんですよね...。
    事実と真摯に向き合うことでしか、世は変えられないのだ、ということを明らかにしてくれる良書でした。

  • 悪とは何か。実際に起こった事件から殺人を犯すときに犯人がどのような精神状況だったのか、社会状況から、何が悪なのか、を考えていく。

    タイトルからキルケゴールを意識しているのがわかるけれど、最近見た映画の予告「死刑に至る病」を思い出して、本書を思わず手に取った。

    「はじめに」から、もう興味をそそられる。アーサー・ウィリアムズ「この手で人を殺してから」の話が魅力的。読んでみたくなる。
    それから北九州連続殺人事件、座間9人殺人など色々な事件の話が出てくる。

    第1章「不寛容という悪」、第2章「精神病質」、第3章「狂気か悪か」、第4章「通り魔」、第5章「カルト宗教と犯罪」という構成。

    不寛容さの話として、「あなたのことはそれほど」で主人公を演じた女優にまでバッシングがあったこと、不倫バッシングの話など現代日本では不寛容な人が増殖している、とのこと。これは確かにそうかも。自分は正しい、自分の正しさを認めてもらいたい、人がそれを叶えるツールを手に入れたというか。
    2章あたりから、具体的事件を取り上げて、犯人の生育歴などから精神構造を見ていく感じになる。2章から取り上げられる事件について、私はオウム真理教の一連の事件くらいしか知らなかった。
    3章で取り上げられている「中野区テレビ騒音殺人事件」には衝撃を受けた。5人殺して不起訴かぁ。と感情的になるが、被害妄想があり、幻聴が聞こえていた、となれば、精神病からくるものだろうな、と思える。被害者遺族はたまったもんじゃない、と思うだろうが、日本の法律は責任があるところに罪があるのだから、病気からくるものから殺人を犯したのなら、責任は問えまい。しかし、この殺された人々が本当に騒音を出していたのか、わからないよなあ、と思う。近年も確かマンション上階に住む女子大生を殺して(逃げられないようドアにストッパーかけて)自分も自室に火を放って死んだ人がいたけれど、これも騒音出していた、という理由だったような。著者は医師という立場から法の量刑が社会的影響から増減することを批判していたが、一般私人からすると、もう人を殺しているなら、刑に服さないとおかしい、と思うのではないだろうか。

    著者は狂気から犯罪を犯す人が一定数いる、という立場をとっているが、それを否定する人もいるとのこと。
    犯罪など誰も巻き込まれたいと思っていないし、自己防衛もこの場合難しいのに、医師の立場から「早期治療」くらいしか解決策が示されていなくて、その辺りは残念だった。

    精神の病は誰でもなりうるものだと、現在は理解している人が多いけれど、誰もが犯罪を犯す訳でもない。多分、状況や生育歴など様々な要因が絡み合って犯罪を犯してしまう人が出てくるのだろう。解ってはいるけれど、単純な「こうしたら犯罪者にならない」「これをしたら犯罪者になる」というラインを欲しがってしまう気持ちもある。

  • 殺人に至る「病」 精神科医の臨床報告。岩波 明先生の著書。殺人に至る「病」を知らないと、殺人事件を減らすことなんてできない。殺人に至る「病」への理解を深めることが、殺人事件を減らすことにつながるのかもしれない。殺人に至る「病」を持つ人、殺人犯を頭ごなしに非難したって貶めたって、何の解決にもつながらない。そうだとするなら、これ以上悲惨な事件が起きないためにも、手を差し伸べるべきところは手を差し伸べて社会全体で支えてあげないと。

  • 興味深い内容を、わかりやすく解説してあった。

  • 人を殺す者、人を殺さない者。その二つに大きな違いはない。ほんの些細な誘因で人は誰しも人を殺す可能性があるのだ。
    "精神病質"とは簡単に説明のつくものではない。恐らく"平常"な人間である私にとって精神疾患は大変興味深く、それでいて果てしなく未知だ。理解しようにも、そう上手くはいかない。しかし人を殺す者の心理など知らなくて良いだなんて、それはあまりに乱暴な考えだろう。大小こそあれど誰もが越える可能性のある精神の、ある種の壁。その存在を常に忘れてはならないのかもしれない。
    犯罪を犯さずに生きることは、もはや当たり前でもないのだろう。

  • 誰しも加害者になりうる、ということ。もちろん被害者にも。諸々気をつけなければ。

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著者プロフィール

昭和大学医学部精神医学講座主任教授

「2023年 『これ一冊で大人の発達障害がわかる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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