本のない、絵本屋クッタラ: おいしいスープ、置いてます。 (ポプラ文庫 し 11-1)

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 1633
感想 : 94
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591176962

作品紹介・あらすじ

札幌にあるインクブルーの三角屋根が目印の、木造二階建て――そこが『本のない、絵本屋クッタラ』だ。看板には『おいしいスープ、置いてます。』と書いてあり、店主・広田奏と共同経営の八木が切り盛りするカフェでもある。メニューはスープセットとコーヒーのみだが、育児に悩んだり、仕事に忙殺されていたり、自分の今の立ち位置に迷った客たちが今日もふらりとやってくる。彼らの話に奏は静かに耳を傾けると、「御本が揃いましたらご連絡いたします」と告げる。そうして客はもう一度、店を訪れるのだ。奏のセレクトする絵本は時に意外で、時に温かく、時に一読しただけではわからない秘密をもっている……。そんな奏がこの店を開いた理由とは――? 季節のスープと登場する絵本に心が躍る、「今宵も喫茶ドードーのキッチンで。」の標野凪が贈る、ほっとひと息つける連作短編集。


■著者プロフィール
標野凪(しめの・なぎ)
静岡県浜松市出身。東京、福岡、札幌と移り住む。福岡で開業し、現在は都内(飯田橋)で小さなお店「茜夜」を切り盛りする現役カフェ店主でもある。

感想・レビュー・書評

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  •  前から気になっていたこの作品…だって、本がないのに絵本屋?でもスープはあるの?しかも、クッタラって何??もう頭の中、沢山の??で…これは読んでみようと思って手にしました。

     物語の舞台は、北海道札幌にある『本のない、絵本屋クッタラ』…店は広田奏と八木が共同経営しており、以前は2階部分に本があったのだが、現在は八木の住居スペースになっているので、お客さん自身で読みたい本を選ぶことはできない。ただ、奏が訪れたお客さんの話を聞いたうえで、その悩みに聞く絵本を探してくれる。このお店のメニューは、季節のスープセットとコーヒーのみだが、スープには北海道の豊かな食材を使用している…。

     読み終えて、読む前に感じた沢山の??は解消できました。あと八木さんのことも…。この作品では、本当に沢山の絵本に触れられています。巻末にまとまっているんですが、37作品もあります!!どんな絵本なのか読んでみたい気持ちもあったけど、とりあえず読みながらあげられている作品の表紙だけブクログで調べながら読みました!絵本好きには、もってこいの作品かと思います。私も絵本は好きなつもりなんだけど、初めて知った絵本が結構ありました。ちゃんと、お客さんの話を聴いてくれる場所であることがいいところですよね。「束の間ほっとして、また日常に戻っていく場所」…美味しいスープとコーヒー、そして、奏が選ぶ絵本がそのきっかけになるんですね!「終電前のちょいごはん」の経営は、奏の彼女さんらしいのでそっちも読みたくなりました。

  • 仕事上の厄介事が重なって、頭の中がグダグダだった時に読み始めたので、最初の話を読んだ時には「絵本を読んで気持ちが楽になるかいな」「読んだところで辞める社員の穴は埋まらないし」みたいな気持ちだった。
    それでも読み進めれば、絵本は色とりどりで楽しそうだし、季節の野菜を使ったスープはおいしそうだし、少しづつ惹かれ出した。
    第5話の主人公は仕事にぐったりのイラストレーター。数をこなす日々に追われている彼女が絵の楽しさを思い出すお話は、ささくれだった心に刺さり、こなすばかりで本質を忘れがちな仕事の日常を反省させられた。
    本を読んでも辞める社員の穴を埋めれるわけではないが、確かに、何とかしよう、何とかなるよな、今まで何回も乗り越えてきたし、という気にはさせられた。
    普通の精神状態で読んでいたらもっと面白かったのだろうなと思え、この本にはちょっと申し訳なかったなというように思った。

