文学批評への招待 (放送大学教材)

  • 放送大学教育振興会
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784595318566

感想・レビュー・書評

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  • 春に唯一とったラジオ講座の教科書。
    ようやく落ち着いてとりかかったものの、難しい。
    第1回は読書感想文と文学批評はどう違うのか、から始まった。
    とりあえずテキストを片手に何回か聞かないと分からないかも・・。

    目からウロコがぽろぽろ落ちそうな感覚の本だった。

    頑張ろう。

  • 2021/2/2

    文学は多義性が認められるのであればどう解釈してもいいのか?という疑問をここ最近自分に投げかけていたが、明確な答えが出ず。本書はそんな疑問をズバッと回答してくれて、それだけでも読む価値はあった。(以下メモのコナン・ドイルの箇所参照)

    解釈の多義性があることが文学の本質的特徴であると分かれば、じゃあ文学批評(映画含め)はどういうプロセスで行うのか? 何冊か文学理論の本を読んだが、この痒い所にある疑問に対しても具体的にレクチャーしてくれる。

    詩についてのパートも見事。実例に即しながら詩を読むことをどう豊穣な体験に昇華させていくかを具に追体験させてくれる。

    最後に、ブクログを感想ではなく批評するツールとして扱うには少し骨が折れるが、まずは自分の視点を入れることは意識してみようと思う。



    以下メモ

    ーーーーーーーーーーーー

    感想ではなく、自分の視点。

    古典は時代が変わっても新しいコンテクストのなかで、新たな解釈とともに読まれつづけ演じられつづけていくことを可能とする多くの潜在的意味をもっている

    文学批評はどう感動したかからがスタートであり、目標はあくまで多義的な解釈が許されるテクストからどういう解釈を、どういう意味を自分が作り出したかを述べること。
    作品から意味を切り離し、自分なりの解釈を創出。
    → 作品をどういう観点から、どのようなコンテクストのなかで、どのような主題を持つものと解釈すれば、自分にとって意味のある、あるいは面白い作品になるかをじっくり考える!

    批評は物語、登場人物、語りの三大要素から行う。自分の解釈にとって重要なディテールを選択して引用し、論理的に説明。

    詩は意味に到達しないこと、意味に近づいた途端に離れていく。一定の意味に安住できないから詩はどこまでも開かれた豊かな経験をもたらす → シニフィアンがシニフィエを後退させる

    詩 文字の形や音、連なり方、一つ一つの語彙の位置と相互関係、行全体の形、紙面との関係、同時代状況など何層にも解釈ができる

    バフチン 小説は多様な要素を抱え矛盾に満ちた言葉の混成物であるからこそ活性化。多声性。

    小説はテクストに長い時間を経た後にもなお展開していく能力、つまりたえず新たな解釈を呼び覚ます生命体とも言える。
    ドンキホーテは喜劇と悲劇、狂気と理性、愚かさと叡智が入れ替わるダイナミックな可能性 → 単純な批評はかわされる

    写真や映画はミメーシスへの欲求を科学技術によって人類史上かつてないやり方で満たした 自然本性

    映画は文学の強力な翻訳装置

    観察で発見した多数の事実から推理を通して理論を創造し、それを新たに発見した事実で検証し、最終的な理論を構築。
    コナン・ドイルのこの一節は文学にも応用でき、
    事実を発見しつつ読む→その事実を批判的に読むことで事実間の論理を見出し、全ての事実が論理的連続性を持つような仮説を形成→間テクストを意識し、類似性を持った他作品についての批判的知識を参照→事実と仮説を往還したながら仮説検証、最終的な理論構築へ。→ 仮説が多数残れば多義性を認める。

    この多義性こそ文学の本質的特徴!

