ももの子たろう (むかしむかし絵本 14)

著者 :
  • ポプラ社
3.83
  • (9)
  • (7)
  • (14)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 217
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (1ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591003879

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 桃太郎って、育児本だったのか!


    岩手・青森で語られてきた桃太郎話をもとに大川悦生が再話し、箕田源二郎が絵をつけた『ももの子たろう』
    一般的な呼び名の「桃太郎」ではなくあえて東北での呼び名「ももの子たろう」としたのは、やれ軍国教育にうってつけの話だ、やれ侵略主義の象徴だと戦中戦後翻弄されてきた「桃太郎童話」と断ち切りたい気持ちからだったそうだ。

    作り手の意図は成功していると思う。
    親は子にどのように愛を注ぐものなのか。十分な愛をもって育まれた子供はどのように成長していくものなのか。この絵本が語りかけてくるのは教訓ではなく情愛。これはあたたかな子育ての本だ。


    というわけで、この絵本の一番の見どころは、じいさまとばあさまの愛情溢れる子育ての様子だ。
    例えば、桃からおとこぼっこ(男の赤ちゃん)が生まれた時の2人の喜びようはこう。
    [本文より]
    じいさまと ばあさまは びっくりするやら うれしがるやら。おおさわぎで ゆを わかして うぶゆに つかわせ、きものも こさえて うぶぎに くるんだ。そして、かわるがわる だきあげては、
    「ももこの なかから うまれたで、ももの子たろうと いう なにしよ。」
    「そだ そだ、それがいいでぁ。」
    といって、なまえを ももの子たろうと つけた。
    それから、ふたりして おかゆをたいてやったり さかなを かってやったり、じぶんたちの たべるぶんまで たべさせたり、だいじに だいじに ももの子たろうを そだてたそうな

    著者の大川さんは、こう解説している、
    「このように生まれ育てられたももの子が、だからこそ、むっくりずんと大きくなり"日本一"強くなる。じいやばあがおそれてきたものに打ち勝ち父祖たちが果たせなかったことを果たして見せるのである」

    鬼退治の旅に出るきっかけが「鬼に村を襲われたから」ではなく「とんびのお告げを聞いたから」というのもまたおもしろい。
    外的な要因で性急に大人にならざるを得なかったわけではなく、愛情を受けて成長した結果、自然と期が熟し、独り立ちの欲求がももの子たろうの内面から生じたということなのか。

    鬼退治に旅立とうとするももの子たろうをじいさまとばあさまは一度は説得して止めようとする。二人の厚い愛情が一瞬自立の壁となる。けれどもたろうの意思が固く志が高いのを悟ると、一転して旅立ちの準備を甲斐甲斐しく整えてやり、たろうを送り出す。
    この辺りは、親の立場として私はまだあまり実感が持てないでいる。子供3人とにかく手のかかる時期がようやく過ぎ、長男が思春期の入り口に立ったばかり。

    最後にたろうが仲間と共に村に戻ってくるところまで、じいさまばあさまの子を想う気持ちは変わらない。
    [本文より]
    じいさまと ばあさまは むらはずれまで とんででて うれしがって むかえたそうな
    腰の曲がった2人がたろうを迎える場面が描かれている。じいさまは杖までついている。村はずれまでとんで出るのは楽ではなかっただろうな。ばあさまの顔は見えないけれど笑っているのかな泣いているのかな。

    こう感想を書くと、なんだかベタベタしたお話のように感じるかもしれないけど、決してそんなことはない。優しいがさっぱりとした語り口で、文の調子がとても良く、鬼退治の場面は独特の擬音語が多用されていて迫力がある。
    箕田源二郎の絵はこの絵本にぴったりの美しさで、他の作品も色々と見てみたくなった。
    川の流れや桃の色の鮮やかさ、桃から生まれた赤ん坊の力強さ、じいさまとばあさまの表情の柔らかさ、鬼の迫力……
    これまでに読んだ桃太郎絵本の中で、絵も文も一番好きだ。