  • 『本のない、絵本屋クッタラ』に入ったお客さんは必ず一度は絵本を探すのだが…どこにも置いてない。
    店主である広田奏が来客の話を聞いて、後日その悩みに寄り添ったお勧めの絵本を差し出すという。

    さまざまな客に応じて差し出す絵本が、的を得ていてなるほどなぁと。
    本じゃなく絵本というところも相棒の八木くんもいっしょに読めるからだと言うが、それだけではなく、知れば知るほど面白い。単純なように見えて、読む人やタイミングで何通りもの解釈ができたりするし、発見も多いと。

    そうなのである。読んだ時期でも感じたことが違ったり、多くの文字がなくても絵だけで伝わってくるものがあって、たくさんのことを教えてくれる。

    なので知っている絵本が出てくると嬉しくなり、こういう気持ちで選んだんだなぁと新たな発見もあって楽しめた。

    この本でかなりの絵本が登場してくるので、まだ未読の絵本を読んでみたいと思う。


    ちなみに「クッタラ」とはアイヌ語で植物の蓼科のイタドリのこと。
    痛みを取る、から来ている。若葉は止血に、根は生薬になるという。
    茎は軽くて丈夫なので杖にも使われるし、枯れた茎は風よけや雪がこいにもなる。
    このお店が、誰かの杖になったり、厳しい雪や風から守る存在って意味を込めてのようだ。


    終電前のちょいごはんの店主文さんが恋人⁈というちょっとした繋がりもおもしろい。

  • このところ少し疲れていて、軽く読めて、でも、明るく優しくなれる本はないかと探して手に取った作品です。

    舞台は北海道、札幌市。
    本のない、絵本屋クッタラ
    店主、広田奏と共同経営の八木が切り盛りする本屋兼カフェ。メニューは季節のスープセットとコーヒーのみ。
    そこに悩みや迷いを抱えた客がやってくる。
    そして、その悩みに寄り添う絵本を選び差し出す。

    作品に出てくるスープは素材を大切にして作られて、どれも美味しそうです。
    そして、何よりもどんな絵本が選ばれるかが、とても楽しみでした。

    季節のスープ、それぞれの絵本、それから、共同経営で相棒の八木さんとの掛け合いで、とても癒やされて心が軽くなりました。
    読んで良かったな、と思いました。

  • 標野凪さんの作品、2冊目です。

    今回は本を置いていない本屋さんが舞台。お客さんがご所望の絵本を店主が選ぶオーダーメイドの本屋さんで、「クッタラ」というアイヌ語がお店の名前となっているようです。このお店、本を置いていないのに、本屋と名乗っていたりとちょっと風変わりで、メニューは季節のスープとコーヒーだけ、共同経営者は八木こと「ヤギ」!

    お客さんの悩みに合わせた絵本を読み手の私たちもたくさん知ることができます。知っているもの、知らないもの、なじみの作家、初めて知る作家・・・絵本大好きなので、かなりワクワクしました。

    アーノルド・ローベル、エルサ・ベスコフ、ジョン・バーニンガム、バージニア・リー・バートン、なかがわりえこ・・・など、私も大好きな作家さんたちの絵本が出てくると、ちょっとドヤ顔になりました。

    その中でも、わかやまけんの「しろくまちゃんのほっとけーき」の点字版が出てきたときには、「うぉ!」と思いました。この点字版、文字が点字になっているだけでなく、絵も点字で表されているのですが、最近、このような点字の絵本についての記事を読んだばかりだったのです。恥ずかしながら、そんな絵本があることを初めて知ったので、その記事に大変感動したのですが、そんな個人的な体験のあとに、絵本の点字版が本書に出てきたので、うれしい偶然(?)に心が小躍りしました。

