間違いだらけの名古屋めし

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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584139875

作品紹介・あらすじ

ご当地グルメの代表格として今や全国にも知られる「名古屋めし」。
味噌煮込みうどん、味噌カツ、ひつまぶし、手羽先など、これらを食べることを目的に名古屋を訪れる観光客も多く、人気店には長蛇の列が。今や名古屋きっての観光資源にもなっている。
しかし、名古屋めしにまつわる評判や定説は誤解や間違いだらけ。いわく・・・
名古屋めしは何でもかんでも味噌をかける?
名古屋めしはB級グルメばかり?
名古屋めしはどれもこれも味が濃い?
名古屋めしはパクリだらけ?
名古屋めしに関する様々な風評の数々・・・これらは果たして真実なのか?
名古屋めし取材30年の実績を誇る現地ライターが徹底取材。間違いだらけの名古屋めしに関する誤解をすべて解いていきます!
真説・名古屋めし論!

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井戸田潤さん「名古屋めしの正解がここに。読んどかないと味噌つくよ」
須田亜香里さん「あれ?私なんにも知らんじゃん!」

感想・レビュー・書評

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  • つい最近、名古屋に行った際になんとなく目に入った本書を購入しました。名古屋めしは何かと叩かれがちだったのですが、今ではれっきとした文化として根付いています。その歴史を紐解いてくれる本書はとても楽しく、なんで叩かれてしまうのか、歴史も述べております。
    ただ、名古屋めしをたのしむだけではなく、このような歴史も楽しみながら食べていくとより一層名古屋が好きになるのだはないかと思います。

  • 間違いだらけの名古屋めし

    著者:大竹敏之
    発行:2023年1月30日
    ベストセラーズ

    自称「名古屋ネタライター」の大竹敏之氏が本書を出したことは、新聞で読んで知っていた。気になるタイトルだったが、大阪の図書館には決してないのでブックオフで探して購入。中古とはいえ、まだまだ高値だった。

    本書で最も感心し、勉強になったのは、意外にも「きしめん」についてだった。きしめんについて何が間違いか?それは、「(名古屋)駅のホームが一番うみゃあ」である。地元のミドル以上の男性がどや顔でいうと書かれているが、僕も大学生の時、(大阪で)ライターからきしめんについて取材された際、そう答えた。

    これのなにが間違っているか?

    確かに名古屋駅ホームのきしめんはうまいが、一番うまいという言い切りがいけないという。なぜなら、名古屋の人は名古屋駅のホームぐらいでしかきしめんを食べない、それなのに一番と決めつけていることがいけないという。そう言われ、僕も顧みれば名古屋時代にうどん屋できしめんを食べた記憶がほとんどない。子供の頃にいつもの(家の)丼とは違う器できしめんを食べた画が、うっすらと浮かぶ程度。駅で小腹が減って、そこに380円で食べられるきしめんを食べれば、それはうまいに決まっている。それを一番と言ってはいけない。これには参りました、おっしゃる通り。

    名古屋のうどん店は、麺を4種類用意するのが当たり前だという。うどん、味噌煮込みうどん、きしめん、そば。きしめんは、うどんを平らにしただけだと思われているが、それこそ大間違いで、塩分濃度が全然違う(讃岐うどんの2倍近く)。そして、あの平らな麺を単純に打ってしまうと、出汁が絡まず美味しくない、だから製麺機ではできず、高度な技術を持った職人が打たないといけない。それなのに、名古屋の人は店できしめんを頼まず、最も苦労して打ったきしめんが、1杯も出ずに、泣く泣く捨てなければいけないことも多いという。

    名古屋駅、とくに新幹線のホームには何軒ものきしめん屋があるが、「住よし」が一番だと言われている。タモリもそう言っているようだ。しかし、名古屋駅のきしめんは、ジャパン・トラベル・サーヴィスという会社が、1961年に国鉄(当時)名古屋駅の在来線ホームに2店出し、1983年に新幹線ホームに進出、現在は10店舗を展開しているが、「住よし」「憩」の2店舗ブランドがあるものの、メニューはほとんど同じで提供しているきしめんは同じもの、だという。衝撃の事実が明かされている。

