夏休みの空欄探し

著者 :
  • ポプラ社
3.69
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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591174197

作品紹介・あらすじ

本に挟まれた暗号。
謎解きに挑む姉妹。
忘れらない夏が始まる。

会員が2名しかいないクイズ研究会会長の高校2年生・成田頼伸(ライ)は、クラス内で「じゃない方」と呼ばれている。ライと同じ姓で、ダンス同好会に所属する人気者・成田清春(キヨ)がいるからだ。クラスで「成田君」といえば、キヨのこと。「役立たたない」ことが好きなライと、大学受験に向けて効率重視で「役立つこと」が好きなキヨ。性格も対照的で、クラスでは決して交わることのなかった二人だが、夏休みの間、ひょんなことから、謎解きに挑む姉妹を手伝うことになる。謎解きの先で待つものとは――。

すべての謎が明かされた時、切なさと温かさが胸を満たす、青春恋愛ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 似鳥鶏さん 初読でしたが、とてもよかった。。。

    謎解きしながらの青春。
    男女の距離感がキュンキュンします。
    胸が熱くなりました。

    あとがき は ちょっと、、、

    • aoi-soraさん
      いるかさん、こんばんは~♪
      青春だね
      私もキュンキュンでしたよ(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)
      謎解きは難しくて無理だった…
      いるかさん、こんばんは~♪
      青春だね
      私もキュンキュンでしたよ(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)
      謎解きは難しくて無理だった…
      2023/10/28
    • いるかさん
      aoi-soraさん こんばんは。。

      本当に青春ですよね。
      私はこんなことはありませんでしたが。
      こんなことがあれば人生変わってい...
      aoi-soraさん こんばんは。。

      本当に青春ですよね。
      私はこんなことはありませんでしたが。
      こんなことがあれば人生変わっていたかも。
      謎解きは私もまったく、、、でした。
      2023/10/28
  • 高校二年生の成田頼伸はクラスで同じ苗字の成田清春が一番の人気者であるのに対して「じゃない方」と呼ばれ、虫博士という称号を持ち、クイズ・パズル研究同好会の部長です。

    その頼伸が、夏休み、モスバーガーで隣りの席に座っていた、二人の姉妹、立原雨音、大学二年生と、七輝、高校一年生が暗号を解こうとしているのを見て、手を貸したことから知り合い、その暗号を解くために、ひと夏を一緒に過ごすことになります。

    そこへ、同じクラスの清春が偶然会ったことで加わり、4人の夏休みが始まります。

    暗号の示す所へ4人で、東山魁夷記念館、葛西海浜公園を皮切りに、伊豆大島と出掛けることになります。

    頼伸と清春もうちとけて、ライとキヨと呼び合い、お互いにライは妹の七輝を好きで、キヨは姉の雨音に憧れています。ライはキヨに服を選んでもらったり、キヨはライに映画や小説を教えて欲しいと頼んだり、二人はクラスでの序列を越えて対等に付き合うようになります。




    以下、ネタバレ含みますので、これから読まれる方はお気をつけください。




    そして、滋賀県栗東市に4人は1泊旅行をして、ビジネスホテルに泊まることになります。
    ライとキヨは「生きる目的とは何か」なども語り合います。
    ライの方は七輝と心が通い合います。
    二人のキスシーンはとても美しく、読んでいてドキドキしました。作家さんの上手さを感じました。

    そして、最後のTDL(東京ディズニーランド)。最後の暗号を発見します。
    でも、雨音は言います。
    「ここでお別れしないとね」「この暗号は私たち以外には解けない」
    雨音と七輝は二人だけでタクシーに乗り込み行ってしまいます。
    取り残されるライとキヨ。

    ライはその暗号を解き再び雨音たちに会おうとしますが…。


    この青春ミステリー小説には輝きがあったと思います。
    普通の青春小説とは一味違う新鮮さというか。
    最後は涙も滲みましたが希望もあるラストシーンだったように思います。
    夏休みの、最初に読めてよかった1冊です。

    • まことさん
      ほん3さん。こんにちは♪
      私はこの作家さん初読みだったのですが、とてもよかったです。
      ネタバレになるので、内容は言えないけれど、本当によ...
      ほん3さん。こんにちは♪
      私はこの作家さん初読みだったのですが、とてもよかったです。
      ネタバレになるので、内容は言えないけれど、本当によかったです。
      星5をつけました。
      楽しまれてください♬
      2022/07/24
  • えー、面白かった。

    似鳥鶏さん、実は初読み本で挫折していたの…
    ですが、多くの皆様のレビューで気になり読んでみました。おかげさまで、苦手意識が吹き飛ぶ素敵な本に出会う事ができました。ありがとうございました〜

    あの夏、僕は人生と恋の謎にぶち当たったーー。

    クイズ研究会会長の高二のライは、クラスで「じゃない方」と呼ばれているパっとしない主人公。同じ姓で、クラスの人気者、勉強も運動もできる格好良い男子のキヨ。ひょんなことから知り合った美人姉妹(雨音と、七輝)の暗号の謎解きを手伝う事になり四人で過ごす夏休み。キラキラした甘酸っぱい…
    そして切ない青春ミステリ!