    読解力と表現力、論理的能力を養うためにはできるだけ多くの文学作品を読む、見る一方で、一つの作品を選びその全体の印象を踏まえて自分なりの主題を見つける。そして主題に関連するディテールを選び、批判的に読解しながら自分の解釈の妥当性を論証する。
    映画を観た後に感想を言い合うのもいいが、感情による全体の印象ではなく、その背後に論理的連続性の連鎖を発見、創出していく力が必要。
    → SE7EN で行った解釈が作品全体で根拠があるか、そして反証がないか、などをこれからも実践していけばいい

    【ジェネット】
    休止、情景、要約、省略。バルザックは休止を最大限活用。情景と情景の間を要約が繋ぐことが小説の基本語り
    ある人物を通した内的焦点化は別の人物に対する外的焦点化となる。これは物語にとっては大きな制約になる。
    外的焦点化は対象人物に謎めいた性格を与える。
    焦点化ゼロは全知の語り手
    漱石は写生文を書く時に物語の筋は重要性を持ち得ないことから一人称視点を貫いた。吾輩は猫である

    邦題に違和感があれば原語の多義性を疑う

    二人称小説 ミシェル・リュトール『心変わり』一人称と三人称のメリットを兼ね備える

    ナラトロジーは作家の工夫を汲み取るツール

    【精神分析批評】
    フロイト 心の解明は語りの問題を回避できない→文学と心理学
    細部を分析すること

    【マルクス主義批評】
    1.上部構造/下部構造論 2.唯物論的弁証法に基づく階級闘争論 3.イデオロギー論

    【フェミニズム批評】
    女性は無性欲で天使と妖怪という通念

    ガイノクリティシズム
    男性作家の中の女性表象を批判するものと、1.女性作家の中に抑圧された女性経験を炙り出す 2.新たな文化史構築がある

    【ポストコロニアル批評】
    1930年の時点で地表の84.6%が西洋諸国の支配下
    ポストは「後の」よりは「乗り越え」.

  • 反還元主義の立場を持つ批評

    ヴィクトル・シクロフスキーの異化作用
    =読みきれず、引っ掛かりがある

    詩的言語のテクスト=signifiéの無限後退

    ヴァルター・ベンヤミンの物語作者
    長編は物語の衰退によるもの

    カフカの完成時の朗読と出版後のギャップ

    【精神分析批評】
    構造主義
    構造(体系)が主体に先立ち、主体のあり方を決定する
    ポー『盗まれた手紙』
    三つの視線の反復、それへの手紙の移動
    手紙=不在のペニス=女性の去勢

    イワン・レルモリエフ(モルレリという伊人医者)

    カルロ・ギンズブルグ「徴候 推論的パラダイムの根源」
    フレデリック・ジェイムソン『政治的無意識』

    『ハムレット』の書き換え
    歴史的現在の劇への侵入
    不完全性や自律性は解釈可能な余地を広げる
    カール・シュミット『ハムレットもしくはヘカベ』
    「人間の頭脳が創作したのではない、むしろ外から与えられ、降りかかり、そこにある、覆すことのできない現実」の力によって、歴史的現実は一個の神話へと変貌をとげる

    【マルクス主義批評】
    ケトル
    ・上部構造superstructure/土台base論
    ・唯物論的弁証法に基づく階級闘争論
    ・イデオロギー論

    主体=臣下subject

    【フェミニズム批評】
    女性表象

    1970
    家父長制的イデオロギーの表現

    男性作家の作品 アンドロテクスト
    女性      ガイノテクスト
    1980
    ガイノcriticism

    安静療法 ミッチェル『脂肪と血液』

    →構築主義的

    【ポストコロニアル批評】
    neo colonialism

    エドワード・W・サイード
    『オリエンタリズム』『文化と帝国主義』

    表象represent 代表・代弁/(再)表現・再提示

    植民地言説分析

    1980
    identity politics / multi culturarism

    ガヤトリ・スピヴァク『ある学問の死』『グローバリゼーション時代における美的教育』
    キラン・デザイ『喪失の遺産』

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著者プロフィール

丹治愛(たんじ あい)
1953年生まれ。東京大学名誉教授。法政大学文学部教授。
東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。
著書に『モダニズムの詩学─解体と創造』(みすず書房、1994)、
『ドラキュラの世紀末─ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究』(東京大学出版会、1997)、
『文学批評への招待』(放送大学教育振興会、2018、共著)。
翻訳にヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』(集英社文庫、2007)。

「2020年 『二〇世紀「英国」小説の展開』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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