一万円選書: 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語 (ポプラ新書 い 10-1)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591172087

作品紹介・あらすじ

本をどう選び、どう読むか――。
1万人以上に本を選んできた書店の店主が、あなたの運命の1冊をお届けします。

NHKプロフェッショナルほか、さまざまなメディアで話題となった、北海道砂川にある町の小さな本屋さん「いわた書店」の選書サービス「一万円選書」。
1年でわずか3日だけの募集で、常時3000人待ちともいわれている一万円選書を書籍で疑似体験。

【一万円選書とは…】
いわた書店の「特製カルテ」をもとに、1万円分の本を選書し、お届けします!

<カルテの内容>
・これまで読まれた本で印象に残っている20冊を教えてください
・これまでの人生で嬉しかったこと、苦しかったことは?
・何歳のときの自分が好きですか?
・これだけはしない、と決めていることはありますか?
・あなたにとって幸福とは何ですか?
etc.
そのほか何でも結構ですので、あなたについて教えてください。
ゆっくり考えて書いてみてください。 

【目次の一部】
いわた書店の店主になるまで
「一万円選書」のはじまり
「選書カルテ」が映すもの
僕はこうやって本を選ぶ
あなたに読んでほしい本
読者との書簡

感想・レビュー・書評

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  • 【読もうと思った理由】
    これはもう完全にブグログのフォロワーさんの本棚を拝見している中から、初めて知った本です。最近はブグログで皆さんの本棚を見させてもらうことから新しい発見があるので、よく拝見しております。元々「一万円選書」という言葉は、文学YouTuberベルさんの「本を一万円分買ったから紹介するよ」の動画で初めて知った。お恥ずかしながら、「一万円分本を買うのが最近流行ってるんだ」ぐらいの認識だった。あまりによく本棚で見かけるので、どんな本か気になり、タップしてみると…。そもそもの元祖は、著者の本屋を営む岩田さんで、本が売れない中で色々と試行錯誤の中、唯一成功した事例が一万円選書だとか。本好きとしては、その背景を知るだけで俄然興味が湧き、気付けば本屋さんで購入していた。

    【感想】
    読後の第一の感想は、「ずっと手元に置いておきたい本が、また一冊増えた」だ。

    著者の岩田さんは、かなりご苦労されたみたいで、38歳で親父さんから書店経営を引き継ぎ、20年ほどはほとんど綱渡りに近い、いつ閉店してもおかしくないほど資金繰りも厳しかったそうだ。
    そんな中、何とか店を立ち直らせるため、本当に色々なことをされたんだそう。
    例えば、隣町の唯一の本屋さんが潰れた時は、車がない読者のために本の宅配事業をしたり、著名人を呼んでの講演会を定期的に開催もしたんだそう。また地元新聞からの依頼でお薦め本の紹介コラムを週一で10年継続し、広辞苑の下取り寄贈プロジェクトもやったんだそうだ。

    ただ時代も悪く、経営を引き継いだ1990年頃から、いわゆる出版不況が始まり、業界全体の売上も年々減少し、それに比例して、お店の売上も年々減少し続け、赤字が膨れ上がっていったんだそう。本を仕入れるための資金繰りで、胃を痛め、ご飯も喉を通らなかった。身体的にも精神的にも追い詰められ、下血し、倒れて、入院。

    そんな中どん底の中、一万円選書は2007年からスタートしたんだそうだ。
    きっかけは、高校の先輩に「本が売れない」と愚痴をこぼしたところ、一万円を渡され、「これで俺に合う面白そうな本を見繕ってほしい」と依頼されたんだそう。
    その時プレッシャーを感じながら、先輩の人となりを考えながら、真剣に選書し先輩に渡すと、後日、「面白かった。俺みたいな人間が100人も居たら、本屋の経営も安定するだろ」と言われたんだそう。この時がターニングポイントだったんだと思う。この時岩田さんは、その人その人に合った本をお薦めして新しい本と出会ってもらう、これこそが本屋の本来の仕事でしょう!と。この気づきがあり、あとは人一倍のバイタリティで、一万円選書を成功に導いていく。

