青の刀匠 (一般書)

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 119
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591175057

作品紹介・あらすじ

傷を負った孤独な少年が出会ったのは、
日本で唯一といえる女性の刀鍛冶だった――。
胸に熱き炎が宿る、感動の青春小説!

―――
「何のために刀作っちょう?」
主人公の沙コテツに、級友の土屋はあっけらかんとこうたずねる。
これは、問われたコテツ自身の疑問でもあるが、同時に作者の問いかけでもあるのだろう。そして、私の疑問でもあった。

「鉄には鉄のなりたい姿があっだわ」師匠はそう言う。刀になりたい鉄があるとするならば、そのように姿を整えてやることは、職人の止むにやまれぬ使命なのだろうか。自然のあり様は、人間にとって正しいことばかりとは限らない。

物語では使命を担った職人たちが、さまざまな傷や事情を抱えながらも、懸命に伝統をつなげていく。その姿に、人が生きていくということの困難と尊さを感じずにはいられない。
本著は刀を作る職人たちの葛藤を感じつつも、爽やかに読みきることができる。それは、作者の丁寧で力のある筆致に「ペンは剣より強し」という言葉の灯りを感じることができたからだと思う。

                   ――まはら三桃(小説家)

【STORY】
突然火事にあい、火傷を負った東京の男子高校生・コテツ。
天涯孤独となった彼は、島根に住む遠縁の剱田かがりという老婦に引き取られることに。
かがりは、現代日本において唯一と言われる女性の刀鍛冶で、寡黙だが瞳に燃え盛る炎を持つ刀匠だった。
自暴自棄になり言われるまま島根にやってきたコテツだが、転校初日、己の火傷を見るクラスメイトの視線に耐えられず、学校へいけなくなる。
部屋にひきこもるコテツに、かがりは「学校へはいかなくてもいいが、そのかわり仕事を手伝え」と言う。
かがりの弟子であるコウやカンナに教わりながら手伝いをするうちに、徐々に作刀に興味を持ち始めるコテツ。
現代日本において、刀をつくる意味とはなにか? 
かがりや兄弟子たちと関わり、悩みながらも、鉄を打ち、その熱に溶かされ、コテツは自らの心の形も変えていく――。

伝統工芸の美しさ、厳しさ、そして脈々と受け継がれていくものとは。
少年の成長を瑞々しく綴る、胸が熱くなる青春小説。

装画:たらちねジョン

感想・レビュー・書評

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  • 刀鍛冶の世界,"鍛錬"魂を磨き上げること
    火事で火傷を負った高校生コテツを島根の女刀匠(老)が引取る。博物館日本刀殺人事件,被害者遺族の憤り悲しみ。傷や事情を抱え葛藤する人々の姿に胸が熱くなる。

  • 刀鍛冶という仕事と色々な事情を抱える人々の心情との結びつきが丁寧に描写されていて面白かったのと、主人公の名前など細かい刀関係の工夫があったのが良かった。

  • 家が火事になり、親も退院できないため、遠縁の剱田(つるぎだ)という刀鍛冶の女性のもとで生活することになった高二の沙(いさご)コテツ。自身も顔に火傷跡残り、心と両方で深く火事からダメージを受けている。
    島根の何もないと表現された環境や、剱田さんや弟子の気持ちに囲まれ、学校に行けないコテツがなし崩し的に刀鍛冶の仕事を手伝い、回復していく話だった。心の回復の方はまあ、普通という印象だったが、刀鍛冶の仕事が良く分かる児童文学という意味でレア、結構良かった!中高刀剣女子に一読して欲しいです。
    刀を現代で作る意味かぁ。伝統工芸品全般が持つ問題かもしれないけど、刀はまた、人を殺せる武器だから難しいんだな。初めてそんなことも意識しました。

  • 火災で火傷を負い、東京から島根県松江市の遠戚の家へ来て生活を送るようになった高校2年生が主人公です。島根半島の東端のほうの美保関町七類というかなりの僻地が舞台です。
    居候先が日本で唯一の女性の刀鍛冶の家で、学校に行けない主人公は、何となく刀鍛冶の仕事を手伝うことになります。
    現代において日本刀を作る意味は何なのかということと、主人公の生きる意味とが交錯する再生の物語ですが、すでに何年も修行している二人の弟子の事情も絡んで、分量はそれほど長くはないのですが多層的な物語になっていて面白かったです。
    刀鍛冶についての知識も、興味深いものでした。

  • 方言は詳しく説明されてたのでわかりやすかった
    懐刀については初めて知りました。ら

  • 突然火事にあい、火傷を負った東京の男子高校生・コテツ。
    天涯孤独となった彼は、島根に住む遠縁の剱田かがりという老婦に引き取られることに。
    かがりは、現代日本において唯一と言われる女性の刀鍛冶で、寡黙だが瞳に燃え盛る炎を持つ刀匠だった。
    自暴自棄になり言われるまま島根にやってきたコテツだが、転校初日、己の火傷を見るクラスメイトの視線に耐えられず、学校へいけなくなる。
    部屋にひきこもるコテツに、かがりは「学校へはいかなくてもいいが、そのかわり仕事を手伝え」と言う。
    かがりの弟子であるコウやカンナに教わりながら手伝いをするうちに、徐々に作刀に興味を持ち始めるコテツ。
    現代日本において、刀をつくる意味とはなにか?
    かがりや兄弟子たちと関わり、悩みながらも、鉄を打ち、その熱に溶かされ、コテツは自らの心の形も変えていく――。
    (アマゾンより引用)

  • 傷ついた少年の再生ものというベタな話だが、描写だけでは鍛冶仕事、ようイメージが掴めなかった。あえて検索はせずで。

  • 刀鍛冶の仕事に向き合う中で成長する不登校高校生の物語。仕事そのものの魅力と殺傷力を持つものを伝統・技能の維持と美術として作る矛盾とを題材に火災で自分自身もトラウマを抱え父を失った経験からの再起を描いている。やや書き飛ばしも感じるが、周囲を巻き込んで共に成長する物語にしたところなどと魅力的だ。

  • トラウマからの再生をすごく丁寧に書ききっていた。不純物も含めてその人の一部、目新しいフレーズではないけどストンと心に入ってきました。

  • やってごしない

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著者プロフィール

「サマーランサー」にて第19回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>を受賞し、デビュー。瑞々しい感性で描かれる青春小説に定評がある気鋭の作家。

「2020年 『17歳のラリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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