- Amazon.co.jp ・本 (680ページ)
- / ISBN・EAN: 9784596541444
感想・レビュー・書評
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J・D・バーカー『猿の罰』ハーパーBOOKS。
待ちに待った続殺人鬼『四猿(4MK)』三部作の完結編。『見ざる、聞かざる、言わざる』に加え、『悪をなさざる』で『四猿』ということか。恐ろしい過去と『四猿』の仕掛ける壮大な復讐……前の二作はほんの触りに過ぎなかったかのような衝撃のラスト。
前作の衝撃のラストからの続きが描かれる。連続殺人鬼『四猿』の狡猾な罠に嵌まり、窮地に陥るサム・ポーター刑事。『四猿』の正体が実はサム・ポーターだという情報に翻弄される警察。
加速度を増す『四猿』の犯行とおぼしき殺人事件。そして、何故か『四猿』ことアンソン・ビショップが警察に出頭するという急展開。全ての疑惑がサム・ポーターに向けられ、窮地に立たされるサムは……
日光の『見ざる、聞かざる、言わざる』に準え、被害者の耳、眼、舌を切り取り、家族に送り付け、最後には殺害するという残酷な犯行を繰り返す連続殺人鬼『四猿』の目的は……
本体価格1,191円
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シリーズ最終巻。楽しみにしてた。が、もはや、誰が主人公か、何を信じれば良いか、自身の胸の内で七転八倒。真実の犯人探しもだが、ストーリーを追うのも疑いながらで、えーっ?と何度声を上げたのが数え切れないほど。長いけど場面の切り替わりが早いから読み易い。
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これまで図書館で借りてきてましたが、待ちきれず発売日に購入、一気読みを我慢しつつ味わって読みました。いやはや、壮大な事件になったものです。もはや、なんでもあり状態。あまりの展開に引く部分もあったほど。ポーターが全く違う人物に見えてくるところはうまいな、と思いました。そういう作品はなかなかありません。ただ、これでもかというくらい遺体が出てくるので、これは薄味になるのでは、と気になりました。前2作が大人しく思えるほどです。それでも、ラストシーンは素晴らしく、情景を目に浮かべながら本を閉じました。なんとも言えない、不思議な感情に包まれ消えません。このストーリーは完結しましたが、また次の作品を読みたい、早く没入したい、という気持ちでいます。
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購入済み。
2022.04.06.読了。
すごくおもしろかった。
第一部悪の猿→第二部嗤う猿→第三部猿の罰
四猿三部作の完結編
悪の猿を何年か前に読んで、めちゃくちゃおもしろかったのを覚えている。
この作家はおもしろい!フォローしよう!と思っていたのに、知らない間に文庫の続編が出ていた(汗)
ので早速購入。早速読了。
作者の謝辞にもあったが、この物語が完結してしまったことがどうにも寂しい。
翻訳モノのミステリー、傑作、で検索してもこの作品はヒットしない。どうして?と不思議でしょうがない。オススメなのに。。。
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終わってしまった、なんか切なく
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四猿シリーズ3作目にして完結編。
厚い本だが、その分十分に楽しめる。
最終巻として相応しいエンディングだった。
できれば、長期の休みにまとめて一気に読みたかった。
(でも3冊とも厚いので少し休憩日が必要か。)
この作品は1作目からストリートが続いているので、ぜひ1作目から読む事をお勧めする。
1作目から主人公だった刑事のサム・ポーター、
また前作でも活躍したFBI特別捜査官フランク・プールも引き続いて登場する。
四猿殺人鬼、4MKのアンソン・ビショップの本当の目的は何なのか?
果たしてサム・ポーターは一連の事件に関わっていたのか?
子供時代の日記が今回も物語の重要なキーとなり、
現代、過去と時代が交錯し、複数の登場人物の視点によりストーリーが展開していく。
今までシリーズを読んできた分、ドンドンと明かされる事実に圧倒される。
(この人が、こういう関わりを!)