    一万円選書が成功した一番のポイントは、岩田さんも語っていた「選書カルテ」にあると思う。要は相手の方をよりよく知るために、詳細な質問に答えてもらう。例えば、過去読んだ中で印象に残った本20冊は? これまでの人生で嬉しかったこと、苦しかったことは?変わった質問では、これだけはしないと決めていること等等。記入してもらったカルテを元に一人一人に合った選書を行う。

    岩田さんも本の中で言っていたが、選書をしている時は、その方とコミュニケーションを取っているんだそうだ。よくよく考えてみるとそれは当然で、相手の方に合った本を選ぶためには、まず相手のことを徹底的に知らないことには、相手に合った本を選ぶことなど、出来る訳がない。

    これを読んだ時に改めて感じたことがある。それは読書をしている時に、作者とまさしくコミュニケーションを取っているんだと、最近感じるようになってきた。作者はどんなメッセージをこの本に込めて書いたのか。本を読んでいる時にそのことを意識しながら読めるように漸くなってきた。一冊の本を書き終えるまで、数ヶ月どころか作者によっては、何年もかけて一冊の本を書き上げる。それだけの年月を費やして書いた本に、作者の伝えたい思いがきっとあるはずだし、作者も伝わって欲しいと必ず思っているはずだ。

    【本書から得た気づき】
    「一度自分で決めたことは、最後までやり遂げる」ということと、「今まさに取り組んでいる仕事を、この上なく楽しめ」という2点が、今回本書から得た気づきだ。

    岩田さんも20年間、本が売れなくて、辛く苦しかったと、本には書いていた。ただ色々なアイデアを常に考え、考えるだけではなく、実際に行動して、トライアンドエラーを繰り返していた。
    ホンダの創業者である本田宗一郎氏の有名な名言で、「僕は見たり、聞いたりするが、それ以上に試すことをやっている。種を明かせばこれ以外にない。」というのがある。
    岩田さんはまさに、この名言を実に20年諦めずに、実行し続けてきたんだと思った。
    岩田さんが本書で沢山の良書を紹介してくれており、もちろんその本にも興味はあるが、やはりどんな逆境にも挫けず、自分を信じて頑張り続ける姿に、今回一番感銘を受けた。

    【雑感】
    私自身は有難いことに、「現在どんな本を読みたいか自分で分からない」という状況ではなく、読みたい本があり過ぎて、読む優先順位をつけるのに、迷っている状態だ。この先も読書は、ずっと飽きずに続けていくんだろうなというのは、ほぼほぼ間違いない。その時々で、興味があるジャンルは変遷するだろうけど。今は古典(哲学・古典文学)に興味がある。ただ毎回古典ばかりだと、しんどくなるので、古典→現代文学をローテーションで回していければ、今の自分にはちょうど合っていそうだ。

  • ブクログのブク友さんのレビューなどで「一万円選書」ということをやっている書店が北海道にあることを知り面白そうだと思っていました。

    それで、応募してみたいなとは思ったものの1カ月に3000人以上の応募から抽選で選ばれるというのは至難の技だし、心配事として、既読の本が送られてくるのではとも思っていました。

    それで、この本が発売されまずは読んでみましたが、送る前にチェックするので、既読の本が送られる心配はないことがわかりました。

    でも、3000人からの抽選に当たるのは大変だし、当たった人は与えられたカルテをかなり詳しく(自分について)書かないといけないみたいで私はちょっと面倒だなと思いました。

    でも、いわた書店の岩田さんがどんな本を選んでいるかのリストをかなり詳しく(こういう人にはこんな本など)この本に書いて載せてくれているので、その中から自分に合いそうな本を選んでまずは読んでみようと思いました。

    ブックリストを最初見たときは、既読やタイトルの有名なものばかりが多い気がしましたが、しっかり目を通すと未読で、全然知らなかった面白そうな本もたくさんあり、しっかりメモしました。

    冬は図書館に行くのが大変なので、早速文庫から買って読もうと思い嬉しくなりました。

    岩田さん、もっとブックリストをたくさん書いて出版してくだされば買うのでまたよろしくお願いします。

  • 『本はたとえ役に立たなくても、学びがなくても、おもしろかった!と高揚できたらそれで十分だと思うんです。エンターテインメントとして。』という著者の言葉がとても心に響いた。

