月のうた

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 193
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591099551

感想・レビュー・書評

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  • 小学4年生の時に母をガンで亡くした民子の成長と、その家族の物語。

    各章が、民子、継母の宏子、母の親友の祥子、父亮太それぞれの視点から描かれる手法。
    最初の民子の章は辛かったです。
    まだ中学生の民子は、母と祖母の死を受け入れてはいても、我慢をし続けていることが多数ある様子で、痛々しくて、悲しくなりました。
    この章では宏子も亮太も、私の中では悪人の立ち位置で、最後に今のように温かな気持ちで読み終えることが出来るとは思っていませんでした。

    とても素敵なお話でした。
    民子が幸せになれますように。
    国原家の残り3人も、楽しく暮らしていけますように。

  • 数年前に穂高さんの本に出会って
    ずっと読みたくて
    タイミングをはずしてここまできた一冊。

    今の私にはこの本が必要で
    読み切ることができて良かったと本当に思ってます。
    欲してるものとか
    正直自分ではよくわからないけど
    自然と手にとっていて何とも言えない気持ちです。

    母親・美智子はガンで亡くなり、
    父親と
    再婚相手の宏子と
    老人ホームで亡くなった婆ばと
    美智子の親友である祥子と息子の陽一と、

    そして美智子の子どもである、民子。

    不器用で愛のある家族の話です。

    繋がりのある短編で
    民子の目線からの「星月夜」
    継母の宏子の「アフアの花祭り」
    親友である祥子の「月の裏側で」
    父親からの「真昼の月」

    自分が年を重ねてきているからか、
    もちろん民子の話はぐっときましたが
    自分の感情が残っているのは継母である宏子。

    彼女は再婚相手であり、父親とも年が離れているし、
    料理もだめで、御惣菜ばかり買って、
    口調も適当で
    本当にダメ女として描かれていくのかと思っていました。

    親族たちに陰口をたたかれても
    負けない彼女は
    本当に幸せになるべきだし
    きっと幸せになれる。

    とにかく物語の真ん中には
    「終わり」と「始まり」が
    静かに横たわっていて
    それをしっかりと受け止めて行く民子の姿は
    周りのおとなたちよりも
    ずっと格好良い。

    と言うか、大人なんてそうなのかもしれない。
    年齢を重ねた分、
    いろんな感情や状況や
    思考が頭をぐるぐるしていて
    足踏みや躊躇をする。

    どんなに気をまわしても
    思っていても
    相手に伝わらないこともあって。

    でも、
    それでも
    相手を大事にする気持ち
    寄り添っていたい気持ち
    月と一緒に
    その気持ちと物語が進んでいきます。

    不覚にも泣いてしまいました。苦笑
    民子の発する言葉が
    的確で優しくて、思いやりがあって。
    そーゆーあったかさに触れる瞬間て本当に愛おしい。

    昔の私だったら読めなかったかもしれない。
    家族にも子どもにも感情移入できなくて。
    もちろん今でも完全ではないけど。

    月の裏側にいる大切な人たち
    優しく見守って
    そして微笑んでくれているんでしょうか。
    こんな季節なのに
    夜道でホットレモンを飲みたくなる一冊です。苦笑

  • 月がつなぐ親子の話

    しすかに横たわるあたたかさがよかった

  • 「本当のやさしさってのはね、自分のことは全部背負いこんで、きっちり落とし前をつける強さがないと出てこないもんなの。そういう覚悟がある人だけが他人に本当にやさしくできるの」

    登場人物の視点を変えながら、同じ状況を違う視点で描きながら、物語は少しずつ進んでいく。
    ”死”が絡んでいるのもあると思うけれど、其々が互いを思いやる気持ちにあふれていて、心に沁みる。

    伊吹有喜の本を好きだとここに書いたら、穂高明の本も好きかもよ!とここで教えて下さったので、読んでみました。ありがとうございます。(通勤電車で読むのは危険)

  • 読了後に余韻が強く残る家族の物語。
    章ごとに分かれた人物たちの心模様が読みやすい。
    そして章ごとに読むと人物たちの本心が垣間見える。
    そんな不器用で衝突ばかりの家族がイジらしく愛おしい。
    読み手が優しく見守る形になる構成や、内容の深さや現実など熟読して読むことが出来た本。

  • そっかこれも月の本だったんだ。
    すっかり忘れてた。
    眼鏡かけて星見るとこだけは憶えてたなあ。
    そうそう月は同じとこしか見えないんだよね。
    すっかり忘れてた。

  • 登場人物のことが明確に伝わってきて
    集中して読めた

    旅立ちの春にオススメの一冊
    思春期の女の子をもつお父さんたちにもオススメ


    祖母のことを
    久しぶりに思い出した
    もっといろいろ教わっておけばよかったと反省

    家族で生活できる日々は
    とてもとても短い

    陽一くん、朔望くんの命名理由はよくわかった
    民子ちゃんの命名理由も知りたかったかな






  • 登場人物がよい。
    母を亡くした民子、母方の祖母と父との暮らし、父方の伯母と従兄、父の再婚相手で30代の宏子、母の親友とその息子陽一。
    淡々としていながら強い気持ちで自分を保っている民子。
    章ごとに違う人物の目線で語られ、時系列に沿って進む。
    みんなが民子見守っていて、あたたかい。
    なんだか頼りないお父さんも、一見何も考えてなさそうな宏子も、月をモチーフにした静かなストーリーもよかった。

  • とてもよかった。
    この本に出合えたことに感謝したいです。

    「むすびや」を読んだことで何となく名前を憶えていた作者さん。
    こちらがデビュー作なんですね。
    丁寧に綴られた、とてもとても良い話でした。

    今度はしっかり名前を刻み込みました。
    別作品も読もうと思います。

  • 子どもと大人というのは時間軸の話で、人間としての度量の大きさとか優しさとかはは子どもと大人という縦軸とはまた違ったベクトルで決まっているような気がします。
    もちろん経験によるものも多大とは思いますが、死ぬまで心が狭くて優しくない人なんて腐るほどいますから。
    主人公の民子は中学生ながらナチュラルに度量が大きく、大人縦軸の拡張でさらに将来開花しそうな、意思も強くて優しい女の子。でもそういう風にあからさまに書いていないのが憎い。それなりにイライラしたりぶつかったりするし、基本愛想が不足しているのですが文章から読み取れる情報だけでも真っ直ぐ育っているのが感じられます。
    民子は母を早くに亡くし、その後若い後妻が来るのがポイントなのですが、ここは是非読んで確認して頂きたいです。父親がちょっとあんぽんたんなのは女性陣を引き立てる為なのでしょう。

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著者プロフィール

一九七五年、宮城県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。二〇〇七年『月のうた』で第二回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。同作は、傑出した筆力を書評家などから絶賛された。他の著書に『かなりや』(ポプラ社)、『これからの誕生日』『むすびや』(双葉社)、『夜明けのカノープス』(実業之日本社)がある。

「2019年 『青と白と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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