江の島ねこもり食堂

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591154182

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  • ねこもりって何だろう。
    江の島とねこもりのタイトルに魅かれて読んでみた。

    江の島に住む半食堂半民宿を営む女性たちの物語。
    代々江の島の野良猫たちの世話をする役目を
    受け継いでいる女性たちである。
    「ねこもりさん」と呼ばれる彼女たちは毎日猫の世話をしている。
    お返しに猫に不幸がこないように守られるような生活である。

    物語は2002年、高校生の麻布がねこもりのとき、
    大負債を背覆って江の島から一家が夜逃げする話から始まる。
    次の章は1915年、すみゑがねこもりのとき、
    島で知り合った少女からある預かり物をし、
    きっと取りに戻ってくるからという約束をかわす。
    1963年、ねこもりは筆。
    1988年、ねこもりは麻布の母である容子と、
    麻布の曾祖母の代からの話しが現代へと続いている。
    2017年、麻布たちは島から夜逃げして松島に移り住んでいた。
    麻布は預かり物を手にして再び江の島を訪れてみる。
    そこで、半世紀以上たっての奇跡的な再会を果たすことになった。

    ねこもりの女性たちの運命が変わろうとするとき、
    きまって関わってくる、島の猫がいる。
    背中に太い5本のトラシマ模様をつけた茶トラの猫。
    ねこもりの代が変わるように
    縁の深い5本のトラシマ模様の茶トラ猫も
    代々変わっているようだが、
    その縁は受け継がれているようである。

    野良猫だが、
    ねこもり一家を陰で見守る不思議なトラ猫。
    江の島への故郷愛とともにねこたちへの愛情も十分に感じられた。
    果たして江の島に「ねこもりさん」は本当にいるのだろうか。
    それ以前に江の島は本当に猫の島なんだろうか。
    作品内容も面白かったが、
    そういう疑問の方が印象深い作品だった。

  • こういう世代を追ってゆくストーリー、個人的に好き。

  • いきなりお店を放棄して夜逃げになったときにはどうなることかと思った。
    何か、ファンタジーなどんでん返しがあるとか、いきなり救世主が現れて救ってくれるとか…
    冒頭からそんな事は起きませんでした。

    江ノ島の「山二つ」にある、「半分亭」は、横に並んで三つの入り口があり、一番左が民宿、真ん中が食堂、右は家族の母屋の入り口で、この部分だけが二階建て。
    突然、何もかも捨てて去らなくてはならなくなった、佐宗麻布(まゆ)一七歳。

    半分亭は『猫とお客さんに助けられてつづいてきた店』
    佐宗家にはなぜか女しか生まれず、その女たちは、代々「ねこもり」を引き継いできた。
    ユエ、すみゑ、筆、溶子、麻布と続いてきた、女性たちと、彼女たちと江の島との様々な思いと歴史が語られる。
    懐かしい昔と、決して平たんではない彼女たちの道でしたが、それぞれの青春があったのだな、と。
    麻布も…もしかしたら麻布が一番苦労をしたかもしれない。
    甘いだけでない、でも希望の持てる結びで良かったです。

  • 江ノ島に店を構える半分亭。
    その家の女子には、代々ねこもりという役割があってー
    100年、世代を超えて繋がる人と人とのドラマ、愛情がじんわりと心に沁みました。
    名取さんの、人を見つめるあたたかな眼差しは健在。読後は爽やかで優しい気持ちになれます。
    要所要所で顔を出す猫たちも、神秘的で憎めなくて、印象的でした。
    こんな風に、人や猫と繋がれたらいいなぁ

著者プロフィール

名取 佐和子(なとり・さわこ):兵庫県生まれ、明治大学卒業。ゲーム会社勤務の後に独立し、2010年『交番の夜』で小説家デビュー。著書に『ペンギン鉄道 なくしもの係』(第5回エキナカ書店大賞受賞)シリーズ、『金曜日の本屋さん』シリーズ、『シェアハウスかざみどり』『江の島ねこもり食堂』『逃がし屋トナカイ』『寄席わらしの晩ごはん』『七里ヶ浜の姉妹』『ひねもすなむなむ』『図書室のはこぶね』(京都府私立学校図書館協議会司書部会「中高生におすすめする司書のイチオシ本2022年度版」第6位、「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2022」第8位、うつのみや大賞2023第4位)ほか多数。

「2023年 『文庫旅館で待つ本は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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