    カルテをもとに一万円分の本を選書してくれるいわた書店の"一万円選書"を疑似体験できる一冊。
    それぞれの人にあったおすすめ本が具体的に書いてあり、本屋で見たことがない本ばかりだったので、とても参考になった。
    普段は新刊やベストセラー本を読むので、たまには本屋のプロがおすすめする本を読むのも、おもしろそうだと思った。

    まずは、いわた書店で1番選書されている"カーテンコール!"を読んでみたいです。

  • 営業中もレジ台で読書をしている本屋の主人って、個人的に好感が持てる。それだけ心から本を愛し向き合っているって事だから。
    著者もスタンスは違えど、本を愛していることに変わりはない。だから自分以外の読者のために本を選び向き合うことができる。

    「特別に相談したりアドバイスをしたりしない」代わりに、読者一人ひとりに合った本を処方してくれる。無理やり言葉をかけるよりもずっと有効的で何より嬉しいアドバイスだと思う。
    自分は書評からその時の自分に響きそうな本を選んでいるが、生粋の読書家で本のプロである著者に選んでもらう方が案外ドンピシャなのかも。現に著者のやり方は「(一万円選書利用者の)Needsを探すのではなく、Wantsを創造する」ことのようで、道理で「思ってもみなかった糸口が発見された」と仰る方が多いわけだ。AIによる検索結果では、目に見えない想いを汲み取ることはできない。

    本に限らず、言葉選びも作家に引けを取らないし、その言葉がまた素敵だったりするんだよなー。

    「本と言う世界で、新刊が波打ち際にいるとすれば、既刊は深くて広い大海原。僕はそこに飛び込んで泳いでいるような感覚です」
    本が広がる海なら脱出できなくても結構!だが本の海にも絶滅危惧…じゃなくて、絶版の危機に瀕した良書があるという。守りたい一冊があれば、どこまでも奔走される。著者は保護活動家でもあった。

    「作者が書いた本は、読者に読まれて初めて"本"になり、"言葉"になる。作者と読者をつなぐために僕は本屋をやっている」
    『教養としてのラーメン』(青木健/2022年)の「食べる者は最後の料理人」という言葉を思い出した。本の世界にも例外なし。自身の心に決着をつけるのは最終的には読者自身。

    他の本屋でもぜひ一万円選書を実践して欲しいと著者は話す。ご自身が発案されて成功を収めている事業なのに、何故そう易々と呼びかけられる?そう戸惑ったのも束の間。思い出した…著者は心から本を愛している、本に絶対の信頼を寄せていると。
    一万円選書の募集は1年で7日間だけ。そこに約3700名もの応募が入る。一人では確かに限界があるし、一人でも多くの読者に…が難しい。
    全国に活動が広がれば、著者が信じる本の力で救われる人が増える。

    そうすれば著者にも、読書する時間がもっと訪れるはず。やっぱり本屋の主人には直接本と向き合っていて欲しいから。

  • 読友さんのレビューを読んで手にとりました。
    ご紹介ありがとうございます!

    著者の岩田さん自身の足跡を記した部分が印象的でした。店を継いでから20年、不安と恐怖を抱きながら先の見えない霧の中を底に向かって進んでいるようだったと。60歳を過ぎてから「一万円選書」が注目され、70歳を迎えるいま、推薦したい本を作家から読者につなげるのが本屋の役目!と言いきり生き生き輝いていらっしゃる。

    最後の一文。「本の中にはすべてがある。本はいつだってあなたの人生の味方だから。」
    私もそんな本に出会いたいです♪

  • ブク友さんの本棚登録で気になり、図書館から借りてきました。

    「選書カルテ」を埋めるべく、お客さん達はあらためて自分自身と向き合う。
    岩田さんに自分を知ってもらうために「書く」ことが既にカウンセリングのような役割になっている。

    なるほどなぁ、目的は「選書」だけれど、岩田さんからの質問に答えるには自分のことを相当深掘りする必要があって、更に文字として書く必要もある。
    普段の生活ではなかなか機会がないこと。
    その結果、お客さん達は癒やされたりカタルシスを感じたりするんだろうなぁ、と納得。

    たくさんの苦労を乗り越えて来られた岩田さんが本と人に注がれる愛情を随所に感じる本で、その優しさが伝染してきたみたいで、今何だかホクホクした気持ちでいます。(*^^*)