    ところどころ出てくる暗号謎解き部分は新鮮さあってワクワクしたが、私はチンプンカンプンで解けずとも、なるほど納得w
    登場人物四人ともそれぞれ個性豊かで、皆良かった。

    面白かったところ…
    ファッションに疎いライが、四人で待ち合わせして集まったときの帽子について自分で思った描写。
     僕の中ではファッションを「分かっている人」しか   かぶってはいけないものだったがみんなはとても自然にかぶりこなしていた…
    『帽子三に素頭一。』一人だけ帽子無しの僕は…密かに落ち込み続けていた…。(なんか、わかる〰️そんな気持ち。でも素頭って!…)笑

    似鳥鶏さんのあとがきのゆるさも楽しめた。男性主人公の視点での一人称に困っているというお悩みが長々とあった。

    おとなしく『余』を採用することにした。余もネタ帳を常に持ち歩いて思いついたことを冬になる前のリスのように貯め込みながら生活している。という……
    w似鳥鶏さん。なかなか面白い人で、良かった



    • aoi-soraさん
      ダメでした…
      っていう感想が聞きたい<⁠(⁠ ̄⁠︶⁠ ̄⁠)⁠>
      その理由に興味がある
      ダメでした…
      っていう感想が聞きたい<⁠(⁠ ̄⁠︶⁠ ̄⁠)⁠>
      その理由に興味がある
      2023/05/24
    • 土瓶さん
      はい。そのうちに。
      今見たらけっこう予約がついてますので。
      気長にお待ちください^^
      はい。そのうちに。
      今見たらけっこう予約がついてますので。
      気長にお待ちください^^
      2023/05/24
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      土瓶さん、ありがとうございます(*^^*)
      たくさん読みたい本もおありでしょうけれど、予約が来ましたら、どうぞよろしくお願いします!!
      m(...
      土瓶さん、ありがとうございます(*^^*)
      たくさん読みたい本もおありでしょうけれど、予約が来ましたら、どうぞよろしくお願いします!!
      m(_ _)m
      2023/05/24
  • 男女四人の青春恋愛×暗号ミステリー×冒険小説で、色んな要素が詰まっている。順に胸キュン×ふむふむドキドキ×ワクワクといった感じ。
    「夏休みの空欄探し」とは変わったタイトルだ。単純な私は、夏休みの宿題のプリントやドリル問題の空欄を埋める話かと連想した^^;
    そうではないものの、暗号を解読するとそこに出向くことになり、夏休みの予定が埋まるので、宿題の空欄を埋めていく…という気がしないでもない。
    面白かった。読者も暗号解読や謎解き、各所巡りのミステリー&冒険の類似体験ができて楽しい。
    そこに恋愛と友情。できれば甘酸っぱい中高時代の夏に読みたかった。
    特に学校での立ち位置やタイプの違う男子二人が友情を育んでいく姿が素敵。こういうのは好き。
    映像化に期待してしまうのは私だけだろうか。キャストは福士蒼汰&小池徹平はどうかな。(今、朝ドラ“あまちゃん”の再放送を楽しんでいるので、この二人しか思いつかない…^^;)
    それから似鳥鶏さんは比喩が面白く、ぷっと笑ってしまう表現がいくつかある。
    また本書で出てくる暗号は、作者自身がネタとして作り溜め、やっと放出できたとのこと。
    暗号に詳しいし、あとがきも面白いし、似鳥鶏さんの作品をまた読みたい。

    本書はブク友のあゆみりんさんが「あとがきが面白かった」と教えてくださいました。
    ありがとうございました(^^)/

    • なおなおさん
      あゆみりんさん!うん!長尾くんも出ていましたよ(,,• •,,)キュン♡古田新太もね(笑)
      あゆみりんさん!うん!長尾くんも出ていましたよ(,,• •,,)キュン♡古田新太もね(笑)
      2023/05/16
    • あゆみりんさん
      本当だっ!!
      あの頃は「なにわ男子」を知らなかったから、冴えない男子生徒ポジションとしてしか観てなかった( ᐪ꒳ᐪ )

