ぼくの見た戦争: 2003年イラク

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (55ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591079652

感想・レビュー・書評

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  • イラク戦争開戦前から現地に派遣されたアメリカ海兵隊に従軍したカメラマンのレポート。等身大の戦争、戦場を生身で進む兵士が目にする光景が、ここにはある。

  •  アメリカ兵側の従軍カメラマンとしてイラク戦争に関わった報道カメラマン高橋邦典氏の文章&写真集。彼の写真は、戦争の悲惨さを、誇張ではなく、真実として伝えてくれていると思う。
     本のページをめくって飛び込んできた写真を見て、まず始めに、澄んだ青い空と何処までも広がる白い大地のコントラストがとてもきれいだと思った。戦争というすごく緊迫した状況であるはずなのに、空はなんて青々として美しいのだろう、砂漠はなんて色彩豊かなのだろう、と思ってしまった。そういう自然の美しさと対照的に、イラクで容赦のない攻撃に怯えながら必死に生きている人々の表情は、哀しみに満ち歪んで見えた。その顔を眺めているうちに、とても悲しくなった。自然はこんなにも美しいのに、人間たちは一体何をしているのだろう、と憤りまでもがふつふつと湧き上がってきた。
     イラク戦争という言葉だけを聞くと、物語の中の出来事であるかのように思えてしまうが、この本に掲載されている写真に写された光景が、すべて現実世界のイラクという場所で起こっていたことなのだと思うと、とても不思議な感じがした。それと同時に、その現実を現実として認識できていなかったことや、戦争で悲惨な目にあっている人がいたのにも拘らず、そのような事件を他人事であるかのように思っていたことが途轍もなく恐ろしく思えた。
     関節が外れ、不自然な形に足が曲がってしまっているイラク兵の死体。砂嵐に呆然と立ち尽くすアメリカ兵の姿。鉄筋がむき出しになった我が家の無残な姿を見て泣いているおばあさん。足に怪我をし、包帯を巻かれて横たわっている少年。腕を縛られうなだれるイラク人男性。着の身着のまま避難する女性と子どもたち。
     彼らは一体何を思い、何を信じ、そこに生きていたのだろう。誰も悪人には見えない。兵士ですら戦争を「仕事」だと思っているだけなのだという。これは一体どういうことなのだろう。兵士たちは「早く家に帰りたい」と思っているし、イラクの住民は「戦争なんてもうこりごりだ」と思っている。一体戦争なんて事をする必要があったのだろうか、と考えさせられる。
     あの戦争は本当に必要だったのだろうか。戦争に正義なんてものが存在するのだろうか。読む者にそういう根本的な疑問を突きつけ、人間とは何か、人間はどうあるべきなのかということを考えさせてくれるいい本だった。
     戦争を考え直すいいきっかけになると思う。ただ耳で聞いた情報で知っているのと、写真を見るのとではだいぶ与えられる印象が違うということに驚くはずだ。

  • 権力者が振りかざし、マスメディアが煽る「正義」の名のもとに、多くの人命が奪われる。
    人間同士が傷つけあうことの愚かさを突きつけられる。

  • カラー写真で見るならば。

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