    絵本って本当に素敵です。心の栄養です。絵本の良さを知っていて、たくさんの絵本を知っている著者だからこそ、この物語ができたんですね。その他にも野菜、特に北海道の野菜の豆知識やアイヌ語の豆知識などがたくさん詰め込まれた小説でした。私の物のとらえ方がいけないのですが、「こうだ、ああだ」と一方的に教えられているようで、小説としてすごく面白いというわけではなかったですが、ほっこりするという感想を持たれる方も多いだろうな、と思いました。夢のようなお店で、小説だからそんなこと考えてはいけないのに、「どうやって採算をとるんだろう」とか思ってしまって、あまりにも現実味がないところで少し興ざめしてしまいました。

    最後、急に辛口評価になりましたが、どの登場人物にもあまり感情移入できなかったので、私にはあまり刺さらなかったかったな、というところです。

  • ☆4

    「悩みに効く御本をお探しします。」

    店主である奏さんと相棒である八木さんが「悩みに寄り添う絵本」を選んでくれる「絵本屋 クッタラ」

    八木さんに何だか違和感?を感じながら読み始めたのですが…なるほど!そういう事だったのか!と途中で、納得しました。

    作中にたくさんの絵本が登場するので、気になった絵本は調べてみたりと楽しみながら読ませて頂きました。実際に書店や図書館などで手に取って読んでみたいと思います❁⃘*.゚

  • 標野凪さん4冊目。今回の舞台は北海道の1軒屋で営むスープ屋。アイヌ語の「クッタラ」という店名の響きが良い感じ。語り手には、なんとヤギも登場。ヤギと共同経営する男性が営むお店なのだ。スープ屋はお客1人ずつに合った絵本を紹介する、絵本を置いていない絵本屋でもある。お客さんから話を聞き、その人に合う絵本を数冊選んだ(仕入れた)のち、お客さんの不要な絵本は返品する、という仕組みの商売は、なかなか利益を上げるのは難しそうだな…と思ってしまった。何かとうまく行かなかったり元気がない客が、美味しいスープと共に自分に合った絵本を選んでもらえる包容力のあるお店で、何とも言えない優しい空気が流れていた。夜に少しずつ読み進めていたが、癒しを得るのにはぴったりの本。最後、ヤギ視点の話がなくなり、ヤギが話さなくなってしまった感じが『魔女の宅急便』で黒猫のジジが人間の言葉で話をしなくなった感じを彷彿とさせ、ちょっぴり寂しかった。だが、店主と山羊の間の信頼関係は確固たるもので、お互いがそれぞれを必要とし尊重している様子が良かった。

  • お茶とお酒 茜夜(@ochaosake_akaneya) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/ochaosake_akaneya/

    ([し]11−1)本のない、絵本屋クッタラ|ポプラ文庫 日本文学|小説・文芸|本を探す|ポプラ社
    https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8101463.html

  • とにかく、ほっこりと心温まる本でした^ ^
    お客さんの悩みに寄り添える絵本を選んでくれる、スープと絵本のお店が舞台。

    私も絵本大好きだけど、知らないタイトルも多くてとても興味深かったです。

    『絵本って知れば知るほど深くて面白いんです。単純なように見えて、読む人やタイミングで何通りもの解釈ができたりもするし、発見も多いんです』(本文より)

    物語から得ることって本当に多いですよね。勇気をもらうこともあるし、前向きに考えが変わることもあるし。だから、読むことをやめれません^ ^

  • 絵本ってこんなに意味が深かったのかと思う。何事も見方を変えれば心が楽になる。絵本とスープで満たされるって幸せです。

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著者プロフィール

静岡県浜松市生まれ。東京、福岡、札幌と移り住み、現在は東京都内で小さなカフェを営む現役店主でもある。2018年「第1回おいしい文学賞」にて最終候補となり、19年『終電前のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ』でデビュー。その他著書に、『終電前のちょいごはん 薬院文月のみちくさレシピ』『占い日本茶カフェ 迷い猫』『伝言猫がカフェにいます』『本のない、絵本屋クッタラ おいしいスープ、置いてます。』等がある。

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