      永瀬くんのお父さん...
      本当だっ!!
      あの頃は「なにわ男子」を知らなかったから、冴えない男子生徒ポジションとしてしか観てなかった( ᐪ꒳ᐪ )

      永瀬くんのお父さん、板尾創路でしたね(笑)
      2023/05/16
    • なおなおさん
      あゆみりんさん…(σ・∀・)σ ソレナ
      永瀬くんの父親役に板尾創路って…(笑)
      あゆみりんさん…(σ・∀・)σ ソレナ
      永瀬くんの父親役に板尾創路って…(笑)
      2023/05/17
  • とってもとっても良かったです
    私の大好きど真ん中!!
    甘酸っぱい青春ミステリー☆


    高校2年生の成田頼伸(ライ)は、モスバーガーで隣り合わせた美人姉妹と共に、謎解きをすることになる。
    そこに通りかかった同級生の成田清春(キヨ)も加わる。
    4人が体験する夏休みは、「初めて」がいっぱいで、初々しくてドキドキで、キュンに溢れています!!

    キヨはクラスの中心人物。
    一方ライは二人しかいないクイズ研究会の会長。
    同級生だけどクラスでの立ち位置が真逆の二人は、関わることはなかった。
    しかしこの謎解きを通して互いを知り、悩みを打ち明け、助け合い、成長していくのです。
    あぁ~もう、こういうの、大好き!

    謎解きは、暗号を解いて次へ進むのだけど、これは難しくて私には無理でした(⁠+⁠_⁠+⁠)
    早々に投げ出して、ライ達に任せます。
    得意な人は、これも楽しめるのかな?

    キラキラした夏休みを彼らと一緒に体験し、ミステリーの部分はワクワクドキドキし、最後までずっと楽しかったです。
    あ、ラストは切なさもありますよ。

    そして多くの方がレビューで書かれているように、「あとがき」も面白いです。
    私は初読みの作家さんでしたが、あとがきを読んだら俄然、似鳥鶏さんに興味が湧いてきました(⁠^⁠^⁠)


    この本は、何人ものブク友さんたちの素敵なレビューから、読みたい!と思っていました。
    こんな大好きな作品に出会えて嬉しいです!
    皆さん、ありがとうございます♪

    • あゆみりんさん
      aoiさん、確か私は動物園シリーズのワニだったと思いますが、ちょっと集中出来なくて途中棄権してしまったのですが、似鳥鶏さん読みづらいってこと...
      aoiさん、確か私は動物園シリーズのワニだったと思いますが、ちょっと集中出来なくて途中棄権してしまったのですが、似鳥鶏さん読みづらいってことないと思うんですよね、想像ですが笑
      私の読むタイミングが悪かったんだと思うんです。
      なので私もジワジワ攻めていくつもりです、市立高校シリーズもチェックします(〃ω〃)
      2023/04/10
    • aoi-soraさん
      あゆみりんさん
      育休刑事ってドラマ化するんですね!
      興味ある〜〜♡⁠(⁠Ӧ⁠v⁠Ӧ⁠。⁠)
      あゆみりんさん
      育休刑事ってドラマ化するんですね!
      興味ある〜〜♡⁠(⁠Ӧ⁠v⁠Ӧ⁠。⁠)
      2023/04/10
    • あゆみりんさん
      本当だっ!!
      知らなかった!!
      観る前に読みたいような、読まないほうがいいような…❘ ω• )ジィー…
      本当だっ!!
      知らなかった!!
      観る前に読みたいような、読まないほうがいいような…❘ ω• )ジィー…
      2023/04/10
  • 良かったですね〜、これは〜(*´꒳`*)
    ブクログで、まことさん&ほん3さんのレビューを読んで読みたかった本です。
    4ヶ月越しです。

    似鳥鶏さんは、以前「午後からはワニ日和」が読みづらくて苦手意識があったのですが、こんな甘酸っぱい青春小説をお描きになることにびっくりしました。
    著者によるあとがきが、かなり面白かったです。
    主人公の自虐的キャラの描き方が上手なことに納得です。
    “”等身大の高校生の青春恋愛ミステリ“”ですが、大人が読んでも全然恥ずかしくない、こそばゆくないっ。
    読み終わって、切ない物語でしたが、とても爽やかで前を見て一本踏み出せる、そんな気持ちです。
    たくさんの中高生に読んでもらいたい、忘れられない夏を過ごして欲しい、とても良い物語でした。