    この絵本は、祖父が孫たちを囲炉裏端に呼び集めてももの子たろうの昔語りをしてやる、という形をとっている。
    「じろも さぶろも おはるも こい。いろりさ きて、火っこあたれ。おらが わらしで あったとき、まいばん、おらの じいさまやら ばあさまやらに きかされた ももの子むかしを かたるから……」
    と言ってお話がはじまり、
    「だからして、じろも さぶろも おはるも、すききらい いわねで、まんまだの さかなだの どっさりたべて、ももの子たろうのように おっきくならねば ならねでぁ」
    と言って語りは終わる。

    素朴な語り口からも、子の誕生と成長を願う気持ちがあたたかく伝わってくるのがいいな。大人が語る「ももの子たろう」を聞くたびに、昔の子供の心もきっと満たされただろう。
    生活の厳しさから、時にはほどけてしまいそうになる大人世代と子供世代との扭帯を、昔語りがつなぎとめてきたのかなぁ、なんて思ったりもした。

  • 昔から伝わっているお話なので
    様々な『ももたろう』を読んでみようと思った。
    その中の1冊。
    この本が気に入ったのは
    桃が流れてくる時の擬音、
    もう一つはもものこたろうが持っている旗に
    〝日本一〟と書かれていないこと。
    そしてなぜ宝物を持って帰ってきたのかが書かれていて
    何だか胸のつかえが取れた気がした。

  • 「ももの子たろうさん、ももの子たろうさん、かたなをさして、はたもって、どこいきなさる」−−おにたいじのお話。

  • 6-1 2018/10/17

  • 文のリズムがよくて読みやすい。 5才の男の子、食いついて聞いていた。
    読み始め、歌みたいな感じで始められたので、子どもの食いつきがよかったのかも。そして、リズムだけでなくて、文体も昔の話し言葉なのか、呪文みたいでおもしろい。なんだか優しい口調で読める。
    おもしろい1冊だった。この作者の本、他にも探して読んでみたい。

  • ももの子たろう言うから、桃太郎とは違う話かとおもらたいっしょやないか〜い!

  • 自分が小さい頃に何度も繰り返して読んだ本。子供には最初、桃太郎としては違う絵本を読み聞かせていたけれど、お姫さまやたからものの扱い等ちょっとずつ違うところにどうしても違和感があり、実家にあったこの本を読み聞かせて落ち着きました;;
    たからものを持って帰ることについては色々な考えがあるあもしれないけど、私にとってはみんなで力を合わせて鬼退治をして、たからものも力を合わせて持って帰って、みんなで分けて楽しく終わるのは、とっても気持ちいい☆
    一ぱい食べれば一ぱいだけ、二はい食べれば二はいだけ、三ばい食べれば三ばいだけ、大きくなる。。。の個所や、鬼が島にそびえる大きな門など、子供のときに心に刻まれたことを大人になってから思い返しています。

  • 幼稚園にも入ったし、いい加減3歳0ヶ月姉姫任せではなく、伝統古典を読ませねば! という謎の気合いにより借りてみた。
    ...が、しかし、このシリーズだとかなり文章が長い。
    姉姫、途中で飽きてました。
    ていうか、昔話の世界観がよくわかんない上に、しかも岩手方言ごと再現だから、聞き覚えのない音の羅列としか捉えられていない感じで、3~4ページあたりからぼけら~としてました。
    『えいごであそぼ』の(えいごふだの)「ももたどんだよ」と言ったんだけどな~。
    敢えて「KIBI-DANGO!」って読んだんだけどな~(苦笑)

    母は、心の底から「日本むかしばなし再来ぷりーづ!」と思いました。

    (あと「世界はじめてものがたり」系のアレも再来希望。おねえさんとぬいぐるみが物の起源追いかけて実写とアニメを行き来する奴)

全9件中 1 - 9件を表示

大川悦生の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×