- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784585290254
作品紹介・あらすじ
「死すとも思いのこすことなし、わが赤ん坊の他には」一九二〇年代、巴里。夫に伴われた留学先で子どもを身ごもるが、結核に倒れる伸子。病床にあって娘に宛てて綴った三冊のノートをめぐって、死と新生、自然の摂理と普遍の愛を描く深遠なドラマが展開する。
感想・レビュー・書評
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内容(「BOOK」データベースより)
『「死すとも思いのこすことなし、わが赤ん坊の他には」一九二〇年代、巴里。夫に伴われた留学先で子どもを身ごもるが、結核に倒れる伸子。病床にあって娘に宛てて綴った三冊のノートをめぐって、死と新生、自然の摂理と普遍の愛を描く深遠なドラマが展開する。』
『大江健三郎、遠藤周作が絶賛し、日本国内のみならずフランスを中心にヨーロッパで激賞されノーベル賞候補作にもなった名作が現代に甦る。
ノーベル賞候補作にも挙げられ、フランスをはじめヨーロッパ各国で高い評価を受けた代表作を、著者自身が最後に校閲した最良のテキストを用いて復刊。国内のみならず、パリでの評判が理解できる現地紙の書評・解説から、仏語化の経緯を詳しく記したダヴッド社版文庫本掲載の「あとがき」、親交の深い作家・大江健三郎と遠藤周作による芹沢文学論と、最新の年譜を付す。』
(「 勉誠出版」サイトより▽)
https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100067
ー目次ー
本編
・巴里に死す
付録
・あとがき 芹沢光治良
・日本からの声 ヌーヴェル・リテレールインタビュー記事(芹沢文子・岡玲子 訳)
・戦後訳された初めての日本小説――『私はパリに行って死にましょう』アーツ書評記事(芹沢文子・岡玲子 訳)
・解説 遠藤周作
・人性批評家の文学――芹沢光治良の生涯の独特さ 大江健三郎
・芹沢光治良略年譜 勝呂奏
冒頭
『旧友、宮村博士の令嬢の結婚式の晩のことであった。
私もXホテルの披露宴に招かれた。』
『巴里に死す』
著者:芹沢光治良(せりざわ こうじろう)
出版社 : 勉誠出版
単行本 : 296ページ
外国語訳
French:『Mort à Paris』詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
芹沢光治良の人生は大河的
時代背景も面白い
光治良自身は村上春樹の「騎士団長殺し」の中に出てくる「雨田具彦」と少し重なる印象。
現在はあまり話題にならない文豪であるが、再注目してほしい作家。
特に「人間の運命」は必読。 -
妊娠中の私へと友人から頂いた一冊。
今の私と重なる部分もあり、読みやすかった。
愛される側から愛する側に変わっていく様子が繊細に描かれている。
母の愛とはここまで人を変えるのかと、関心しつつ、自分もそうなるのかと不思議に思う。 -
芹沢光治良「巴里に死す」
極限状態の魂から絞り出たかのような祈り、言葉の数々に何度も震え、涙を流した。その力強さはエミリーブロンテ「ワザリング・ハイツ」を彷彿とさせるが、この作品には、文学において最も重要な「悪」の要素がない。母と娘の時空を超えた出会いを通して、真正面から「愛」という対象に向き合い表現し尽くしている。下手をすれば明治の日本文学的なしょぼい綺麗事、ヒューマニズムに陥りかねない程に。
しかし、この作品が他と一線を画し、これ程の深みを持ち得たのは、愛の表現がきちんと魂、祈りと結びついているからだろう