    中2の娘にすすめてみましたが、今は辻村さんの「闇祓」に夢中な様子。
    「読むなら、せめて夏に読みたいわ」と一言。
    確かにね…

    • あゆみりんさん
      ほん3さん、こんにちは〜
      「闇祓」ですよ、ほん3さん読まれてましたよね♪
      どんなポジションの子でも悩みってあるんですね、たくさんの“はじめて...
      ほん3さん、こんにちは〜
      「闇祓」ですよ、ほん3さん読まれてましたよね♪
      どんなポジションの子でも悩みってあるんですね、たくさんの“はじめて”を経験した特別な夏休み、素敵でしたね。
      こちらの本は、ブクログでもあまり読まれていないですね(*´Д`*)
      2023/02/26
    • まことさん
      あゆみりんさん。おはようございます♪

      この作品のファンが増えて嬉しいです!
      「大人が読んでも全然恥ずかしくない」まさにそういう、青春恋愛ミ...
      あゆみりんさん。おはようございます♪

      この作品のファンが増えて嬉しいです!
      「大人が読んでも全然恥ずかしくない」まさにそういう、青春恋愛ミステリーですよね!
      私は、昨年のベスト3にこの作品を入れました。
      娘さんも、夏休みにこの作品を楽しんでくれるといいですね。
      2023/02/26
    • あゆみりんさん
      まことさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      人を想うこと、愛を込めること、とてもシンプルなのに胸にグッくるお話でした。
      まこと...
      まことさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      人を想うこと、愛を込めること、とてもシンプルなのに胸にグッくるお話でした。
      まことさんのレビューも、胸にグッときちゃいました(*´∇`*)
      2023/02/26
  • 暗号をめぐる青春恋愛もの。
    爽やかですね~。いや、まぶしいです。
    もっと若いときなら感想も違っていたかも。

    チーニャさん、あおいさん、あゆみりんさん、なおなおさんに推されまくって手に取りました。課題図書ですね^^
    実は、おもしろかったとうわさのあとがきに惹かれたのは秘密です。
    まことさんとほん3さんのレビューにも推されました。
    私のレビューはどうやら辛めのようで、しかもひねているので、今作を未読の方はどうか上記の方々のレビューを参考にして下さい(笑)

    まずは表紙のイチャモンから。
    メインの登場人物は4人だけなのでこの絵の4人でまちがいないでしょう。
    右端のイルカの浮き輪を持ってる雨音と思われる人物。どう見ても中学生くらいにしか見えない。大学生なのに、4人の中では一番の年長なのにどうしても幼く見える。
    その左の体格のいい男子。ええ。これ主人公?ガタイ良すぎないですか。左端のビーチボールで遊んでるのが清春らしいけど、どう見ても主人公と体格まちがってない?

    あとがきの一人称問題はおもしろかった。同意できます。というか私も度々悩んでます(笑)
    レビューを書くときの自分を何て呼ぶか、悩ましいとこなんですよね~。
    主に候補は4つ。俺、僕、私、自分、です。
    ええと、十字をイメージして。地図とかにある東西南北を示すようなヤツです。
    上(北)=俺 ちょっとヤンキーくさい
    下(南)=僕 子供、または学者っぽい
    右(東)=私 かっちり眼鏡のサラリーマンっぽい
    左(西)=自分 軍人っぽい
    この4つの中間点くらいの人称が欲しいんです! 難しいな~。
    あとの候補は…………

    拙者やそれがし、刀を差したくなるので却下
    余、王様になりそうなので却下
    オラ、かめはめ波を打ちそうになるので却下
    おいら、ビートたけしになりそうなので却下
    おいどん、九州出身じゃないので却下
    吾輩、猫になりそうなので却下
    やつがれ、ばけものを使って仕事人っぽいことをしそうになるので却下(巷説百物語)
    小生、乙一さんに憑依されそうなので却下(小生物語)
    ワイ、ナニワの商人になりそうなので却下

    難しい。ピッタリくるのがまるでありません。

    で、かんじんの内容についてのレビューですが、ここからいちじるしくネタバレになってしまうので未読の方はご注意ください。
















    ほんとうに、未読の方は厳禁です。絶対見ないでください。


















    いいですか?