    で、紹介されてる本を順番にブクログに本棚登録していってたのです(#一万円選書)が、巻末にちゃんとリスト化されていましたね〜笑
    こんなところも優しい本でした。

  • 選書カルテを元にお客さん一人一人に合わせたオーダーメイドのお勧め本を一万円分お届けする北海道砂川市にある、いわた書店の提供するサービス"一万円選書"の極意。

    オーダーメイドと言いつつも何冊か鉄板本はあるようで、ある程度のパターンでやっているのかなと邪推。
    それでも田舎のいち書店だけで1タイトルうん千冊売り上げているだけあり、お勧めする言葉に力あり。

    しかもその鉄板本達をこれでもかと紹介してくれているので、この本の中から自分の気分に合わせた本を拾っていけばまるで擬似一万円選書を利用出来たようなもの。
    ここで紹介した本を選書しずらくなったり、この本により"一万円選書"をわざわざ利用しなくても、という利用者離れを恐れず、自らの書店経営立て直しの肝である選書の極意について惜しげもなく開陳してしまう心意気がすごい。

    ただ自分の場合、確かに自然体では手に取らないような本をその道のプロにお勧めしてもうらうのは魅力的なサービスとは思うのだが、なんかちょっと気を遣ってしまうかも。

    そういう意味では、このブクログが程良い未知の本との出会いの場。
    フォローさせて頂いている皆様のレビュー、大変参考にさせて頂いており、ミステリに偏りがちな自分の読書をなるべく幅を広げるべく、気になった本は積極的に図書館で探すようにしています。
    かくいうこの本自体もそんな一冊。
    有り難きブクログです。

  • 皆様の本棚や感想から「一万円選書」という5文字が目に止まりましたので遅ればせながら購入。
    読み出したらワクワク感が半端ないじゃありませんか。本の楽しみ方は人それぞれ千差万別。私にとっては、「この次はどんな本を読もうか?」と次読書をリストアップしてる時、積読した本の山を眺める時、その中の一冊を手に取り最初の一文を目にする瞬間、奇跡の一冊に出逢えた時、読了後の本が本棚に列を作る時、それぞれが私にとっては本と触れ合う中での至極の悦びの瞬間です。
    ワクワクしながら本書を読み進める中で更に増幅されて岩田さんが紹介してる書籍を2冊購入してしまいました。申し込みエントリーする前から岩田さんが自分にどんな本をお薦めしていただけるか?考えただけでワクワクが止まりません。

  • 「おもしろい本の教えっこ」
    いつかは岩田さんに選書してもらいたい。絶対に。

    ありがたいことに、以外とたくさんのお薦め本が紹介されており、まずはそちらからかな。ブクログならいいねがたくさんつくような優しい紹介文ばかりで、何度も胸が熱くなりました。

    苦悩の日々、あきらめることなく愛することに人生をかけれるって本当にすごい!
    「本の中にはすべてがある。本はいつだってあなたの人生の味方だから」

    自分が選書するなら必ずお薦めする一冊です。

  • 読み終えてすぐに思ったのがこれは再読せねばと。
    沢山の本が紹介されていて読みたくなるものばかりでした。
    そしてもちろん、一万円選書に申し込みたくなりました。というか申し込みます。
    本の紹介だけでなく、店主の歩んできた人生、本屋の経営、本へ向き合う姿、全て楽しく読めました。
    こんな素敵な本屋さんがあれば、通いたくなるし、今の自分にあった本をすぐに探してもらえるのではないかと。
    次はどんな本を読もうか、今の自分にはどんな本があっているのかを知りたい人に読んでほしいです。

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著者プロフィール

岩田 徹
(いわた・とおる)
1952年 北海道美唄市生まれ。北海道砂川市にある「いわた書店」の二代目店主。2007年、希望者の詳細なカルテ(年齢、家族構成、読書歴や人となりがわかるアンケート)に基に選書し、一万円分の本を送るサービス「一万円選書」をスタート。2014年にその選書サービスがブレイクし、全国から希望者が殺到。現在は申し込み受け付けを年に7日間だけ設け、抽選による方法を取っている。一人でも多くの人に本の面白さ、読書の楽しさを知ってもらうため、精力的に活動している。

「2022年 『「一万円選書」でつながる架け橋 北海道の小さな町の本屋・いわた書店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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