壁 (百年文庫 76)

  • ポプラ社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (149ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121641

感想・レビュー・書評

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  • ◾️ヨナ/カミュ◾️
    とけてゆく"壁"。ときたまジャックタチ的造形と情景のおかしみにわらっちゃう。じぶんの星の光を、みつけるおはなし。
    「そういう君は、いったい存在しているのか。」

    ◾️魔法のチョーク/安部公房◾️
    壁にとけていった画家のおはなし。かわいそうなアルゴン君。世界をつくりかえるだなんて、傲慢だったね。ただおなかいっぱいになりたいだけだったのに。

    ◾️「人生」という名の家/サヴィニオ◾️
    ベルトルッチのような情景に酔いしれる。じぶんじしんで造りあげた壁を破らずに、幻境の壁を突破したおとこの夢。なんだかクセになる。だからわたしはもういちど、あの家の前にいる。

    とけてゆく壁。とけこんでゆく壁。幻境の壁。さまざまな壁のこちらがわとあちらがわ。おかしくてあたたかくてさびしいそれぞれのものがたりは、孤独な人生のひとひらの夢のようで、とてもいとおしかった。

  • カミュ、安部公房、サヴィニオ。
    それぞれ作風も違うが、「壁」にまつわる物語。

    『魔法のチョーク』よかった。
    のめり込んでいく。最後は「そりゃそうだ」と思った。

  • 幻想的な感じのする3編。特にサヴィニオは如何様にも解釈できる不思議な味のある作品。52/100

  • 「ヨナ」
    出だしは、淡々とした文章に皮肉やユーモアが効いていて、面白い。
    ヨナの若々しさ、人の好さ、純粋さが感じられる。
    お人よしが過ぎて、生活は混乱しているが、その中でも作品を生み出し、人を引き付ける力があった。
    ずっと描いていたいという言葉と裏腹に、ヨナは描けなくなってゆく。
    才能が枯渇する苦しみがありありと描かれていた。

    「魔法のチョーク」
    今までに数回読んだことのある作品。
    部屋に閉じこもって、自分の世界を作ろうとするアルゴン。
    しかし、それらはやはり、まやかしでしかなかった。
    まるでひきこもりの人の精神状態を読んでいるようにも思えた。

    『「人生」という名の家』
    たどり着いた屋敷は、まるで人間がすっと消えてしまったかのように、存在のぬくもりと形跡だけを残している。
    まるでお化け屋敷のようだが、それは彼の人生をなぞっている。
    母親の死を迎えた後のアニチェートの人生はまだ空っぽで、彼はどういったものでそこを飾り埋めるのだろうか。
    人には、運命というか個性というか、人生を貫く一つのカタチがあるのかもしれない。
    まるで、一つの曲がその人の人生に繰り返し響くように。
    そして、その自分の人生から逃れることは出来ない。
    気が付けば、時は流れ、過ぎ去ったものは戻ってこない。
    死は決して敵ではなく、安らぎである。
    最後のメッセージに、生きてゆく辛さと煩雑さが、癒される思いがする。
    彼は幻惑から目覚めるだろう。
    それでも、彼の中でこの館は息づいているのだ。

  • カミュ『ヨナ』
    安部公房『魔法のチョーク』
    サヴィニオ『「人生」という名の家』

  • ・カミュ「ヨナ」◎
    カミュ好きだぁ。ドライなユーモアがある。
    芸術家ヨナはひたすら画を描く。評判をあつめると弟子や批評家が家にこぞってやってきて、それでも家のほんの狭いスペースで画を描く。評判が悪くなると今度は孤独が。
    常に開かれていたはずのヨナであるのに、彼は本当に孤独みたいだ。

    ・安倍公房「魔法のチョーク」○
    壁に描くとなんでも出てくる魔法のチョーク。ドラ〇もんみたいなやつ。
    少々おもしろい。

    ・サヴィニオ「『人生』という名の家」
    忘れた。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、2階文庫本コーナー 請求記号:908.3//H99//76

  • カフカのような、非現実的な世界感。「名前を失って、世界から追放される男」「欲望と妄想が肥大化した世界に連れ込まれそうになる男」と、自分が生きていた世界から唐突に突き放される不安。

    かなりドロドロした内容なのに、「明るく」「軽く」感じてしまうのは、ものすごい筆者の筆力ゆえでしょうか。社会への痛烈な批判が露骨にあらわれる部分があり、一方で何を言いたいのか掴みきれない部分がある。

    何度も読みたくなる作品です。

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