わたしをみつけて

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591135365

感想・レビュー・書評

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  • いい子でなくても捨てられないことを自分でたしかめるために、どこまでゆるされるか親をためす。いい子でなければまた捨てられてしまうという絶望。もう二度と絶望しないように、いい子の仮面をかぶりつづける。いい子もわるい子も自分なのに。
    看護師になった主人公は、いろいろな大人が子どもたちを見守っていることを知る。見守ってきた人は見守られることを知る。自分が見守られてきたことに気づき、見守る人になろうとする。看護師のかぶる仮面は自分を守るための仮面ではなく、他の人を守るための仮面だった。

  • 「きみはいい子」がとても良かったので、中脇初枝さんの「わたしをみつけて」も借りて読んでみました。
    「好き嫌い」がハッキリ別れる本だと思います。
    『小説新潮』7月号・山本周五郎賞の選評を事前に読んだので、・・・どうかなー・・・「きみはいい子」のほうは良くて、こっちは全然ダメなのかな?と、あまり期待していなかったんですが、とても良かったです。
    読んで良かった。


    「きみはいい子」同様に、虐待が根本を流れています。
    親に愛されているか、愛されていないか。子どもが愛されていることを実感しているか・・・。まだ2冊しか読んでいませんが、きっと中脇氏の「描く原動力」というか、著作テーマなんだと思います。なので「虐待」とか「愛されていないかもしれないという不安」とかいうテーマに、まったく共感できない方は、中脇氏の本は全然面白くないだろうな。と。

    人は愛されていることを自覚して育ったタイプと(経済的なものは関係なく。)、
    程度の差こそあれ、(たとえ虐待とはいえないものだったとしても)家庭での立場にすごくさみしさを感じていたり、愛されていないかもと感じたりした子ども時代を経たタイプの人がいて、
    両者はこの本をどう感じるか、まったく違うと思うのです。
    あるいは「子どもが可愛くて可愛くて仕方ない、育児は天職だ」と思えるタイプは読まなくていいかな。「子どもは可愛いんだけど、仕事から疲れて帰ってきて、自分の思うようにいかずに子どもを叩きたくなった、怒鳴りたくなった(実際に叩いてなくても)。悲しい。」と思うような(これすなわち私)母親ならm共感できるかもしれない。


    「児童養護施設」「病院の現場」あたりのリアリティは低いです(どうしてわかるかというと、かつての職場だから。苦笑。でも、中脇氏も児童養護施設等に思い入れがあるのかもしれません。)でなければ、数十年前の現場の姿なのかな。現代の病院の問題点にメスを入れる!とか、そういうテーマではないです。そもそもこれは、この物語の主要軸ではない感じがする。


    主人公・弥生の成長物語。
    本屋でこれを見かけたら最初のページだけでも読んでみて、もし物語に入っていけそうだったら読んでみることをオススメします。
    (主人公が自分を一番憐れんでる、とか、かわいそうな自分に酔ってる、とかいう評をいろんなところで見ましたが、もし私自身が弥生だったら、そうやって自分自身を憐れまなければ(実際、弥生はかなり自己評価低いし)生きていけなかっただろうなあと思います。)
    「わたしは自分ひとりで生きて育ってきたわけではなかった」と、師長とのやりときで気付き、前を向いて生きていこうとするあたりは感動します。弥生は、痛みを乗り越えたんですね。
    私は師長と弥生の、「笑顔についてのやりとり」を見てから、仮面でもいいから「笑顔のおかあさん」をやろうと思いました(笑。30年続けたら、きっと「いつも笑顔のお母さん」となるでしょう。

    「僕が悪い子だから、うちにはサンタさんが来ないんだ。」と言っていた、
    「きみはいい子」の神田さん、こちらにも。(実際にこの子は登場しないんだけど)
    幸せになってね、神田さん。

  • やっぱり好きだな、中脇初枝さんの作品。

    捨て子だった山本弥生が、藤堂看護師長、菊池さんとの出会いによって、人として、看護師として成長するお話。

    「自分ひとりで大きくなったわけではなかった」と気づくまでの道程。
    「わたしはわたし」だという心持ちにまで至る。
    その過程の描き方が良かった。
    シンプルで、淡々とした印象を受ける文章がまた効果的。