    残念ですが終わり方が好みではありません。
    あそこで切るのはいいとして、死ぬとこまで書かないのはいいとしてですが、そもそもヒロイン死なせなくてもいいんじゃねって話です。
    最近のヒロイン死に過ぎ問題です。なんか飽きました。そりゃあ死ねば悲しいでしょうが、すこし安直ではないですか。この話でヒロインが死なねばならないような必然性が感じられないというか、違和感がありました。
    「じゃあ、どういう終わり方ならいいんだよ。そんなに文句付けるんならおまえが書いてみろよ」と、言われそうなのでちょっと書いてみます。妄想の駄文です。はい、病室から。


    「ねえ七輝。ほんとうにライ君に会わなくていいの? あんな難しい暗号じゃ絶対にこの病院にたどり着けないよ」
    「……いいのよ。お姉ちゃん。それでいいの。」
    七輝は病院のベッドで自分の両脚を愛おし気にさすった。
    「来週にはこの脚ともおさらば。ずっと車椅子の子が彼女なんてライ君がかわいそう。あたしはこの夏、最高の思い出をもらったからもうそれでいいの。それに脚だけでなくて腕までいったら、ほんもののお地蔵さんになっちゃう」
    「脚はともかく、…………腕はまだわからないでしょ」と、雨音。
    脚を切断して様子を見ないとわからないと医者は言っていたが、腕にまで処置が及ぶことも十分ありうるので覚悟してください。と、言われていた。
    「ああ。いっぱい遊んだなぁ。ほんとに嘘みたいに楽しい夏だった。ありがとうね、お姉ちゃん。あたしのわがままきいてくれて」七輝は思い出に浸るように目をつむり「でも」といたずらっぽい笑みを浮かべて続ける。
    「最後の勝負はあたしの勝ちみたいね。ライ君もなかなか手強かったけどあたしの勝利ってことで」
    最後に出した暗号はあきらかに不公正なものだった。七輝自身もそれはわかっている。しかし、そうせずにはいられなかった。もしもライ君があたしの身体のことを知って、それで来なくなったら。がっかりされたら。そう思うと恐かった。だから暗号を出した。絶対に解けない最後の暗号を。ライ君は来たくても暗号が解けないから来れないだけなのだ。そういうふうに自分を誤魔化したかった。
    それにライ君自身にも分かっているはずだ。あの暗号は解けないということを。それでライ君を解放してあげることができる。両手両足が無くなる地蔵女から。暗号が解けないんだからしかたないということにできる。
    どちらにとっても利益になる。七輝が考えた苦肉の方法だった。
    「どうしたの、お姉ちゃん」
    七輝はじっと窓の向こうを凝視している雨音に問いかけた。
    「ねえ、七輝。……勝ち誇るのは少し早いんじゃないかな」
    雨音が信じられない様子で窓の向こうに小さく手を振っている。
    その先に少年がいた。片手に菓子箱を、もう片手に花束を持ってその手を振っている。雨音の手を振る姿を確認して力を得たのか、少年は徐々に大きく手を振り、花束を持っていることを忘れたのかまるで旗のように大きく振り、すぽんと手から飛んでしまった花束をあわてて追いかけていた。
    七輝の目は少年に釘付けだった。
    「彼、暗号以外はかなり不器用なようね」と雨音。
    「お、お姉ちゃんが教えたの?」
    「まさか」と、雨音はゆっくり首を振った。
    「どうして。どうしよう。お姉ちゃん。来ちゃうよ」
    「そりゃ、来るでしょうね。で、追い返すの?」
    七輝はそれに答えず、髪を手でなでつけた。
    「あたし、変じゃない? おかしくない? に、臭ったりしないかな?」
    「うん。匂う。恋する乙女のフェロモンがプンプン」
    ふざけないでよ、と抗議しながら七輝はきょろきょろと逃げ場を探し、結局布団の中にもぐりこんだ。

