朝彦親王伝 維新史を動かした皇魁

著者 :
  • 勉誠出版
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784585220251

作品紹介・あらすじ

「八月十八日の政変」で宮廷を動かし、池田屋事件では命を狙われた朝彦親王は、幕末期において、孝明天皇、徳川慶喜を陰で支えるなど大きな影響力を持ちながら、「史実」に記されることが少ない人物である。『朝彦親王日記』『孝明天皇紀』など、幕末維新の重要史料を仔細に読み解き、その知られざる生涯を描きだす。悲劇の英傑から描かれる、もうひとつの幕末・維新史。

感想・レビュー・書評

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  • なにぶん、このあたりの歴史に疎いので、誰?と思ったところですが、教科書にも出てくる中川宮のことでした。

    朝彦親王自身のみならず、日記等史料から分かる関わった人物が出てくるので、なかなか興味深い。

  • 幕末には、たくさんのひとの思想や思惑が絡んできます。
    私たちが教えられ、なぞってくるのは、その表面にある、しかもほんの一部でしかありません。
    私が学校で教わった幕末の歴史は摘んだ砂の一粒で、それは何の味気もなく、噛み締めたところで意味のないものでした。長い間、自分の国の歴史に対して無知であったのは、この味気ない「受験のための勉強」に一端がありました。

    些細なきっかけで幕末に興味を抱くようになり、いろんな本をただ欲求のままに飲み込むようになって3年くらいになります。
    その間でも、「朝彦親王」に関してはほとんど目にしませんでした。
    少し疑念に思っていろいろと見ていくうちに、「どうしてこのひとはこんなにまでも変わってしまったのだろう?」とその疑念はますます拡大しました。攘夷派として安政の大獄に連座までしたのに、それ以降、公武合体を推し進めることになる、その理由。
    それを氷解してくれたのがこの「朝彦親王伝」です。

    一般に流通している幕末の本には「中川宮」としてその名前が散見されますが、このひとが幕末の動乱期においてどのような位置を占めていたのかはほとんど理解できません。それほどまでに「あまり意味のない登場人物」としてしか認識されていないのです。

    ですが、本当のところはこの朝彦親王が幕末期においてかなりの重要な人物であったということがこの本を読めばよく分かってきます。
    その生い立ち、思想、養弟である孝明天皇との関わり。
    私が「変わった」と思っていた部分はそうではなく、朝彦親王はどこまでも真っ直ぐなひとでした。最後の最後まで、自分を曲げることとしなかったひとでした。
    朝彦親王は、どちらかと言うと「混乱を招いたひと」と認識されるか、もっと悪ければ「認知されていない」か、です。これほどまでに重要な人物がそういう評価をされているのには、結局のところ「敗者」であったからです(とはいえ、同じ「敗者」の徳川慶喜はかなりの認知度ですが)。
    歴史に埋もれそうなこのような人物がもっと認知されることを切に願います。

    この本の素晴らしさは、膨大な史料によって朝彦親王の動静を明らかにされている点なのですが。
    私としてはそれ以上に「川路聖謨」と親王の密接な関係をこの本で知れたことが何よりの喜びでした。
    最後の「第11章 結」は、短いながら涙を誘います。

    かなりボリュームのある本です。
    幕末に興味のない方にとっては敷居の高い本かもしれません。
    でもいつか幕末に興味を持たれた日に。
    そんな本があったな、一度読んでみようかな。
    そう思いだしていただければ、と思い、感想を記します。

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著者プロフィール

1944年群馬県生まれ。明治大学名誉教授。早稲田大学第一文学部卒、1974年同大学院博士課程修了。文学博士。1979年に窪田空穂賞、1980年に日本古典文学会賞、1987年『日本近世小説と中国小説』で日本学士院賞を受賞。
主な編・著書に、『梁田蛻巌 秋山玉山』(江戸詩人選集2、岩波書店、1992、復刊、2002)、『近世説美少年録』1・2・3(新編日本古典文学全集、小学館、1999~2001)、『日本古典文学研究史大事典』(勉誠出版、1997)、『日本漢詩集』(新編日本古典文学全集、小学館、2002)、『近世日中文人交流史の研究』(研文出版、2004)、『元治夢物語―幕末同時代史』(岩波文庫、2008)、『朝彦親王伝』(勉誠出版、2011)、『会津藩儒将 秋月韋軒伝』(勉誠出版、2012)、『小原鉄心と大垣維新史』(勉誠出版、2013)、『清河八郎伝 漢詩にみる幕末維新史』(勉誠出版、2016)、『浮世絵師の絵で読む 八犬伝』(上・下)(勉誠出版、2017)などがある。

「2020年 『吉田松陰と学人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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