- Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591118931
作品紹介・あらすじ
檻のなかで半眼を開き、飲まず食わずで座りつづける。そんな断食芸が喜ばれた時代は去り、誇り高き芸人は苦悩する(カフカ『断食芸人』)。完全なる静寂、闇に微かに震える翼-北方で国境警備にあたる日本兵が塹壕の覗き穴からみた巨大な生命のうねり(長谷川四郎『鶴』)。地下室でパンを焼く男たちに笑いかけるターニャ。彼女の存在は疲れた男たちの希望だったのだが…。(ゴーリキイ『二十六人とひとり』)。踏みつけられた者たちの、胸に迫る人間ドラマ。
感想・レビュー・書評
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人生の穴にはまってしまって、そこから出られない人達の物語三編。
こんな時期に読むには気が重くなってしまうものばかり。
穴に入り込んでしまうのは、致し方ない場合と自ら入り込んでしまう場合とがあって、この中ではカフカのケースだけが唯一自ら入り込んだパターン。自ら入った場合は出ることも可能なのに出ていけない。そこから出られれば新しい世界も開けるかもしれないのに…自ら縛ってしまう人間の悲劇。
長谷川四郎は初めて読みました。というか、この方知りませんでした。第三の新人の一人だそうです。暗い話ではあるが文章はきれいだと思った。
ゴーリキィは本を読んだ事はなくて、NHKの劇場中継で「どん底」を見た事があるだけでした。どん底も行き場のないやりきれなさが残る作品でしたが、こちらもその類いです。ただ、行き場のない人達の中にもユーモアがあって、人間臭さが感じられて、この中では一番面白く読めました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『断食芸人』は適度に抽象化された比喩で人によって多様な解釈ができる余地が残される。誰しも内側に断食芸人的な要素を抱えるからこそ共感を呼ぶのか。
『26人とひとり』は現代のSNSでも見られる、賞賛から悪意への反転。昔から珍しくない現象だったのだろう。93/100 -
カフカ『断食芸人』
軽みというかコミカルな味がありますね。
長谷川四郎『鶴』
満洲の兵隊もの。実体験がベースにある模様。
ゴーリキイ『二十六人とひとり』
ゲスい!そして哀れ。 -
希望も何もない『穴』
どの作品も本当に穴でした…。 -
フランツ・カフカ | 断食芸人
長谷川四郎 | 鶴
ゴーリキイ | 二十六人とひとり
難しくて『鶴』まで読んで読むのやめました。だから『二十六人とひとり』はどんな作品かわからないけど、この本の中で私は『鶴』がいちばん好きだなあ。 -
カフカ『断食芸人』:人生そのものが墓穴
長谷川四郎『鶴』:大きな穴の中に偶然か必然か一人分の穴
ゴーリキイ『二十六人とひとり』:穴の中で集団で暮らすということ
という印象。 -
2013.3.25
『断食芸人』カフカ
カフカ読んだの変身に続き二作目。少し変で重く暗い。
『鶴』長谷川四郎
地下からのぞく広大な岡。拡大されどことなく非現実的。
『二十六人とひとり』ゴーリキイ
限定された世界での生きる望みとか気の持ちようの大切さ。
ゴーゴリと名前似てるな。 -
カフカ「断食芸人」
長谷川四郎「鶴」
ゴーリキイ「二十六人とひとり」
「断食芸人」を『穴』に入れたセンスはすごい。ゴリゴリの精神の穴。
真っ暗で真っ黒。なんとも言えない最後。
「鶴」はなんかもうよく分からん。
これが極限の精神状態ってやつか。
割と平和な状況が続いていたから、最後の異常さが際立つ。
「二十六人とひとり」穴倉の中の男たち。
自分たちで作り上げた聖像を自分たちで壊してしまう。
体が穴にはまってしまうと、精神も穴にはまってしまうのかな。