    もちろん僕はそんな病室の様子を知るべくもなく、開いたままの病室のドアを控えめにノックした。4人部屋のようだったが、さいわいにも3つしかベッドはうまっておらず、七輝以外の2人は検査か何かで外に出ているようだった。
    「いらっしゃい、ライ君。きれいなお花ね。ありがとう」
    雨音さんは僕から花束を受け取ると「どこかで花瓶を探してくるから」と、病室から出ていった。去り際に、「それ、起きているわよ」と、ベッドの上で丸くなっている布団を指差して。
    それでも七輝は布団から顔を出さず、やっと声を出してくれたのは4回目に名前を呼び掛けた後だった。それも「う~」という、返事と言うよりは鳴き声であったのだが、それでも嬉しかった。久しぶりに聞けた七輝の声だ。
    「どうしてここがわかったの? あの暗号、どうやって解いたの?」
    「うん……。ごめん。実は、全然わからなかったんだ」
    「えっ?」
    そこで僕はこの病院を見つけた経緯を説明した。必死に何日もかけて暗号に取り組みながらも答えにたどり着けずに焦っていた僕に助言を与えてくれたのは清春だった。
    「要は、その病院さえわかればいいんだろう」と。
    目から鱗が落ちる思いだった。そうだ。僕の目的は暗号を解くことじゃない。七輝のいる病院をみつけること。いや、七輝に会うことだ。そこからは清春に協力してもらい、七輝と初めて会ったハンバーガー屋を中心に、入院施設のある難病を治療できそうな全ての病院をチェックして七輝という名前の入院患者がいるかどうかを調べることにした。
    しかし、病院の方でも電話等で簡単に患者の情報を漏らすわけにもいかず、結局はひとつひとつの病院に行ってみて、病室についている名札で確認するほかはなかった。
    「……全部の病院を、病室を……足で探したってこと。だって……そんなの」
    「うん。とても僕ひとりじゃ無理だった。友達や仲のいい後輩にも事情を話して協力してもらって。これも交友関係の広いキヨがすごく助けてくれたんだ」
    「…………ずるい」
    「うん。そうだね。ごめん」
    「なんで。どうして、そんなに」
    やっとそこで七輝が布団から顔を出した。泣いている。初めて見る彼女の泣き顔に僕はひどく動揺した。
    「泣かないで。七輝」
    七輝は黙って下を見つめている。何を見ているのか気づいて僕はあわてて足を引いた。昔、七輝と会うときに清春に相談して新しく買ったはずの靴は、病院探しで歩き回ったせいで哀れなほどにボロボロになってしまっていた。
    七輝が顔を上げて僕を見る。子供のように泣いていた。鼻水も出てる。しゃくりあげている。だけど僕も同じだった。
    「あたし……、脚がなくなるのよ」
    「雨音さんに聞いた」
    「腕だって……」
    「それも聞いた」
    「あたし、あたし。ほんとにお地蔵さんになっちゃう。だから、だから」
    「好きだ」
    なんて情けないんだろう。そこから僕は「好きだ」以外の言葉を発せられなくなってしまった。本当はもっと気の利いた言葉を幾つも用意していたのに、全然出てこない。子供みたいに泣きながら「好きだ」と何度も言い続けることしかできなかった。
    気を利かせてくれて病室を出ていた雨音さんが戻るまで、僕たちふたりは、向かい合ったまま両手をつないで、ただただ、わあわあと泣いていた。

    お見舞いには毎日行った。行くたびに七輝はパジャマの裾を上げて脚を出した。僕は目のやり場に困ったが、しっかり見て覚えておいて欲しいと怒られた。触って、と言うのでおそるおそる触れるとくすぐったそうに笑ってくれた。脚の切除手術のときは一緒に泣いた。僕にできるのはそのぐらいしかなかった。

    その後、ありがたいことに腕の除去は見送られることになった。医者の予想よりもかなり七輝の免疫能力が向上しているらしい。雨音さんには、ライ君といつまでも手をつないでいたい願望が実を結んだのね、と冷やかされた。嬉しくて、その日はずっと手をつないだままだった。それからも会うたびに僕らは必ず手をつなぐ。まるでジグソーの一対のピースのように。

    あれからずいぶん時がたった。今でも僕らは手をつないでいる。結婚して娘が2人いる。長女も次女も養子であることを感じないくらい僕たち家族は仲良しだ。近所には雨音さんと清春夫婦が住んでいて2人の間には3人も子供がいる。みんな仲良しだ。今日は長女の結婚式。「お父さんたちってほんとうに仲がいいよね」なんて言われながら僕たちは手をつないで式に出る。
    「あのとき、あたしのパズルを解いてくれてありがとう」と、七輝は言う。
    「あのとき、走って追いかけてくれてありがとう」と、僕は笑う。

    僕たち、雨音さん、清春、子供たち、子供の結婚相手、いずれは孫も生まれるかもしれない。どんどん増えていく僕たちのパズルのピースが描く絵は幸福そのものだった。



    てきとうに、ざっくりと書いてみました。作者の方、関係者の方々、ごめんなさいm(__)m
    でも、「余命200日」なんて結末より生きて欲しかったので、つい、書いてしまいました。
    あと、「おじぞう」という破壊力のある七輝のあだ名も利用しました。
    文章力の無さで本作を汚してしまったことをお詫びします。あくまでもこれは私のつまらない妄想にすぎないので、本作が好きな方々、怒らないでね~(o_ _)o))

    • 1Q84O1さん
      全フォロワーがキュンした♡
      土瓶氏が小説家デビュー!
      土瓶師匠サイコーです(〃ω〃)


