- Amazon.co.jp ・本 (149ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591121641
感想・レビュー・書評
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◾️ヨナ/カミュ◾️
とけてゆく"壁"。ときたまジャックタチ的造形と情景のおかしみにわらっちゃう。じぶんの星の光を、みつけるおはなし。
「そういう君は、いったい存在しているのか。」
◾️魔法のチョーク/安部公房◾️
壁にとけていった画家のおはなし。かわいそうなアルゴン君。世界をつくりかえるだなんて、傲慢だったね。ただおなかいっぱいになりたいだけだったのに。
◾️「人生」という名の家/サヴィニオ◾️
ベルトルッチのような情景に酔いしれる。じぶんじしんで造りあげた壁を破らずに、幻境の壁を突破したおとこの夢。なんだかクセになる。だからわたしはもういちど、あの家の前にいる。
とけてゆく壁。とけこんでゆく壁。幻境の壁。さまざまな壁のこちらがわとあちらがわ。おかしくてあたたかくてさびしいそれぞれのものがたりは、孤独な人生のひとひらの夢のようで、とてもいとおしかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カミュ、安部公房、サヴィニオ。
それぞれ作風も違うが、「壁」にまつわる物語。
『魔法のチョーク』よかった。
のめり込んでいく。最後は「そりゃそうだ」と思った。 -
幻想的な感じのする3編。特にサヴィニオは如何様にも解釈できる不思議な味のある作品。52/100
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「ヨナ」
出だしは、淡々とした文章に皮肉やユーモアが効いていて、面白い。
ヨナの若々しさ、人の好さ、純粋さが感じられる。
お人よしが過ぎて、生活は混乱しているが、その中でも作品を生み出し、人を引き付ける力があった。
ずっと描いていたいという言葉と裏腹に、ヨナは描けなくなってゆく。
才能が枯渇する苦しみがありありと描かれていた。
「魔法のチョーク」
今までに数回読んだことのある作品。
部屋に閉じこもって、自分の世界を作ろうとするアルゴン。
しかし、それらはやはり、まやかしでしかなかった。
まるでひきこもりの人の精神状態を読んでいるようにも思えた。
『「人生」という名の家』
たどり着いた屋敷は、まるで人間がすっと消えてしまったかのように、存在のぬくもりと形跡だけを残している。
まるでお化け屋敷のようだが、それは彼の人生をなぞっている。
母親の死を迎えた後のアニチェートの人生はまだ空っぽで、彼はどういったものでそこを飾り埋めるのだろうか。
人には、運命というか個性というか、人生を貫く一つのカタチがあるのかもしれない。
まるで、一つの曲がその人の人生に繰り返し響くように。
そして、その自分の人生から逃れることは出来ない。
気が付けば、時は流れ、過ぎ去ったものは戻ってこない。
死は決して敵ではなく、安らぎである。
最後のメッセージに、生きてゆく辛さと煩雑さが、癒される思いがする。
彼は幻惑から目覚めるだろう。
それでも、彼の中でこの館は息づいているのだ。 -
カミュ『ヨナ』
安部公房『魔法のチョーク』
サヴィニオ『「人生」という名の家』 -
・カミュ「ヨナ」◎
カミュ好きだぁ。ドライなユーモアがある。
芸術家ヨナはひたすら画を描く。評判をあつめると弟子や批評家が家にこぞってやってきて、それでも家のほんの狭いスペースで画を描く。評判が悪くなると今度は孤独が。
常に開かれていたはずのヨナであるのに、彼は本当に孤独みたいだ。
・安倍公房「魔法のチョーク」○
壁に描くとなんでも出てくる魔法のチョーク。ドラ〇もんみたいなやつ。
少々おもしろい。
・サヴィニオ「『人生』という名の家」
忘れた。 -
新着図書コーナー展示は、2週間です。
通常の配架場所は、2階文庫本コーナー 請求記号:908.3//H99//76 -
カフカのような、非現実的な世界感。「名前を失って、世界から追放される男」「欲望と妄想が肥大化した世界に連れ込まれそうになる男」と、自分が生きていた世界から唐突に突き放される不安。
かなりドロドロした内容なのに、「明るく」「軽く」感じてしまうのは、ものすごい筆者の筆力ゆえでしょうか。社会への痛烈な批判が露骨にあらわれる部分があり、一方で何を言いたいのか掴みきれない部分がある。
何度も読みたくなる作品です。