ダヤンとタシルの王子 (Dayan in Wachifield (4))
- ほるぷ出版 (2004年5月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
- / ISBN・EAN: 9784593592296
感想・レビュー・書評
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ネコのダヤンの長編ファンタジー小説の第4弾。
頼りになるネコ、ジタンと別れて、ダヤンはひとりで過去の世界へ向かいます。
目が覚めたダヤンは、ここがフォーンの森のアガリコというところだと言われました。
一方、タシル王国では王の大猫グランが病気で寝ていました。。。
続き物なので第1弾の「ダヤン、わちふぃーるどへ」から読むことをお勧めします。
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過去へと吹く風は、ダヤンとジタンを乗せて、時の虫食い穴へむかって吹きおりていきます。ジタンは「ここからきみはひとりで行くんだ。だけど、きみはもうじきぼくに会える」と言い残して消え、ダヤンはひとり過去の世界へとむかいます。…ダヤンが目覚めたのは、まだ王国だった時代のタシル。そこではアビルトークは滅亡への道をたどっていて、まだ若い大魔女セなど、心ある者たちは憂慮するばかりでした。遙かな世界からやってきたダヤンが目にしたのは?ダヤンとともに闘うタシルの王子とは?ますます広がるわちふぃーるどの世界、待望の長編ファンタジー第4弾。
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今回はファンタジーにつきものの戦いシーン。
やっぱりキマイラに注目。「バニラたん…(´・ω・`)」 -
まだまだ、過去での冒険は続きそう。
ダヤンシリーズ、いきなり長編から詠み始めちゃったけど、本当は絵本を読んでからのほうが楽しめたかな?
それでも十分、楽しんでます。 -
再読
バニラとキマイラがかわいくてかわいくて… -
ダヤンは過去のジタンに出会いさらわれたバニラを救うため魔王と戦う。
《やっぱりダヤンは特別の猫だった》(p.286)
(2004年12月11日読了) -
猫のダヤンは人間の居ない「わちふぃーるど」という不思議な世界に迷い込んだ。
そこは動物たちが立って歩き、言葉を話し、魔法の存在する世界だった。
世界はなぜ「アルス(地球)」と「わちふぃーるど」に分かれたのか。
ダヤンは世界を救う旅に出ることになる…
圧倒的な世界観と壮大なストーリーで繰り広げられる壮絶なファンタジー。 -
前巻・『ダヤンと時の魔法』で、
わちふぃーるどの、タシルの危機を救うために、
アルスとわちふぃーるどが分裂する前のアビルトークへ送り込まれたダヤン。
閉じられた時間線である虫食い穴に吐きだされたダヤンは、
キタラの滝で、真っ白に輝く光につつまれて横たわったままゆっくりとおりてきました。
記憶を一度すべて失って、名前すら忘れた状態で・・・。
ダヤンは、『ダヤン、わちふぃーるどへ』では、
アルスからわちふぃーるどへやってきています。
そもそも、アルスからわちふぃーるどに来たのは、
わちふぃーるどを救うために過去に旅立つということが決まっていたからでした。
ダヤンは、数奇な運命を背負った猫なのです。
ダヤンの到来を知った大魔女セはつぶやきます。
『ほんとうに遥かの時を越えてやってくるものはいた。
セントニコラウスのおっしゃったことはほんとうだった』と。
さて、評者は、この使命を帯びたのはなぜダヤンなのかをずっと考えてきました。
まだ全7巻の長編の半分を折り返したところなので、
その答えが明確に出たわけではありません。
おそらく、このシリーズが終わる頃には、
あぁ、おまえはこのときのためにいたんだねと、
ダヤンを抱きしめたくなるに違いありませんが、
今は、ダヤンの行動から、
彼が時空間を2回も越える使命を帯びた理由について考えてみたいと思います。
ダヤンがやってきたこの過去の時代は、
タシルは王国で、王がいて、王妃は亡くなっていたものの、
王子と王女がいました。
ダヤンが知っている未来のわちふぃーるどと様々な違いがありました。
ダヤンは、未来を知る存在として、ここで活動することになります。
もうひとり、ダヤンにくっついてやってきたのが、魔物・七変化のキマイラ。
キマイラも未来を知るものです。
ダヤンが未来を語るとき、それはポジティブなものであることが印象的です。
彼は、危機を救うために来るのですから、
未来にはもうタシルに王国がないこともお城がないことも知っているわけです。
だけど、そんなことを今のタシルの王や王子にいうわけではありません。
彼が語る未来は、例えば、みんなが死んでしまったと思っている者が、
未来ではこの状態で生きていたと伝えて、
大魔女セに助けてもらうように頼むといったような、
未来の明るさを信じさせるものなのです。
そして、その使命の割には、無邪気さはちっとも変わりません。
みんなが夜に進軍するべきか休むべきか議論をしているときに、堂々と寝てしまい、
そのためにみんなが休むことに決める、
これが結果的によかった、みたいなことを相変わらずします。
過去の世界でも、あっという間にみんなに好かれます。
こいつの言うことなら、しょうがないなと、
種を超えた仲間達に思わせてしまう何かがあります。
わちふぃーるどの世界は、1本のこの長編だけが貫くものではないため、
ここまでこの長編を読んできただけの読者は知らないけれど、
ダヤンは知っているという未来のことも出てきます。
違うシリーズを読んでみるとそれが確かめられるかもしれず、
一本の長編だけではない、
いろいろな物語をぽこぽこと持っているというおもしろさが、
このわちふぃーるどにはあります。
ダヤンの力の最たるところは、自分のパワーに気づいていない、ということでしょうか。
タシルの王子を助けて、いっしょに呪文を唱えたとき、
確かに魔法は力を増しているのですが、
当の本人は、全然それに気づきません。
彼は、自分が「特別な猫である」ことに気づいていないのです。
それが結果として、彼をおごらせず、
無邪気な猫のままでいさせているのかもしれません。
ダヤンの本質は、どこにいても今を生きているということでしょうか。
過去をくよくよもしなければ、
知っている未来を夢想したりもしない、
今感じている自分をまっすぐに表現して生きる力があるのです。
ダヤンがその時代、時代で、協力することになる相手は、
ダヤンのそんな、今を生きるパワーを必要としているのかもしれません。
本書は、第1巻の『ダヤン、わちふぃーるどへ 』、
第2巻の『ダヤンとジタン』と同様に、比較的平穏なエンディングを迎えます。
『ダヤンと時の魔法』は、非常に考えさせられる、
宙に投げ出されたようなエンディングだっただけに、
ここまで読んだ中でもそれが印象に残っています。
『ダヤンと時の魔法』のエンディングの「このままで終わってしまうの?」という感じは、
実は、本書が平和に終わった今でも続いているように思います。
だからこそ、ダヤンは、先々に「あの状態」を
何とかしてくれるのではないかしらと期待をさせるのです。