      で、自分を何て呼ぶか…?
      そんなの簡単ですよ!
      ど...
      全フォロワーがキュンした♡
      土瓶氏が小説家デビュー!
      土瓶師匠サイコーです(〃ω〃)


      で、自分を何て呼ぶか…?
      そんなの簡単ですよ!
      どこかのめろんさんみたいにカリスマレビュアーって名乗ればいいじゃないですかw
      2023/06/25
    • 土瓶さん
      みなさま、ありがとうございますm(__)m
      しかし、書いた後、激しく後悔して全身が痒くなったのでもう無理。
      投稿もずいぶん迷ったんですが...
      みなさま、ありがとうございますm(__)m
      しかし、書いた後、激しく後悔して全身が痒くなったのでもう無理。
      投稿もずいぶん迷ったんですが、やっぱり本書のラストはなんだか尻切れ感と投げやりな感じがしてもったいなくて。ヒロイン死ななくてもいいんじゃね? 死ななかったとしたらどんな終わり方にって考えて、それでレビュー代わりに書いてみた次第です。

      もう自分は……Iじゃ変か(笑) 日本人だしな~。
      わし……、う~ん?
      どこかのめろんさんみたいにはなれそうもないです^^
      2023/06/25
    • aoi-soraさん
      土瓶さん
      コメント遅くなりました!

      えっと、びっくりしましたよ~
      知らない間に続編が出ていたのかと、感動していたら土瓶先生の執筆とは!!
      ...
      土瓶さん
      コメント遅くなりました!

      えっと、びっくりしましたよ~
      知らない間に続編が出ていたのかと、感動していたら土瓶先生の執筆とは!!
      もう、作家デビューですね(⁠◠⁠‿⁠・⁠)⁠—⁠☆

      一人称問題は、かなり面白かったでしょ!?
      楽しんでもらえたようで嬉しいですっ!
      2023/06/27
  • 青春ミステリーですね。
    日常の謎。とびきりのパズルが散りばめられています。
    似鳥さんのお得意の学園物語とは少し趣が異なりますが、高校生が主役の物語です。
    似鳥さんは(未だに男性が女性か不明ですが)自分の分身を作品に仕立てたように思います。
    博識が必ずしも『何かの役に立つ』とは限らない。そんなジレンマと好奇心の塊のような、何でも知りたがる性質の人間《実は私も同類なのですが》の一夏の物語です。
    似鳥さんの語り口は軽妙で、それでいて出てくる豊富な蘊蓄がたまりませんね。本文に*のマークを置いて、説明文が入る等と云うのは、漱石先生の本か?と思わせる位、親切丁寧ですね。誤植が多い事も、漱石先生と同じようです(いつものように、あとがきで漏らされていました。)
    主人公はクイズ・パズル研究同好会会長(会員は二人だけ)の頗る謎解きオタク。これが似鳥物語が面白く無い訳がありません。一夏の恋愛物語でもありますが、ほろ苦さはあるものの作者いわく、「著者にはありえない爽やかな本」です。
    ほんとうに面白かった。

    • まことさん
      ひだまりトマトさん。こんばんは♪
      私もこの作品がとても、好きでした。
      昨年の私のベスト本に入れています。自慢じゃありませんが、昨年200冊以...
      ひだまりトマトさん。こんばんは♪
      私もこの作品がとても、好きでした。
      昨年の私のベスト本に入れています。自慢じゃありませんが、昨年200冊以上読んだ中のベスト3です。
      高校生、二人が、惹かれあう様子が、みずみずしくて、とっても、素敵でした。
      最後の謎も、とっても、せつなくて。
      ひだまりトマトさんも、文末に「ほんとうに面白かった」と結ばれていらしたので、なんか、とても嬉しく思い、コメントさせていただきました。
      2023/02/15
    • ひだまりトマトさん
      まことさんこんばんは。
      コメントありがとうございます。
      似鳥さんの作品は市立高校シリーズ(2007年)からですから長いお付き合いになります。...
      まことさんこんばんは。
      コメントありがとうございます。
      似鳥さんの作品は市立高校シリーズ(2007年)からですから長いお付き合いになります。独特の世界があり、どことなく私に似たところに(好奇心の塊)ひかれました。
      まことさんが、とても好きな作品のベストにあげられいるのが、とても嬉しいですね。
      作家さんも「あとがき」にあるように、今までとは違ってとてもスッキリとした青春物語は格別に味わい深いものでした。
      共通の本で、感動を得れるのは嬉しいものですね。ありがとうございました。
      2023/02/15
  • 知識を得ること、謎解きやクイズが大好きな、高校生のライ。
    モスバーガーでたまたま隣り合わせた姉妹と、不思議な暗号を解くことになり……。