    優しくて強い人の話はとても好きだ。

  • 親に捨てられて施設で育った山本弥生は、いい子の仮面をつけて准看護師として働いている。
    いい子でないと捨てられる、いつでもその不安の中で生きているから。

    そんな弥生が、新しく看護師長としてやってきた藤堂師長や、帰宅途中で知り合ったおじさんとの出会いによって、次第に自分を見つけ、明日への希望を持ち始める。

    少しご都合主義な部分も目についたけれど、とにかく心を揺さぶられ引き込まれる作品でした。

  • この作家さんの本は初めて読みました。
    途中、何度か泣きそうになりながら
    一気に読み終えました。
    良かった〜。
    続編ないかなぁ。

  • いい子でいることが重要で。
    他人の命を預かっている場所ですら、素直に間違いを認められないなんて怖すぎやしないか。
    知識の差はあるかもしれないが、医学について勉強していることに変わりないのだから少しぐらい話を聞くべきなのではないのか。

  • 「いい子じゃないと、いけませんか」という
    キャッチコピーに惹かれて手に取った一冊。

    いい子でいたい。
    もしもいい子じゃなくなっても、
    見捨てないでくれるだろうか?
    主人公の気持ちがひしひしと伝わってきました。

    きっと誰しもがもっているだろう
    「いい人に思われたい」という気持ち。
    でもその気持ちが自分を苦しめているんだなと
    改めて思いました。

    「いい子」ってなんだろう?
    そう考えさせられた一冊です!

  • プロ意識と人間性は切っても切り離せない。
    日頃自分がどんな仕事でもプロ意識を忘れずに
    一生懸命やってきたことを肯定された気がして
    とても嬉しくなりました。
    医療機関は患者には見えない上下関係があり
    権力関係がある。
    でも患者を前にしてその権力は果たして必要だろうか?
    と不満に思っていた私に、
    とても刺さる内容でした。

  • とても素敵な師長で良い本でした。

    この顔はね、仮面なの。
    看護師の仮面。病院に着いたら、仮面をかぶるの。
    よく、若いひとが、自分探しとか言って、ほんとの自分を探して旅をしたり、転職してみたりするでしょり
    ほんとの自分がどこにいると思ってる?
    ほんとの自分なんてね、なんだっていいのよ。そんなのないと言ってもいい。仮面をかぶって30年もたてば、それが、ほんとうの自分。

    印象に残っています。

  • ずしっとくる。
    ずし、っというより、めりめりっと心にめり込んで来る感じかもしれない。

    ずっと1人ぼっちだと思いこんで生きてきた弥生。
    親に捨てられたことで、施設を転々とし、誰にも心を許すことなく生きていた。

    でも、菊池さんというおじいちゃんや藤堂師長、同僚の神田さんとの出会いで、彼女は気づく。
    今までも、今も、決して1人ではなかったのだということに。人のあたたかさに触れて、彼女が変わっていく様が心強く、頼もしく、嬉しかった。



    優しくされて初めて、痛みがわかるようになったんだね。
    これでやっと、嫌なことは嫌だって感じられるようになる。自分を大事にできるようになるんだよ。
    ひとりでできないことは、誰かの力を借りて。


    その通りだと思います。

    当たり前に思ってつい忘れがちな大切なことを、思い出させてくれる一冊だと思います。


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著者プロフィール

徳島県に生まれ高知県で育つ。高校在学中に坊っちゃん文学賞を受賞。筑波大学で民俗学を学ぶ。創作、昔話を再話し語る。昔話集に『女の子の昔話 日本につたわるとっておきのおはなし』『ちゃあちゃんのむかしばなし』(産経児童出版文化賞JR賞)、絵本に「女の子の昔話えほん」シリーズ、『つるかめつるかめ』など。小説に『きみはいい子』(坪田譲治文学賞)『わたしをみつけて』『世界の果てのこどもたち』『神の島のこどもたち』などがある。

「2023年 『世界の女の子の昔話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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