    さらに衝撃の事実。きしめんは、名古屋城築城の際に、大勢の職人に出すためにゆで時間の短い平たい麺を作ったのが始まり、という定説を、名古屋の歴史ライター・水野誠志朗氏が「100%間違い」と主張している内容を紹介している。また、一般的に言われている「雉(きじ)麺」「紀州麺」「棊子(きし=碁石)麺」も間違いだという。これらのうち、文献で確認できるのは、室町時代初期などの書物にある「棊子麺」のみで、それは今のきしめんとは全く別ものであり、お酒のつまみのようなものだったという。

    麺料理のつゆに欠かせない醤油が量産されるようになったのは安土桃山時代で、麺が汁に入るようなうどんは1600年代初期、一般化したのは江戸後期の元禄時代。名古屋城築城時(1610年)に振る舞われたという俗説はほぼ否定できるとしている。
    僕自身は雉麺が正解ではと思っていた(名古屋市教育委員会もその説を取っている)が、どうやら違うようである。

    元祖論争も勉強になった。

    喫茶店のモーニング。
    一宮説がよく知られる(僕もそう思っていた)。繊維産業が盛んな一宮は、機械音がガチャンガチャンとしてうるさいため、来客と商談をする場合に喫茶店を利用する。常連客へのサービスとしてピーナツとゆで卵をつけはじめた、という説。昭和30年代前半(1950年代後半)に誕生。そこから、名古屋の繊維街である長者町へと伝わった。
    豊橋説は、駅前に飲み屋街が広がり、夜勤明けでコーヒーを飲みに来てくれる水商売の従業員に、朝食代わりとなるトーストなどをつけたのが始まりとしている。

    モーニングに限らず、名古屋ではコーヒーにバターピーナツがついてくることが多い。こんなものを出したら利益率が下がるのではないかと心配になるが、実は、バタピーの塩分のため、コーヒーに入れる砂糖の量が減るのだそうだ。だから、利益率はそんなに下がらないということらしい。

    味噌カツの元祖論争は、さらに興味深い。ネットなどで味噌カツは三重県が発祥で、名古屋めしはパクリばかりだと叩かれているらしいが、そのあたりも著者は調べている。

    三重県津市にある「カインドコックの家カトレア」は、1965年に考案して誕生したのが当店のみそカツです、とメニューに書いているらしい。

    岐阜県岐阜市にも「元祖みそかつの店」をうたう老舗がある。1957年創業の「一楽」で、創業者が独学で研究して作ったものらしいが、どて鍋の味噌を串カツにかけたりした文化が昔からあったので、発祥かどうかは厳密には分からない、と現在の3代目店主は言う。

    ところが、こうした三重や岐阜の〝元祖〟よりも早い「元祖みそかつ」が名古屋にある。中区の「味処 叶(かのう)」で、1949年創業。
    また、人気の「矢場とん」のHPでは、屋台でどて鍋に串カツを浸して食べたのをヒントに、1947年の創業時にメニュー化した、とうたっている。
    1945年創業の中区「気晴亭(きはるてい)」、1913年創業の東区「ラク亭」も記録は残っていないがかなり早くから出していた、という。

    結局、ルーツにはたどりつかなかったが、同時発生的に生まれていたとしてもまったく不思議ではない。

    ひつまぶしの発祥地も、似たような状況にあるようだ。やはりパクリ疑惑を書く人がいるらしい。
    三重県津市の老舗「つたや」は1875(明治8)年創業で、昔は天然うなぎを使っていたので大きさがバラバラ、太いのは出せないから焼いた後に細かく刻み、まかないでだしていたという。ただ、メニュー化したのは名古屋の店とのこと。