    次々と暗号が登場し、謎解き大好きな面々が取り組んでいくのが、特徴的。

    「あとがき」にもあるが、普通のストーリーでは、こんなに大量の暗号は出てこないもの。
    特殊な設定にしたことで、謎解きを存分に楽しめる。

    クラスの人気者キヨと、立ち位置が真逆なライ。
    今までかかわってこなかったふたりの、関係性の変化も、青春。

    海、旅行、アミューズメントパーク。
    夏休みらしいエピソード満載の、青春恋愛ミステリ。

    甘酸っぱく、さわやか。

  •  こうきたかぁ!

     『じゃない方』と呼ばれる僕、成田頼信は会員が2名しかいないクイズ・パズル研究同好会会長である。

     予定もないまま夏休みに入り、モスバーガーの店内で隣の席にいた2人組の美人姉妹がクイズに挑戦していた。

     答えのわかったライは、2人が席を離れた隙にヒントを残して店外へ出ると、そこに妹が追いかけてきて、何故かその流れで、次の問題を一緒に解くことになった。
     美人姉妹と歩いていると、『じゃない方』じゃない人気者の成田清春が通りかかり、4人で謎を解いていくことになる。

     そこから素敵な夏休みが始まったと思いきや・・・。

     姉妹の妹、七輝を好きになったライ。七輝もどうやらライのことを悪くなく思っているようだった。そんな夢心地のライに美人姉妹の姉雨音が
    「本当の七輝を知ったら、あなたは絶対に驚く」
    と言う。

     そこから勝手にミステリ要素が生まれ、まさか宇宙人でしたとか、実は男でしたとか、そんなオチはないよな?と疑心暗鬼になりながら読み進める。

     ますます急接近していく2人だったが、最後の問題が出題されると、「ここでお別れ」と言い残し、連絡が取れなくなってしまう。

     そしてラストはなるほどと、ストンと腑に落ちる結末に導かれる。

     この物語は、たくさんの難題が登場します。私は全くわからないので、謎解きは登場人物たちに任せ、ノータッチでしたが、謎解きを楽しむという読み方もあると思います。
     
     私はもっぱら恋愛冒険の方が主で、今後のライと七輝、キヨと雨音を応援したくなりました。

    • まことさん
      ひとしさん。こんばんは♪

      この作品、私は7月に読んだベスト3に入れたのですが、読まれている方が、全然いなくて、寂しく感じていました。
      読書...
      ひとしさん。こんばんは♪

      この作品、私は7月に読んだベスト3に入れたのですが、読まれている方が、全然いなくて、寂しく感じていました。
      読書◯ー◯ーでは、1位になっていた時もあったのにです。
      ひとしさんの感想、私と同じです、私も、謎解きはちんぷんかんぷんで、読み流しました。
      でも、最後の四人の恋の行方は、上手くいくといいのになあって、すっかり応援していました。
      2022/09/04
    • ひとしさん
      まことさんこんばんは!
      コメントありがとうございます。
      実は、私の父親の名前が誠で、まことさんの読む本とレビューがものすごく参考になるこ...
      まことさんこんばんは!
      コメントありがとうございます。
      実は、私の父親の名前が誠で、まことさんの読む本とレビューがものすごく参考になることもあり、勝手に親しみを持っていました(^◇^;)

      さて、まことさんも謎解きはちんぷんかんぷんだったのですね!
      ちょっと難しかったですよね。私は最初から諦めていました笑
      最初、キヨをウザいとも思っていましたが、結構いい奴で、最後にはみんなのことを応援している私がいました(^_^)
      2022/09/05
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著者プロフィール

1981年千葉県生まれ。2006年『理由あって冬に出る』で第16回鮎川哲也賞に佳作入選しデビュー。「市立高校」シリーズ、「戦力外捜査官」シリーズ、「楓ヶ丘動物園」シリーズなどの人気シリーズの他に『難事件カフェ』『迫りくる自分』『きみのために青く光る』『シャーロック・ホームズの不均衡』『レジまでの推理~本屋さんの名探偵~』『101教室』『彼女の色に届くまで』『100億人のヨリコさん』『名探偵誕生』『叙述トリック短編集』『そこにいるのに』『目を見て話せない』『生まれつきの花 警視庁花人犯罪対策班』などがある。

「2023年 『育休刑事 (諸事情により育休延長中)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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