- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784585291671
作品紹介・あらすじ
栄華を誇った藤原道長の目にとまり、その娘中宮彰子の女房として仕えた宮廷生活の記録だけではなく、鋭い人物批判と、自己の内面を告白した稀有な日記文学。
紫式部と紫式部日記を理解するための充実の附録付き。『正訳 源氏物語 本文対照』に続く、平安文学研究の泰斗による本文対照で読める現代語訳、第二弾!
本書は親王誕生を中心とする宮廷行事、自己の反省や告白をもつづる深い人間性などが記された、『源氏物語』作者による、唯一の生活記録。
女流日記文学の傑作として必読の書である。
感想・レビュー・書評
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訳が平易で注釈も多くつけているため読みやすい。和歌の掛詞や季語、文脈の説明も付記されているため、和歌も十分に味わえる。
最後についている解説を読むことで、紫式部の出自や家系、どのような人生を歩んだかを簡潔に理解できる。ただし、学問的な書き方(誰々の説を採用すると××といった論文的なもの)であるため、慣れていないと読みづらいかも。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中宮彰子の出産記録に始まり、女官同士の会話、藤原道長とのじゃれ合いなど。
解説にもあるけれど、中宮出産前後の記述は道長に「(後々のための女性による)記録係」として書くよう促された感もありとにかく細かい。
中でも「それは記録というよりあなたの個人的感想ですよね?」を強く感じる女官達の着物や風貌の描写が細か過ぎて引く。
照明もなければ眼鏡もない時代、当時の人達は他人の着物を遠くに見て瞬時に「あ、あれは◯◯色だな」とか「あんな合わせ方して。みっともない。」とか判断(そして記憶)できんの?
全員?それとも紫式部だけ?
解説で中野センセが紫式部の同性愛的部分を指摘してる。うーんなんかわかる。それとも時代的に男も女ももうちょっとグラデーションを楽しんでただけなのか。
時の権力者に雇われ中宮に仕える in 宮中。最上級の華やかな舞台をよそに頭のいい人特有の厭世観が漂う文章。豪華な舞台装置に荘厳な音楽。でもさっきからずーっと聞こえるこの不吉な音は何?みたいな。
ここに和紙と筆でもあれば紫式部の手の温もりが残ってるのではと錯覚しそうな位に「生きてる人間のリアル」を感じる1000年前の日記。
ファラオは死んでミイラとなっても自らを見せものにして外貨を稼ぐし、天才小説家は死んでも文字は時代を超えて今を生きるのね。
本の真ん中ほど、斎院の御所の中将の君手紙に対する悪口(p114-126)については文字から疾走感を感じる。怒りで悪口がスラスラスラスラと出てきたんかなぁ。にしても文才とセンスのある人の悪口は綺麗でいいね。正しい知性の使い方。
途中何度も出てくる和歌のやりとりも、右手に知性、左手にセンスというグローブでの殴り合いで楽しい。
ネットなどで散々擦られてる「強盗に遭って裸で泣いてたのに翌日しれっとしてる同僚を笑う」「和泉式部や清少納言へのディスり」「日本紀の御局?はぁ?怒」とかもいちいち意地悪で楽しい。
にしても。
清少納言のディスりの後急に「今までこれといった思い出一つない人生だったけど」と書き出してる。慎み深い彼女のことだから謙遜として書いてるんだろうけどひょっとしたらそこそこ本気かも。
これも才能と運(ていうか両方運)に恵まれた人にありがちだけど。
たった43年の生涯で源氏物語書くかねしかし。
あなたの前にも後にも生きて生まれた数十億人はそれこそ何の思い出も何の役にもたたないよ。
とほほ。
現代訳下に書かれた古文のいくつかは、サウンドも楽しいしリズムもいいでこれからどんどん使っていこうと思う。
あな、疾(めっちゃ早い
限りなき(最上の美人
ことわりながらわろし(もっともだけどよくない -
古典講読の時間のテキストとして、つかった
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田辺聖子の新源氏物語を以前に読んで
紫式部に興味が湧き、式部日記を読んで
益々紫式部と言う一人の女性の類稀なる
観察眼や魅力が溢れている。
女性ならではの美しい、その時代の
皇族や貴族の衣装などとても細部まで
書き記している。
内気な性格なのか、とても内性的で宮中での
生活は少し合わない部分もあったと思うが
源氏物語と同じこれもまた雅な世界と一人の
女性の生き現実の世をこの日記で知る事が出来る。