逃げる中高年、欲望のない若者たち

著者 :
  • ベストセラーズ
3.54
  • (32)
  • (72)
  • (90)
  • (17)
  • (2)
本棚登録 : 582
感想 : 107
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584132791

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 村上龍『逃げる中高年、欲望のない若者たち』を読む。
    「メンズジョーカー」に連載した
    「すべての男は消耗品である。」シリーズ最新刊。
    タイトルが挑発的でいいなと思ったら、
    腰巻にも「村上龍の挑発エッセイ!」とあった。
    「普天間を巡る思考放棄」「善戦すれば負けてもいいのか」など
    現代社会の問題から目をそむけず自分の思考と言葉で立ち向かう
    村上に何度も共感を覚えた。

    若者たちに甘い言葉もかけぬ代わりに、
    「夢を持て」などと無責任に励ます大人たちにも容赦ない。
    当の大人たちこそ自分の夢を持たず、
    沈没しかけた日本の現実から
    自分たちだけはまんまと逃げ切ろうとしているではないか。
    感情におぼれず現実を直視した言葉づかいに過不足はなく、
    さすがプロの作家である。
    さて、自分は逃げていないか、
    村上の言葉に思わず僕は胸に手を当てた。

    ひとつだけ気になったのは、出版元の価格設定。
    内容量に比べるとさすがに1,300円は高いなと思った。
    短めのエッセイ17篇が載っているだけなのだ。
    一本ずつの中身がよかっただけに、
    ややデザイン先行気味の本作りには疑問を持った。
    文庫になってから読めばよかったかという気もするが、
    旬のテーマを扱っているだけにどうせ読むならいま、
    とも思い直す。

    「ニューヨークタイムズ」に寄稿した巻末エッセイ
    「21世紀のビートルズ」は読み応えがあった。
    09年の総選挙後の日本について村上の洞察が書かれている。
    同紙編集者は村上龍が相手でも加筆・修正を何度も要求する。
    その粘り強さは日本の新聞ではほとんどないと村上は言う。
    日米メディアの底力の差をそんなところにも僕は感じた。

    (文中敬称略)

  • 23歳は若くないという発言がこの本の中では印象に残った。村上龍は23歳の時に「限りなく透明に近いブルー」を書いて、芥川賞をもらっている。しかし、今の大半の若者はなんの職業訓練もなしに、大学で時間を浪費して、就職する段階になって大慌てだ。高校の普通科はなんの職業教育もせず、いたずらに学生を大学に送り込む。送り込まれた大学は、質の担保もせずに学生を社会に放り出す。大学を出ればよい企業に就職できて一生安泰という神話はすでに崩壊しているのに・・・
      大学で時間を無駄にしているくらいなら、早く目標を見つけて大人になるべきだ。幼くみえることと若さは違うことだ。
      完全に思考が停止している国。そして、欲望も目標ない。やはり草食系ではなく「死人」という方が正しいのだ。

  • 世の中を批判的に考察していた。好奇心をもつことや、欲望をもってワクワクすることが日本には足りていないという点は、他の作家も似たようなことを書いていたので、やはり日本は最近は元気がないのかなと思った。少し前の希望があった時代といわれている時期はどんな社会だったのか少し気になった。社会的に恵まれている人は、謙虚でないといけないということも、ひがまれたり対立を生まないように意識したいなと思った。

  • 村上龍のエッセイ。

    相変わらずという感じもあるが、若干視点が淡々としている。怒りとか憤りというものが薄れ、「日本はこのまま淡々と衰退していく」という端的な意見だけが節々に見られる。

    それはあきらめとは少し違っていて、単に冷静に日本を見つめているだけだ。

    著者が指摘する、日本の若者は怒りを表現する言葉を持たない、という指摘は正しいだろう。それが悪い事かどうかはともかくとして。

    書評:
    <a href=\"http://rashita.net/blog/?p=4975\">書評 「逃げる中高年、欲望のない若者たち」(村上龍)</a>

  • 決して人におもねることなく、忌憚なく自分の意見を言える人は凄いなぁとただただ感心してしまった。これは自分に自信があるからか?良く分からないけど。

    エッセイなのですらすらと読めますが、本の開き方が洋書と一緒なので吃驚。しかも中身は横書きで二度吃驚。

  •  近日中に、イギリスの主要経済メディアの取材を受ける予定がある。きっとまた、「経済でも対中国など外交でも、日本は息も絶え絶えに見えるがだいじょうぶなのか」と聞かれるだろう。即座に「だいじょうぶだ、心配には及ばない」と答えるつもりだが、根拠を示すのに苦労するかも知れない。「武士道精神でがんばる」とか精神論を説くわけにはいかない。そんなつもりはないし、そんなことをしたら海外メディアからは笑われてしまう。具体的な展望を示さなければならないが、現状ではきわめてむずかしい。 
    「日本は、是帯としてはひっとしたらゆっくりと衰退していくかも知れないが、優れた個人が多数現れているので、文化や科学技術やスポーツなど具体的なぶんやでめざましい成果を上げるだろう。現にあなたの国でも、覇権をアメリカに譲り、政治経済の疲弊が頂点に達したころ、ビートルズが出現したではないか」
     そんなことを言うつもりだ。

  • 数年前に書かれた村上龍のエッセイ。社会や若者を中心に独自の目線で痛快に切っていく。納得させられる点が多々あるのだが、(おそらく)意図的に乱暴な表現が(おそらく意図的に)鼻につく。嫌いではない。

    あと、サッカーの話は聞くに値しない批評。いらない。

  • 今の日本人がいかに欲がなくなったことがわかる。

  • 全体を通してわかるのは、日本が緩やかに衰退しているという事実。

著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村上龍の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×