空白の日本史 (扶桑社新書)

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594083687

作品紹介・あらすじ

その時、実際には何があったのか?
歴史の「穴」を検証する!
建前ではなく、本質がスッキリわかる!

・日本の天皇は、なぜ「キング」ではなく「エンペラー」なのか
・実は3セットある「三種の神器」の矛盾点
・「神仏分離」の誤認が「廃仏毀釈」へと発展
・なぜ、鎌倉時代に貨幣経済が日本で発達したのか
・「崇」「徳」……無念な最期を遂げた天皇に贈られた名前
・日本で軍事史の研究がタブー視されている理由
・「承久の乱の幕府軍は十九万人」が誤りである歴史人口学的な理由
・『吾妻鏡』に記されなかった源頼朝と上総介広常の死
・「色好み」として知られた和泉式部の奔放な恋愛模様
・資料がウソをつくことはあるのか―― 千利休がお金の無心!?
・なぜ光圀は、徳川家でありながら「勤皇思想」に傾いたのか…

【目次】
第1章 神話の世界 ――科学的歴史の空白――
第2章「三種の神器」のナゾ ――祈りの空白――
第3章 民衆はどこにいるか ――文字史料の空白――
第4章 外交を再考する ――国家間交流の空白――
第5章 戦いをマジメに科学する ――軍事史の空白――
第6章 歴史学の帰納と演繹 ――文献資料の空白――
第7章 日本史の恋愛事情 ――女性史の空白――
第8章 資料がウソをつく ――真相の空白――
第9章 先達への本当の敬意 ――研究史の空白――

【著者紹介】
本郷和人(ほんごう かずと)
1960年、東京都生まれ。
東京大学史料編纂所教授。
専門は、日本中世政治史、古文書学。『大日本史料 第五編』の編纂を担当。
著書に『日本史のツボ』『承久の乱』(文春新書)、『軍事の日本史』(朝日新書)、『乱と変の日本史』(祥伝社新書)、『考える日本史』(河出新書)。監修に『東大教授がおしえる やばい日本史』(ダイヤモンド社)など多数。

感想・レビュー・書評

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  • これまで当たり前の常識として捉えられてきた日本史の中に潜む「歴史的空白」に焦点を当て、歴史上の文献資料のいくつもの「空白」を紐解くことで、新たな「日本」という国の歴史像を浮かび上がらせ、いままでの「常識」が、まったく当たり前ではなくなる、そんな歴史の「穴」を検証した入門書。 飛鳥時代に持統天皇が伊勢神宮を参拝した後、再び明治天皇が公式に伊勢神宮への参拝を開始するまでの約千年の空白、「三種の神器」の矛盾点、「神仏分離」の誤認と「廃仏毀釈」、『吾妻鑑』に記されなかった源頼朝と上総介広常の死など・・・。

  • 歴史の見方というか、視点が広がった気がした。
    面白かったのは、三種の神器が実は複数セット存在するという点。
    深く考えたことなかったけれど、言われてみれば……という。
    そう、まさに「深く考えたことなかったけど、落ち着いて考えてみれば」なネタが多かった気がする。
    常識だと思っていた歴史観を改めたい方は是非。

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1章 神話の世界ー科学的歴史の空白/第2章 「三種の神器」のナゾー祈りの空白/第3章 民衆はどこにいるかー文字史料の空白/第4章 外交を再考するー国家間交流の空白/第5章 戦いをマジメに科学するー軍事史の空白/第6章 歴史学の帰納と演繹ー文献資料の空白/第7章 日本史の恋愛事情ー女性史の空白/第8章 資料がウソをつくー真相の空白/第9章 先達への本当の敬意ー研究史の空白

  • 資料や文献に残されない歴史とどう向き合うかという、歴史学者としての本郷先生の考え方が綴られている。

  • 天皇は1000年伊勢神宮に行かなかった、たしかに!

