- Amazon.co.jp ・本 (149ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591121870
作品紹介・あらすじ
幼時から許婚のような間柄である貞吉は、妙な絵ばかり描いている甲斐性のない男にみえた。お綾は貞吉に心を寄せながらも他家に嫁ぐ。貧しくとも、真心を尽くして生きた男の生涯(今東光『清貧の賦』)。世の明るさを一身に集めたような恋は突然、終わった。香気溢れる悲恋の調べ(北村透谷『星夜』)。戊辰戦争に敗れた会津藩士の子・荘十郎は、各地を転々としながら、姿の見えぬ「敵」に長刀をふりかざす(田宮虎彦『霧の中』)。激動期の日本、辛苦と哀しみに耐えつつ歩いた庶民の長い道のり。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
今東光 池大雅の弟子、佐竹噲々の評伝。江戸時代の話なのに会話で「芸術云々」と語られると、一気に興が醒める。
田宮虎彦は江戸から昭和まで生き抜いた元旗本の倅の一代記。時代に恵まれなかった人間への眼差しが深い。 -
「清貧の賊」
人の人生や幸せとはいかなるものか。
己のやりたいことや為すべきことに真っ直ぐ向かい合って生きるということの豊かさや尊さを感じた。
人基準ではなく、自分はどうしていくのか。
目の前の現実を大切に、日々を積み重ねていく素朴な姿が美しい。
その人生は仏教の真髄と重なるのだろうと思う。
「星夜」
本人に会って話し合わないの?
と、現代人の私には少し不思議な感じがする。
でも、昔のことだから、正直な話とはならず、建前のやり取りとなってしまうんだろうな。
女の心は、というより、他人の心はわからないものだよな、と思う。
「霧の中」
霧を払う努力が出来なかった。
チャンスはいくらでもあったと思う。
不幸と混乱と屈辱とに絡めとられた人生のように見える。
地に足を付けて道を踏みしめることを避けた男のなれの果て。
1話目と真逆の話だと感じた。 -
今 東光『清貧の賦』
北村透谷『星夜』
田宮虎彦『霧の中』