団地のコトリ (teens’best selections 54)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591167243

作品紹介・あらすじ

父を亡くし、母と二人暮らしをしている美月は、バレーボールに青春をかける中学3年生の女の子。自分には身寄りが母親しかいないのだと不安になることはあるけれど、部活の仲間たちや同じ団地に住む愛梨に囲まれて、ひとりの中学生として、幸せな毎日を送っている。
ある日、家で飼っているインコのピーコが逃げ出し、階下の独居老人・柴田のじいちゃんが住む部屋の窓辺に挟まっているのを発見する。じいちゃんに助けてもらおうと声をかけたとき、そこにいるはずのない女の子の気配を感じて……。
居所不明児童の問題を、中学生の少女の視点から描いた著者渾身の意欲作!

感想・レビュー・書評

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  • たまたまだが、「満月の娘たち」にも美月ちゃんがいたが、この物語も主人公が美月ちゃん。
    団地に母親と住み小鳥を飼っていて日々、部活のバレーボールを頑張っている。

    ある日、開け放していた窓から小鳥が出てしまい、探していたところ下の階に住む柴田のおじいさんの家の窓枠にいたのを見つけた。
    ところが誰かの姿を見たような…。

    住むところも仕事もなければ、誰かに救いを求めたくなる。
    独りで、希望もなく過ごす日々なら一緒に住んでもいい。
    だけどこのままで良いわけはない。
    それはお互いにわかっていただろう。
    辛くて悲しいことなのだけど。

    美月に助けを求めた陽菜ちゃんが、ギリギリの状態だったことに切なくなる。

    誰かに助けを求める人が、きっと今もどこかでいるのだろうか。

  • 小学4年生のときに過労死で父親を亡くして以来、保育士の母と市営住宅でふたり暮らしをしている美月は、低身長のせいで部活のバレーボールでも活躍できず悔しい思いをしていた。
    中学2年が終わるころ、下の階で一人暮らしをしている柴田のじいちゃんの家に、母娘の気配を感じるようになったが、その姿は見えない。
    秋が始まるころ、柴田のじいちゃんが1ヶ月前にスーパーで倒れてそのまま入院したことを聞く。母が見舞いに行くと意識不明状態が続いていた。じいちゃんの家に行くと明かりは漏れていたものの、声をかけても誰も出なかった。
    10月の半ば、柴田家に敬老の日の祝いを持ってきた民生委員と出会った美月は、エアコンの室外機が動いていることを知る。民生委員が去ったとき窓が開き、中から顔を出した少女は「助けて」と言った。

    気が付きにくいけれども、身近にいる困った人に手を差し伸べる大切さに気づかせてくれる一冊。

    *******ここからはネタバレ*******

    過労死で大黒柱を失ってから力を合わせて生きてきた母子が、階下に隠れて住む母子の存在を知り、協力を申し出るという美談なんですが、なんていうか、美談すぎるんです。

    まあ、児童書なのでこれぐらい”盛って”もいいのかも知れませんが、中学生以上を対象とした読みものだと、現実味が薄いと言わざるを得ません。

    まずは、階下の謎の母娘。
    柴田のじいちゃんに拾われて、そこに身を寄せているようだけれども、お母さんが「こんな体で働けない」とある。
    どんな体なのか描写がないのでわかりませんが、公園で倒れていたほどだから虚弱なのかも知れません。
    公的な援助をご存じないのでしょうか?それともそれを受けられない理由でもあるのでしょうか??
    娘が幼少のときから仕事と住居を転々としていたために、娘の陽菜は学校にも通えなかった、とあるが、行政は何をしていたんだ?と思わざるを得ない。
    さらに、母親は柴田家に居候を決め込んだあと、施設に陽菜を迎えに行っている。住所も秘密で引き取れるのか???という疑問も残る。
    さらに、じいちゃんが母娘を隠した理由も不明だ。近隣になど、親戚だと言えばいくらでもごまかせるでしょうに。
    陽菜の学校が気になるのならば、母親には内緒で、こっそり役所に相談することもできたでしょうに。

    また、主人公美月ががんばっているバレーボールにも疑問点があります。
    びっくりしたのは、1回勝っただけで県総体への出場が決まったこと。
    どんなに小さい地区やねん?とひとりでツッコミを入れながら読みました。

    パネられている友人愛梨についても、いつの間にか立ち直っている。
    ボヤについても軽く扱われている感じを否めない。
    水浸しでその日はそこで寝られなかった、とあるが、水浸しなのは愛梨の家だけではないはず。保険で賄えたとは言うが、けっこう近隣との人間関係もこじれたのではないかと推測してしまいます。

