今、日本人に知ってもらいたいこと

  • ベストセラーズ
3.14
  • (0)
  • (3)
  • (3)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 19
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584133262

作品紹介・あらすじ

苦難の歴史から日本人は何を教訓とし、何を置き去りにしてきたのか。見識とユーモアあふれる珠玉の人生訓。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 俳人・金子兜太氏(91歳)と、歴史探偵(^^)半藤一利氏(81歳)の対談です。
    東日本大震災後に、二人の文化人が災害や戦争などについて対談を行うのだが、高尚な話ばかりではなく、ちょっとした猥談も混ざり、また、あちこちに俳句が披露されて、それが味わい深い。
    個人的に一番興味深いのは戦時中の個人的な体験だったり、当時の時代感。
    また、半藤氏の戦争に関しての鋭い考察が面白い。
    「後の人が歴史から何も学ぼうとしない、ということが、歴史の教訓なんです」
    なるほど、と思う。
    確かに、歴史について調べていくと、同じようなことを思って、がっかりしてしまう。ことに、政府の中枢や国を動かそうとする層が、まったく歴史に学ぶことがない。それは人の性なのか、そういう人々は、そうなってしまうのか。
    「(日本人は)みんな同じ方向を向いてしまう。これを私は集団催眠と言っているんですが、これが戦争中の一番の教訓なんです。熱狂しやすいっていいますか、同じ方向に向きやすい」
    「冷静にものを見られない。それが一番怖いところですよね」
    この指摘は、現在も頻繁に感じる日本人の特質であると感じています。一人ひとりの考えではなく、隣の人に合わせたり、深く考えてみることもせずに大きな声に準じてしまったり、確かに「集団催眠」とも言えるかもしれません。
    「国民的熱狂」が太平洋戦争の原因であり、これを作ってはいけない、ある一定の方向に向けて扇動されても、常に少数意見を持ち続けるべきである、というのが、半藤氏の歴史分析だった。そのためにも「非戦」を説いた墨子を読むべきだと。
    「海に青雲 生き死に言わず 生きんとのみ」 金子兜太
    何度も読み直してみたい本。

    追記:
    余談ながら、この中に数多くの作家と出会ったという話の中で、司馬遼太郎に関しての記述(証人に聞き取りをしても使わないなど、司馬史観と呼ばれる個人的な取捨選択があった)があり、個人的に、この作家の作品がどうして肌に合わないのか、ようやく答えに辿り着いた気がする。
    『日本が昭和になって統帥権を「魔法の杖のように振り回す軍部」によって滅ぼされてしまった。統帥権が昭和を駄目にした。これほど嫌な時代はない。日本の歴史の中にはない時代、異端の時代である(司馬)』
    『歴史というのは繋がっていて、前の時代のいろいろなことが現代に連続してきているのです。昭和という時代だけ統帥権という問題で断絶させるのは、間違っていますよ(半藤)』
    『日本人はもっと立派だし、日本の歴史はもっといいんだ(司馬)』
    この議論により、半藤さんが得た結論は、以下のようなものだった。
    「戦争というのは、私たちが思っているほどすべてが悪ではなくて、日本人の良さというのもそこにはあるんだ。だからできるだけ広く、冷静に現実を見ないと間違うぞ、と」

  •  金子兜太氏と半藤一利氏との対談と言うことで,これは,興味深いはずだ…と思って読み進めていきました。予想通り,今までにないような対談内容でした。半藤氏によると「合計百七十二歳の対話は,自分のいうのもおかしいのですが,天衣無縫というか天空開豁というか,あっちへいったりこっちへいったりの行運流水的な,いくらかとりとめのないもの」だそうです。
     兜太氏は1919年生まれ。半藤氏は10歳ほど年下になります。
     日本人のクセとして「起きて困ることは起きないのではないか」→「起きないに違いない」→「絶対に起きない」という結論になると,二人は同意。
     これは,敗戦直前のソ連満州侵攻にしても,トラック島への攻撃にしても…そして,今回の大津波とそれによる原発事故にしても…。これらのことは,いずれもちゃんと予想していた人はいたわけですが,いずれも起きてもらっては,たいへん困ることなのです。そして,日本人は,その困ることに対する対策そのものよりも,「起こらないことにしてしまうこと」を選択するのだと。これらのことは,日本人だけではなく,人間一般に言えることなのかもしれないと思いますが,少なくとも,日本の現代史をふり返っただけでも,あてはまることは確かですね。
     自分たちのルーツを語る場面では,それこそ,天衣無縫の話になってきて,放送禁止用語がたくさん…(^^;; それだけ,子どもに対しても開けっぴろげな社会だったからこそ,感覚の豊かな兜太氏が育ったのかもしれないとも感じました。
     私たちが本書の内容を知って,さあ,その後どうするのかーそれは,読者に任されています。

  • 今、日本人に知ってもらいたいこと ☆ 最初は3.11の地震や戦争のことを語っていたが、途中から自分のかみさんのことや尿瓶の事などスケールの小さいというかどうでも良さそうなことが語られる。 #dokusyo

  • 二人の有名な作家さん(私は存じ上げなかったがタイトルに惹かれて図書館で借りた)による対談

    戦時中の体験や随想を交えながら、東日本大震災後の日本を考える。
    精神論的な部分が大きい。

    戦時中の前線の様子なども書かれていて興味深く読んだ。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

金子 兜太(かねこ とうた)
1919年埼玉県生まれ。東京大学経済学部卒業。1943年日本銀行に入行。加藤楸邨に師事。1962年、同人誌「海程」を創刊、主宰。1978年埼玉県文化賞受賞、1983年、現代俳句協会会長、1987年より朝日俳壇選者、1988年、紫綬褒章受章、1996年、句集「両神」で詩歌文学館賞受賞。1997年、NHK放送文化賞。2005年日本芸術院会員、2008年、文化功労者。
主な著書「種田山頭火 漂泊の俳人」「小林一茶」「感性時代の俳句塾」「放浪行乞」「わが戦後俳句史」「一茶句集」ほか。句集「少年」「蜿蜿」「暗緑地誌」「遊牧集」「金子兜太全句集」「黄金子兜太句集」「皆之」「詩経国風」「金子兜太集」第1巻~第4巻ほか。

「2022年 『金子兜太 俳句の古典を読む ─芭蕉 蕪村 一茶 子規─ CD版 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

金子兜太の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×