ワルプルギス実行委員実行する 速水螺旋人作品集 (書籍扱い楽園コミックス)

著者 :
  • 白泉社
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本棚登録 : 81
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592711971

作品紹介・あらすじ

「楽園」本誌&web増刊で発表されたいずれも値千金の読み切り作品10本を収録した著者久々の作品集。
SFから昔話、ロシア近代文学まで幅広いジャンルを軽妙に描いた読み応え抜群の一冊。
2021年12月刊

感想・レビュー・書評

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  • スラヴ・北欧文化圏ベースの話から日中戦争従軍兵と妖怪、機械と超常が融合したファンタジーなどなどバラエティ豊かな短編作品集。

    『男爵にふさわしい銀河旅行』にハマって以来、やっぱり絵のタッチが好きだし、画面のわらわらドヤドヤ感とか埃っぽさとか速水先生が描く架空のノスタルジックな空間の読み心地が最高。
    元ネタ・モチーフがいまいちわからない部分もあるけどそこはご愛嬌。

    以下、好きなエピソードをいくつか。

    〈総選挙の魔女〉…現代社会に生きる魔女の活動を描いた話。ただし、主人公の〈花柄たまら〉はグルジア系ルーマニア人で見た目がそれっぽいからと担ぎ上げられた偽物。エセ魔術で選挙戦を有利に進める内に対抗勢力が本物の魔女を投入してきて…という話。ジョージアの旧国名は「サカルトヴェロ民主共和国」と言うんですね。全く知りませんでした。コーカサス史はほとんどわからん。

    〈勇者は如何にして心配するのを止めてコロナウイルスを愛するようになったか〉…コロナ禍の日本に生きる、かつて魔王を倒した元・勇者一行のゆるい日常。コロナ禍生活も先生の手にかかればこんな風にアレンジされるのね。確かに、いっときイソジンが効くとか色々ありましたね。彼らの作るポーションはちゃんと効果があるのでしょうが、見た目が豚汁ではちょっと。それに、なぜよりによって公園で炊き出し風に売り出したのか。

    〈わからず屋〉…これ好き!’なんだかわからないものを売っているわからず屋’という店に、ある日’なんでもわかる男’が現れる。男は次々と売り物を鑑定してしまい、やがて…という話。先生が時々やる、さらっと早送りで地球を救ったりしてる小ボケについ引っかかっちゃう。

    〈フセスラフ人狼公の花嫁〉…調べてびっくり、11世紀ルーシに実在したというリューリク朝の大公〈フセスラフ〉を題材にした話。「人狼公」というのは『イーゴリ公物語』に’フセスラフは夜半になると狼に化けて駆け回り、月食を引き起こしたりした’(超意訳)と記されている事によるか。花嫁候補のふたり、というかひとりと一匹が可愛い。なぜに関西弁?妖術の正体は’畏れ’というのはよく聞く話。


    先生の引き出しの多さに吃驚。現代劇もSFも好きだけど、世界史題材のお話とかもっと読みたい。先生の可愛い絵柄ならイナルチュクの例のシーンすらコミカルに描けると思うので、是非「速水螺旋人風・元朝秘史」とか読みたいなあ。


    1刷
    2023.6.24

  • どれも面白かったが、「あゝ戦友よ、くだんに会おう」がお気に入り。

  • 良い。バラエティ豊かな短編漫画集の貴重な一冊。
    どれも面白いが、その中でも印象に残ったのは、「あゝ戦友よ、くだんに会おう」。ほか落語のオチのような「わからず屋」、あと狼の花嫁がかわいい「フセスラフ人狼公の花嫁」か。
    豊富な知識に基づいて漫画にしている感じが伝わってくる、でも、とても漫画漫画しい独特の味わい。気に入った。

  • 速水螺旋人の短編集。本屋さんでひたすら探すけど、なかなか見つからない。端末で在庫確認すれば、確かに在庫あるのに、見つからない。店員さんに聞けばいいのだけども、ここまできたらこっちにも意地がある、というわけわからん状態で探索。
    まいつきさん、一生懸命探しました。そして、見つかりましたよ。

    少女漫画の棚の方にありました。

    出版社と掲載雑誌の関係のなせる技か。こいつは盲点でした。素直に店員さんに聞きましょう。コミュ障な部分が出てしまいました。

    「ペーパーカントリー」
    四角四面にルールを遵守する中にある滑稽さ。風刺というには喜劇の要素が強いけど、このテイストはいいですね。オチも最高。

    「あゞ戦友よ、くだんに会おう」
    件といえば、人面牛身の予言する妖。予言は必中ということで、たいがいはホラーになるはず、ぬ〜べ〜の件とか。螺旋人にかかると、秘密道具になってしまいました。しかも、秘密道具としての使い方よりも、携帯食料の方が重要視されているという。
    最後には、おかしな共存共栄関係になっていきそうな雰囲気です。戦争後、このトリオで起業して成り上がってゆく、みたいな喜劇もおもしろそう。最後は転落スカンピンというオチで。

    「わからず屋」
    落語にありそうな小話。まんじゅう怖い、と似た「してやったり」の感覚が好き。店主の「してやったり」のニヤリもい。好きです。


    ざっくりと心に残った3編の感想。
    爆笑ではないけど、思わずニヤリとしてしまうところが、螺旋人さんのコメディが好きなところです。
    爆笑は堪えられても、ニヤリの衝動は堪えられない。
    外出中に読めない漫画です「ワルプルギス実行委員実行する」。

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著者プロフィール

1971年11月30日生まれ、京都府出身。
漫画家&イラストレーター。
既刊は『靴ずれ戦線』(徳間書店)『オープンダイス・キングダム』(冒険企画局)、『螺旋人リアリズム』(イカロス出版)など。
今作『大砲とスタンプ』が「モーニング・ツー」初登場となる。

「2014年 『大砲とスタンプ(4)限定版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

速水螺旋人の作品

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