    そしてこの本で一番違和感を感じたのは、生活環境も違う人たちを、いとも簡単に家族として受け入れることができる人たちです。
    陽菜母娘をかくまった柴田のじいちゃんは、もしかしたら変わりものかも知れないので考えないことにしても、美月や美月の母が、身寄りを失った陽菜を受け入れることにしたことについては、あまりに無謀すぎる気がします。
    だって、なんでか知らないけれど、娘を学校へもやらず、”ただ一緒に生きている”ような母に育てられたんですよ。どんなにかわいい子でも、いきなり「うちへ来なさい」とは言いにくいのではないでしょうか。ましてや、日中働いているお家なら、ひとりで留守を任せないといけないんです。えーっ、どっかにひとりで出かけないとも限らないじゃないですかー???
    いやもう、その勇気に驚いてしまいました。

    こんな事ばかり考えて読む私は、やっぱり純粋な気持ちを失ってしまったのかな?とも感じます。
    でも、児童書でも、難民の子どもに同情して保護してあげたら、家主が留守の間に他の難民を大勢家に招き入れた、とか、たとえばあの「ハイジ」でも、白パンを隠していたり、ネコを連れて来たりと、悪気はなくても文化の違うところから来ると、いろんなハプニングが起きるんです。
    だから、特に仕事と家庭でいっぱいいっぱいのお母さんが、あんまり良く知らない子どものめんどうを見るなんて、当たり前だと感じて欲しくはないんですよね。

    加えて、この本の登場人物は、ちょっと珍しいキリスト教。
    でも、挑戦的な発言もあって、これにも驚きました。
    陽菜が、美月の父が亡くなっていると聞いたとき、「ふうん。……あたしはパパはいない。キリストといっしょだよってママはいうけど、それって、うそだよね」
    う~ん。婚外子って言いたかったのか???
    いやでもこれって、子どもに伝える喩えとして、どうなんでしょう???


    いつもながらいろいろと書いてしまいましたが、この本の良いところは、とにかく読みやすいこと。
    ハードカバーですが、紙が厚いので200頁余と短い。
    すぐに読めます。

    婚外子とか、教育を受けさせる義務とか、いろいろ難しい話題も出てくるので、しっかりした高学年からの読書をオススメします。

  • じいさんが悪人だったらどうしようと思ったが杞憂だった
    出てくる人皆キリスト教的価値観を持っていたのは意外

  • 読み易さ5つ星。
    過去入試問題にもなったことある本なので、
    中学生には是非読んでほしい。

  • 不思議な感覚の物語。団地に住むバレーを頑張る母子家庭の美月、大家族で友達から浮き気味の愛梨、奥さんが亡くなり引きこもり気味の柴田さん。一人暮らしのはずの柴田さんちから聞こえた子供の声…。突拍子ない話かもしれない、児童書ならではの書き方、でも、なんだろう「良い本読んだな」と思う。インコも死ななくて良かった…。1人になるかもしれない孤独や不安…そういうのが、それぞれ表現されていて考えさせる物語。この先、綺麗事でもみんなで幸せになるといいな、

  • 世の中には辛い環境で生きていて、それでもめげずに頑張っている人がいる。それも団地の階下の部屋で。そんな人に出会えると、自分の人生観、価値観、世界を見る目も変わってくる。
    次にやるべきことが自ずと見えてくる。
    実際にはなかなか経験できなくても、本の中でなら体験出来る。

  • 団地に暮らす中学生の美月。
    父の過労死、部活、受験など様々な出来事に対する心情描写が良い。
    階下で起こった出来事など、社会問題の要素もあり、試験問題に選ばれそうな作品だと思った。

  • 本の形態が一般的な小説サイズの四六版よりややちいさめサイズ。母子家庭で育つ主人公の飼っている鳥が逃げ出したことから、ある少女と出会う。居所不明児童という題材は一般小説に落とし込むともう少しシリアスな展開になりそうだが、YA向けということでそこまで深刻な雰囲気にはなっていない。

  • 中学生の美月目線で描かれていて、自信がなかったり、気持ちが揺れたり、やりたいことで迷ったり。
    応援したい、優しい気持ちで読める本。
    ティーンエイジャー向けで、とても読みやすいです。

  • 一気に読み終わりました。

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著者プロフィール

児童文学作家、日本児童文学者協会会員

「2017年 『ぼくらの山の学校』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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