- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784594091026
作品紹介・あらすじ
門田博光 川相昌弘 江夏豊 田尾安志 谷沢健一 広岡達朗 etc.
嫌われ、衝突し、裏切られ……それでも己を貫いたレジェンドが明かす“プロ野球界の裏側”
華々しく見えるプロ野球界においても、好成績を残したからといって必ずしもフロントやコーチ、監督になれるわけではない。サラリーマン社会と同様、擦り寄り、迎合することが球団に残る一番の近道と言われ続けている。だが、かつては理不尽な物事に対して己を貫き、正々堂々と立ち向かう選手たちがいた。
己の正義を貫くことで、疎んじられもした。監督と衝突し、チームを追われたこともあった。メディアとの対立で虚像を語られることもあった……。けれど、自分を貫いた男の元に、最後には必ず人が集まってくる。そんな、矜持を持ち続けてサムライのような生き方をしたプロ野球選手たちを徹底取材。生きづらい世の中だからこそ胸に刻むべき「漢の生き様」を深掘りする。
【収録内容】
1章 門田博光
奇才と孤独
〜稀代の豪打者が抱える“19番”への恩讐〜
2章 川相昌弘
自己犠牲とエゴイスティック
〜「長嶋茂雄に嫌われた男」と呼ばれて〜
3章 江夏豊
義理と器量
〜裏切られ続けた史上最高左腕〜
4章 田尾安志
衝突とプライド
〜天才打者が選んだ「新設球団 初代監督」の道〜
5章 谷沢健一
派閥と人徳
〜“ヤザワ”と中日ドラゴンズ〜
6章 広岡達朗
反骨と改革
〜プロ野球界に68年身を置く男の矜持〜
感想・レビュー・書評
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プロ野球ファンならずとも、掛布が衣笠が江川が…なぜ監督になれないの?と思ったことがあるはず。衣笠は鬼籍に入り、掛布と江川は待望論は根強いも今や齢67…。
なぜなれなかったのか…。それはあの事件か、借金か人格か…と理由はまことしやかに語られるも所詮噂のレベルを超えるものはない。
本書には昭和・平成のプロ野球史に輝かしい成績と戦績と記憶を残した5人が取り上げられている。門田博光・田尾安志・広岡達朗・谷沢健一・江夏豊。ちなみに監督経験は広岡・田尾。
読み了えた感想は、球団を代表するスーパースター・功労者はその球団の監督になるのが当然。とりわけ生え抜きであれば、なおさらという思いに囚われ過ぎているのではないか…。
単純になりたくないのかもしれないし、諸事情から好機を逃したケースだってある。にもかかわらず、なれない然るべき『瑕疵(かし)』を嗅ぎ回っている気がしてならない。
瑕疵は欠陥・不具合・傷を意味する。本書はその瑕疵にフォーカス。ここでいう瑕疵とは、徒党を組まず、筋を通し、忖度せず、正論を語り、信念を突き通したゆえに孤高のプレイヤーとして終える。この一徹さが監督やフロントに扱いづらいヤツという印象を与え、不遇の扱いを受けたことを意味する。
門田は毎打席ホームランを目指す打法に固執、それをからめ手を用いて阻止する野村克也、広岡は打撃の神様 川上哲治の拙い守備を、哲のカーテンの川上采配を批判、干されるも己の道を希求、不偏不党の田尾はお山の大将 星野に森に村山に楽天監督時代は三木谷氏に直言、親分肌 谷沢は派閥を作らず開放的性格を星野に嫉妬され強引に引退、江夏は村山引退後は血行障害に苛まれながらも細腕繁盛記よろしくエースとして孤塁を守るも阪神のお家騒動から南海へ。
〈出る杭は打たれるが、出過ぎた杭は打たれない〉やというが、現実は中々そんなに甘くない。ここまで書いて落合がドラゴンズナインに向けた言葉を想起。『俺は好き嫌いで起用はしない、必要かどうかで判断。ただ必ずしもそうではない。嫌われても使わざるを得ない、圧倒的な力を持った選手になれ!』
オレ流を貫いた落合だけに説得力はある。還暦間近な人間から見れば、圧倒的な力を持っていようとも〈人間には好き嫌いの感情がもたらすダブルスタンダード〉という物差しが厳然とあるんだよと付け加えたい。
監督になるのが目標ではなく、タクトを振るうことにより達成したい野望があるのなら、時に自身を曲げ、相手の懐に入ることも肝要だと思う。そう、大義成就のためには。
生来の性格もあるが、現役時代の輝かしい実績があれば、監督やコーチにならずとも、セカンドキャリアに思い悩むことなく、猟官運動に奔走する必要が無いとも言える。
元ロッテ里崎の様に、1軍コーチでさえ薄給、飲食店経営もリスキーと見なし、現役時代より引退後を想定。蓄財に精励し蓄えは十分。ゆえに野球解説やYouTubeでは遠慮会釈なく語る御仁もいる。
信念を貫けば確執は生じる。この5人は現役時代に不遇をかこったかもしれない。たが、その信念・一徹さが現役時代の輝かしい成績を生み、レジェンドとして評価されているのだから、監督になるとか、ならないかは実に取るに足りない見方だよなぁってことを教示してくれた一冊。
ひとり70頁ほどなのに1冊の伝記を読み切ったぐらいの熱量をビジバシ感じる力作。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
門田、田尾、矢沢、広岡、そして江夏。知ってるようで知らない話がごまんと出てきて、想像以上に面白い本だったな。
正しいことを、いや自分は正しいと思っていることをやっているだけのつもりが、いつしか疎まれ、争われ、巻き込まれる。野球界だけじゃ無いよなと思うけど、野球界は、特にこの5人のレベルにある選手たちは、孤独や痛みや寂しさ、怒りそういうものを一瞬でも、、全てかき消す事ができる場所を持っていたのが羨ましい。
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どうもこの手の野球物はみんな自分語りを入れなくては気が済まないのかそのあたりとても読んでてしらける部分ではあるのだが、一部ユーザーレビューで見たよりはとても面白く読めた。特にもはや球界の最高齢と言っていい広岡の語りは圧巻で、一見冷たそうな彼の中に強い情熱があっての理由があったことに感銘を受けた。
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悩みの根幹をなすのは対人関係
自分の思いが人にうまく伝わらないことに起因
生まれて生きて死んでいくだけで人生は大成功
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スジを通したプロ野球選手。人間関係ではうまく行かずワザで生きる男たちを描く。
本書に出てくる選手たち、いずれもよく言えば個性派、悪く言えば偏屈。取材対象の強烈な個性と求心力に、筆者の筆力がこれほど追いついていないノンフィクションも珍しいだろう。不思議な魅力の本。
門田博光、田尾安志、広岡達朗、谷沢健一、江夏豊。
出版前に元の球団に電撃復帰し日の目を見なかった章は巨人の桑田か?
筆者が題材を未消化なままの稀有な作品。