    何事も常識を疑ってみることで、今膠着している問題が解決できるかな?と思いました。

    でも、伊勢神宮は大切な重要な場所!

  • いつものように本郷和人先生の歴史知識がアップデートされていないにもかかわらず諸説暴論を吐き散らかす一冊だと思っていた(実際そうでした)
    知り得た一つの妄言パターンとして、古い通説に対して本郷先生の考える「普通こうだよね」という異物を撒いておき、色々と書いている
    もう一つ気が付いた点は皇室にたいして畏敬の念を持ち合わせぬ危険人物だと分かる
    「女性史の空白」にて性のありようから万世一系なんてホントかよとクサし、管野スガの恋人幸徳秋水の考えとして代弁させているが「北朝は偽物だから殺して良い」と大逆事件に託けて皇室への不敬を本書では繰り返し記述している

    本郷和人の正体を見た(´・ω・`)妄想

  • 文献歴史の空白をどう埋めるか何で埋めるか

  • 歴史上のいろんな空白に着目して書かれているところが、この本の面白いところ。歴史の授業じゃ空白なんて感じもしないから、読んでいてわくわくする。

    ---
    p31
    毛越寺の名前の説、すごい納得した。
    なるほど。越の国は大王(継体天皇)を出した国、毛の国は垂仁天皇の兄を祖に持つ一族の国。越前は平安時代には渤海の使者を受け入れる施設があったし。上野も下野も石高はいいし(道鏡の流刑地になるくらいには僻地でしたけども、大きなお寺があったりしたので…)。
    ほおお。

    p68
    実は3セットある…
    確かに、この点はいろいろと謎。太平記とか重要ポイントなのに「あれ?!」が必ず来る。ずっと謎。
    数えると3セットって…さて、真相はどうなんでしょうね。お上の周りだけは存じ上げているのかもしれないミステリ。

    p128
    なぜ日本の歴史は穏やかなのか
    ……穏やかなのか?一族郎党皆殺しは、たしかにあまりないのかもしれないけれど。あまり考えたことがなかったな。と思って読んでいたら、穏やかだったんだ…となった。海に隔てられているからだけじゃない理由があった。
    食物自給力と人口にはたぶん相関があるから、食べられる分しかヒトが増えなかったと言い換えられるのでは?とは思ったのだけれど…どうなんだろ。

    p188
    世界で一番豊かな歴史資料が…
    そうなの?他国を知らないからなんとも思ったことなかった。江戸まで下れば識字率が世界トップクラスというのは読んだことあるけど。話題にしてるの鎌倉だもんね…
    それでも抜けがある。いつか紐解かれるといいな、と思う歴史ミステリ。知らないだけで多いんだろうな。

  • 日本人がなんとなく覚えている逸話や定説が覆されたり補強されたりとなかなか読んでいて面白かったです。

  • 令和2年コロナ騒動がやってくる前の2月頃に読み終わった本ですが、年末の部屋の大掃除で見つけた本です。この数年追いかけている本郷氏による本であることと、タイトルの面白さに惹かれて購入したのを覚えています。

    この本では、なぜその事件は起きたのか、納得のいく説明がなされています。一つ一つ、膨大な文献を読みこなして達成された物だと思います。多くの時間を費やした上に、わかりやすく解説してくれた内容を読める幸せを感じます。

    以下は気になったポイントです。

    ・平安時代から江戸時代にかけて歴代天皇が伊勢神宮を参拝したという記録は残っていない、飛鳥時代に持統天皇が参拝した後、再び明治天皇が公式に参拝するまで、約1000年の時間が空いている。神道には1000年近くの空白の期間が存在する(p4)

    ・日本の神話に登場する神の種類は大きく2つに分けられる、一つは、天照大神を中心とした高天原の神々「天津神」、もう一つは、出雲の大国主など天孫降臨以前から日本にいる土着の神々「国津神」(p20)

