花のお江戸で粗茶一服 (ポプラ文庫ピュアフル ま 1-5)

著者 :
  • ポプラ社
4.20
  • (2)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 55
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (493ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591166673

作品紹介・あらすじ

「茶の湯だけでも奥深いのに、
 弓と剣まで納めなくてはいけないとは。
 友衛家に生まれなくてよかったとしみじみ思いました。
 しかし他人事にも思えない本書です。(笑)」
 ――武者小路千家若宗匠 千宗屋氏

「“粗茶”シリーズの世界に遊ぶことは、
 小説を読む悦楽に浸ること。
 夏、涼しく、冬、暖か。
 いつまでもいつまでも読みつづけていたい。」
 ――作家 大島真寿美氏
 
異色の青春お仕事小説の傑作!

弓、剣、茶の「三道」を伝える〈坂東巴流〉の
嫡男・友衛遊馬、二十歳。
家出先の京都から帰還するも、
家元でさえ副業しなければ家族を養えない貧乏流派ゆえ、
働き口を探してこいと言われてしまう。
建造が始まったスカイツリーの警備員に収まるが、
周囲からは「あそこの跡継ぎはダメだ」と後ろ指を指され、
ガールフレンドとの仲も“行き止まり”。
冴えない日々の中、曲者ぞろいの茶人武人にやりこめられながら、
遊馬は自分の進むべき道をぐるぐると探しつづける。
明日が見えないあなたに贈る、笑えて泣けて元気になれる物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ここにきて遊馬の急成長がとても心強く感じた。

    東京スカイツリーの現場のこと、東北の震災の時のこと、次々続くご不幸のことなど、事実と物語のつながり具合が絶妙で、特に後半は一気に読了した。

    またいつか成長した遊馬や行馬が率いる坂東巴流が見られたらいいと思う。

    余談:東京スカイツリーの工事現場が毎日きちんと整えられているというくだりを読んだ日に、たまたまテレビで熊本城の復旧工事現場の映像を見た。きちんと整列された崩れた石垣の石と、遊馬が見たスカイツリーの現場が整理整頓されていることとは、見た目は違えど趣旨は同じで、それが毎日当然のようになされているのだろうと思い、とても気持ちがよかった。

  • 粗茶一服シリーズの待ちに待った続刊です。買ってから長い間読めませんでした。読み終わった今は早く読んでおけば良かったなと思います。なるべく本の中に近い時間で読んでおくべき話でした。
    将来に悩んだ青年は京都での修行を経て東京に帰ってきました。周りは家元を継ぐ決意をしたのだろうと思っていますが、本人だけが納得していません。理屈ではなく、自分が納得しなければ動かない遊馬のことを優しく見守っています。足かけ四年。武道と茶道をおさめつつ、アルバイトをして過ごす日々。
    そして事件は起こりました。東日本大震災です。家が潰れ、伝統さえ失われるかもしれないと実感して初めて、家元を継ぐ決意をしました。
    周りからはこの人しかいないと思われる実力があるのに本人だけがそれに気づかず、迷い足踏みしながらの遊馬の成長ははがゆくも思えましたが、とても地に足がついていて彼らしくもありました。恋も実ったみたいだし、良かったね。
    これでシリーズは終わってしまうのかな?またいつか彼らに会えたらと思います。

  • とっても好きな作品でした。青春小説って今の自分を超えるために足掻く人の姿を描くことなんだなあとしみじみ。

    主人公の遊馬くんを始め、すべての人がそれぞれに等身大で、自分の持ち場で悩みながら答えを選んでいく様には共感しかないです。

    と同時に何かを選んでも物事はあるべきところに納まるという大きな流れも描き出していて、意思によって行動を選んでいくことと天分の中で生きるということのバランスが絶妙でした(好き)

    この軽やかでフラットな作風は著者の文体あってこそで、他の松村作品も読みたい。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

1990年『僕はかぐや姫』で海燕新人文学賞。92年『至高聖所(アバトーン)』で芥川賞。他に自身の茶道体験を綴った『ひよっこ茶人、茶会へまいる。』、武家茶道を軸にした青春小説『雨にもまけず粗茶一服』『風にもまけず粗茶一服』『花のお江戸で粗茶一服』、古典を繙く『京都で読む徒然草』などがある。

「2019年 『夢幻にあそぶ 能楽ことはじめ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松村栄子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×