サム・ポーターの自分自身への疑念、アンソン・ビショップの犯行目的の疑念、他のサムの同僚刑事達のサムへの疑念と疑いが積み上げられていく。
それらを引っ張っていき、最後物語りが終わったと思って(でも少しモヤモヤしていると)、最後の最後に衝撃の真実が明かされる。
エンディングも衝撃的で、余韻を残して良かった。
シリーズ全体を通して人が死に過ぎるし、残酷なシーンも多かった。
アメリカの闇の部分を物語の中心にして、作者の連続殺人犯は環境等によって創り出されるのか、それとも元来持っていたものによって成るのか、という重いテーマを見事に物語として完成させ、かつエンターテイメントにしていた。
正義とは何だろうかと、読了後改めて考える作品だった。
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Speechless. 言葉もないよ…といいつつ語るが、3部作堂々の完結、緻密に張り巡らされた虚々実々の物語を、あらゆるミスリードと伏線に足をとられつつ、ラストにたどり着いてみれば驚愕の地平…いや水平線かな…呆然と眺めたよ。こんな広がった話をどうたたむのと思っていたが、力技ではなく、本当に丁寧にカチリカチリとパズルがはまり、あたかもピタゴラスイッチ…いや、何の話だ。
これ、1作目で読みやめるならそれでよし。その先行くなら3部作一気読みに限るね。
極上のミステリーであり、また善と悪はどこでどう分かれるのかを考えさせられる読書体験。どちらにも、誰にも大切な人があり、奪われれば復讐せずにいられないし、些細なできごとや誤解で属する側は変わるのだ。
翻弄されながら自分を信じ続ける主人公に乾杯。せつなきアンソンにも。
ところで1作目の感想で、ビショップをハニバル・ザ・カニバルに例えたけれど、今作の終盤では意外な人がレクター博士ジョークの対象にされててニヤリ。
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「四猿」三部作最終巻。また死体がいくつも現れる。刑事ポーターがまさか真犯人なのかと疑わせる状況に。そして怒涛の展開。話がややこし過ぎてうまく説明できないけれど、興奮、面白かった。
※以下ネタバレ
ポーターが聞いた自白は、ポーター自身の記憶喪失が疑われ、裁判でビショップは無罪になる。犯罪はビショップがいた施設の子供たちが人身売買に関わった者たちへの復讐だった。施設の子供たちやビショップの父母は死んだと見せかけられていた。ラストでどうやら全てを知ったポーターはビショップを殺したようだ。 -
『悪の猿』『嗤う猿』に続くノンストップ・スリラーの三部作完結編。三作でワンセットの巨大なストーリーとなっているため、一作目から読んで来ずにいきなり本書を手に取ってしまうと大変なことになる。要は続き物なので、ここから読んでも何のことやら何もわからないだろう。そのことを最初に断っておきます。注意書き付き作品。
前作で、主役のサム・ポーターに対し、新たなFBIの捜査官フランク・プールという第二の主人公的存在が登場。複数主人公型の物語へと変化したのだが、本書ではポーターを主軸とした描写は激減する。それどころかポーターが疑われるべき側に徐々に変化してゆく、という逆転の発想がストーリーに盛り込まれてゆくのだ。善悪が鏡のように向かい合わせになって進行する迷宮ストーリー。
さらに、メインストーリーの影となって、重要な秘密と過去の恐るべき犯罪を語ってきた日記は、その後も劇的な展開を迎え、本書では新たな秘密を語り継いでゆく。殺人者の真実。被害者たちの真実。また日記自体の真偽が問われるばかりか、日記そのものが大掛かりな事件全体の仕掛けではないかとまで疑われる怪しい存在となる。
現在と過去、捜査側と犯罪者側、罠のまた罠。そうした重層構造が、作品を紡ぐ最も大きなトリックであるかに思える。
短い断章を積み重ね、猫の目のように視点を次々と変えて、動きを止めないジェットコースター・ノヴェル。その性格は三作目にしてさらに加速する。ページの厚さが気にならない疾走感に身を委ね、この世の悪との、めうるめく知と知の闘いに身を任せよう。そんなウルトラ・エンターテインメント掉尾を飾る一冊が本書である。
ラストの作者あとがきを読んで、闇の人身売買サイトが実在していたことを知った。作者の眼のつけどころ、下調べは、この疾走ストーリーに重さを与えるものだが、社会の歪みや悪が人間をどのように変えてしまうのか、という恐怖は最後の最後まで残る。特に失われた子供たちの時間と、歪められる価値観、などの極めて人間的な問題はラストページまで持ち込まれる。
仕掛けだらけのストーリーの奥にある人間の正義の問題はこの三部作にとって極めて重要でありながら、妙に余韻を残す。一作目の一ページ目から是非味わって頂き、どうにかここに辿り着いて頂きたい。何よりも一気読みがおすすめ、そしてネタばらし厳禁です。 -
「生理食塩水を点滴してもらうといい。脱水症状を起こしている」 (119頁)
脱水小説というジャンルがあるなら、これはまさにそれだ。頭がふつふつたぎってしまう。
ページをめくる手を、努力してでも止めて、グラスに手を伸ばすのだ。
『悪の猿』『嗤う猿』ときて、3巻目、〈四猿〉シリーズの最終刊である。
(この時点で数字に戸惑ったなら、水を飲もう。)
待ち兼ねた3巻を目の前にして、1巻から読み返したほうがいいだろうとは思った。
けれども、2巻のはじめに、1巻の話をあっさり説明してくれていたので、3巻にもそういう一文がありはしないかと期待して、すぐさま3巻に突入した。
問題はなかった。
これまでのあらすじがあったからではなく、読み返していようがどうだろうが、大混乱の渦中にあって、話の中にいる彼らも、読んでいる私も、なにがどうやらさっぱり解らず、ぐるぐる振り回されながら、次々に起こる事件の捜査に邁進するしかなかったのである。
『悪の猿』『嗤う猿』と読んできて、彼らがどんな人物なのか、知っているつもりだった。
なのに、読み進むうちにその自信が失われていく。
誰を信用していいかわからない、足下がぐらりと揺らぐようだ。
傾ぐ世界をひたすらページをめくって駆け抜けていく、そんな読書体験だった。
『悪の猿』は一応完結している。
『嗤う猿』でその裏が説かれ、事件が終わっていないことを知る。
『猿の罰』はその『嗤う猿』の直後から始まる。
そして、この『猿の罰』は、作者が完結と言い、出版社も完結というのだから、そうなのだろう。
たしかに〈四猿〉シリーズ完結編だ。
傾ぐ世界を駆け抜けて、幸いひと息つけはしたが、まだ渦中に気持ちが残っている。
呼吸が整ったら、3巻すべてを読み返すだろう。
そのときはもう少し落ち着いて、せいぜい早足くらいで読めたらいいなと願っている。
「ごらん。皮膚にしわがよったまますぐに戻らないだろう? 弾力性がなくなっているんだ。脱水症状のひとつだよ」 (119頁)