恐怖のカウントダウン!
十二、十一、十、九……
何かをカウントダウンしているような紙切れが、宝石商の屋敷に毎日置かれる。意味が分からず不気味だし、手紙が残されるということは、何者かが邸内にしのびこんでいるはずーー★
かくして、警察と明智探偵に相談がもちかけられますが、「三」の日、明智小五郎が賊にさらわれて万事休す! 宝石王は殺害されてしまいます。
その後、衝撃的すぎる明智の死(!!)まで伝えられます★ そんなの誰も信じられないよ。多分、読者も。浪越警部は、かの名探偵や警察を出し抜き世間を翻弄する殺人犯を、必ずや捕縛せんと決意するのでした……。
この本、ポプラ社の一連の作品群におさまっていると、何だか見事にはまって見えるのです。『魔術師』という題名が、パッと見は夢があって、少年探偵団シリーズのイメージに妙に合ってるんですよね~。このタイトルは、犯人が魔術師のように鮮やかな手口で犯行を重ねることから来たもの☆
しかし、怪人二十面相の登場を期待して読み始めると、びっくりしてしまいます★ ああいう愉快なサーカスごっこなんかじゃなくて、凄惨な事件です。全く違う作風だし、明智探偵は殺されるし……(一応)。
少年少女向けにリライトしたものだけど、これでも十分ピリピリ来ちゃう緊張感! 大人の『魔術師』はさらに残虐度倍増で、ものすごく恐怖です。うぅ……。
怖いけどお伝えしたいのは、通俗的ながらも骨組みのしっかりした小説だということ★ 気のせいか、あんまり知名度のある作品という印象がないので、ここは乱歩フリークたちがもっと評価を高めてもいいのでは……? 全体に考え抜かれた構成で引きこまれます。
もう一つお伝えしておきたいのが、探偵の恋模様です☆ 明智と文代夫人との出会いを描いたアニバーサリー小説なんだもの、見逃せません。ただ、明智さんったら、当初は他の女性に惹かれていたご様子ですけどね!?