    本書の著者が探したところ、名古屋のグルメガイドにおける最も古い記述は、1964年発行の「名古屋味覚地図」で、中区の「いば昇」。いば昇自身は、記録が残っていないが確認できるのは昭和30年代以降だという。
    マスコミで有名な「あつた蓬萊軒」は、「うちは元祖とうたったことはありません」と言っているそうだ。結局、こちらもルーツにはたどり着けなかった。

    *********

    「名古屋めし」という言葉は、名古屋の飲食店グループ「ZETTON」創業者・稲本健一氏が、2001年に考案した。

    名古屋めしストリート化した「エスカ地下街」は、1990年代に約20億円だった年間売上が、2015年には45億円に。

    八丁味噌は豆味噌で赤味噌だが、赤味噌は宮城県の仙台味噌などもそう。それらは豆味噌ではなく米味噌。名古屋の赤味噌と混同する人が多い。八丁味噌は2年以上かけて熟成させる。

    八丁味噌といえば、岡崎の「カクキュー」と「まるや」だが、GI登録されたのが愛知県味噌醤油工業協同組合なので、2027年以降は八丁味噌と言えなくなる。おかしな事態に。

    あんかけスパゲティは、昭和30年台前半に、ホテルのコックだった故・横井博氏がイタリアの家庭料理をヒントに名古屋人に合う味で開発。1961年に親戚と共同で始めた「そ~れ」で商品化し、2年後に独立して「スパゲティハウスヨコイ」を開業した。あんかけスパという呼び名は、昭和50年代(1975年以降)にテレビ取材の際に「うどんのあんかけみたいなもの」と説明したのが始まり。

    天むすは、三重県津市の天ぷら専門店「千寿」が、まかない飯として昭和30年代に考案、3~4年後に天むす専門店に。名古屋の大須にある「千寿」が元祖だと言われているが、実はのれん分けで始めた店。大須の創業者によると、津の「千寿」の奥さんのところに通って作り方を教えてもらい、1980(昭和55)年にオープン。最初の2年ぐらいは全然売れなかったが、テレビに取材されて大反響、以後、芸能人が差し入れを食べて気に入ってくれてブレーク。

    戦国大名の7割が愛知県の出身。豆味噌が天下を制した愛知の武将の源になったとも言われる。

    2010年台後半から始まった名古屋めしバッシングでは、週刊誌が実にいい加減で、たとえば、あんかけスパゲティは「餡子のかかったスパゲティ」と書いたりしている。あるいは、トンテキを名古屋めしだと書いている雑誌も。もちろん、トンテキは名古屋めしでない。

    現存する名古屋最古の喫茶店は、西区の「喫茶まつば」で、1933年創業。

    なごやめし普及促進協議会がリストアップした名古屋めしは28品。
    ひつまぶし、味噌煮込みうどん、味噌カツ、手羽先、きしめん、あんかけスパ、天むす、どて煮、鉄板スパ、台湾ラーメン、味噌おでん、小倉トースト、海老フライ、鬼まんじゅう、モーニング、カレーうどん、名古屋コーチン、ういろう(ういろ)、えびせんべい、守口漬、台湾まぜそば、コーヒーぜんざい、海老おろしうどん、ころ(きしめん・うどん)、志の田うどん、ベトコンラーメン、とんちゃん、たまり煮込み

  • 名古屋めしというテーマひとつでこんな分厚い本が書けるとは…著者様の知識見識考察、そしてなにより名古屋めし愛に脱帽。
    読んでると味噌カツにきしめん食べたくなる。

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著者プロフィール

名古屋のことだけを書く自称“名古屋ネタライター”。
1965年、愛知県常滑市出身。出版社勤務を経て26歳でフリーに。
2010年刊行の『名古屋の喫茶店』(リベラル社)がご当地ロングセラーとなり、以後コンスタントに名古屋の食や文化に関する書籍を出版。著書に『名古屋の酒場』『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』(同/サンデージャーナル取材班との共著)『なごやじまん』(ぴあ)『コンクリート魂 浅野祥雲大全』(青月社)などがある。Yahoo!ニュースに「大竹敏之のでら名古屋通信」を配信中。

「2023年 『間違いだらけの名古屋めし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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