    ・天武天皇は近畿につながる道に3つの関をおいた、1)北陸道を抑えるため、福井県に置いた「愛発関」、2)東山道を抑える岐阜県の「不破関」、3)関東と近畿地方を結ぶ東海道には、三重県に「鈴鹿関」、この3つを総称して「三関」という)(p28)三関の東、という意味で「関東=関の東側で田舎で辺境の地」という言葉が使われ始めたのは700年位から、関西という言葉が使われるようになったのは、明治時代以降である。関の西側は自分たちの日本なのでわざわざ呼称する必要がなかったから(p29)

    ・陸の奥にある場所=陸奥、陸奥に隣接する「毛の国」=上野(群馬)、下野(栃木)や「越の国」=越前(福井)、越中(富山)、越後(新潟)であった。(p31)

    ・紀元前660年1月1日こそが日本建国の日となった、1回目の辛酉(かののとり)の大革命では神武天皇の即位、二回目に聖徳太子が国を作ったとして、神武天皇即位を起点とした「皇紀」が誕生した。これは太陰暦なので、太陽暦に直すと2月11日となる。明治6年(1873)を紀元節とした(p47)

    ・中世における日本では、どう考えても神道より仏教の方が優勢であった。天皇の息子=親王は宗教界に入る際には、仏教の道に進む。摂関家や貴族出身の僧侶がたくさんいた。仏教の道に入ってから、入道新王や法親王になった人物はごまんといるが、反対は誰もいない。(p65)

    ・太平記を素直に読むと、三種の神器は、北陸にある1セット、後醍醐天皇から北朝に渡された1セット、天皇が吉野に持っていった1セットの合計3セットある。北陸に渡った1セットは戦乱の中で失われてしまい不明、南朝の後亀山天皇が北朝の後小松天皇に渡したのが、もともと難聴が持っていたものか、北朝から奪ったものか不明である(p77)本当の三種の神器を持っている南朝の天皇こそが正統であるという明治政府の見解が今まで引き継がれている(p78)

    ・神と仏の両者が手を携え、国家を守る「鎮護国家」、そして天皇の健康を守る「玉体安穏」という考え方が日本では親しまれている。他には「本地垂迹」これは、日本の有名な神様と仏様を同一視するもの。例えば、天照大神は仏の姿になると真言宗の一番偉い仏様である「大日如来」、逆に大日如来が日本に姿を表すときには天照大神の姿をとると考えられた(p87)

    ・秀吉がキリスト教を嫌い弾圧に踏み切ったのも、一向宗とキリスト教の教義が非常に似たスタイルであったから。阿弥陀様とキリスト、どちらも対象は違えども頭を下げる相手は現実の天下人でないので。この思想は江戸幕府にも受け継がれる(p93)

    ・日本から宋への往路では、材木を重石にできるが、問題は帰路。重石代わりに用いられたのが、宋銭であった(p124)

    ・摂関政治では、摂政や関白になれるのは「母方の親戚」である、祖父が権力を持つこともあれば叔父や伯父が権力を持つこともある。ところが平安後期になると摂関政治に代わって登場するのが院政である。院政は母方ではなく、父方の祖父、つまり天皇の祖父である先の天皇が天皇家の家父長として力を持つという形式を取る。これは婚姻形態が代わった(婿取り婚から嫁取り婚)のとほぼ同じ時期である(p208)

    2020年12月29日作成

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著者プロフィール

1960年、東京都生まれ。1983年、東京大学文学部卒業。1988年、同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。同年、東京大学史料編纂所に入所、『大日本史料』第5編の編纂にあたる。東京大学大学院情報学環准教授を経て、東京大学史料編纂所教授。専門は中世政治史。著書に『東大教授がおしえる やばい日本史』『新・中世王権論』『壬申の乱と関ヶ原の戦い』『上皇の日本史』『承久の乱』『世襲の日本史』『権力の日本史』『空白の日本史』など。

「2020年 『日本史でたどるニッポン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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