死者の雨 下 (ハーパーBOOKS)

  • ハーパーコリンズ・ ジャパン
3.65
  • (4)
  • (12)
  • (8)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 74
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596550712

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  前作はピレネー山脈との国境の街を風雪の季節を背景に描いたものだが、本書ではトゥールーズの近くの架空の町マルサックを背景にし、全編よく降る雨の季節と、前作とは雰囲気を変えている。タイトルとは全く無関係な邦題が選ばれたのも、本書中で絶え間ないほどに降り続く雨と、その奥で起こった犯罪の姿を想起させるべく、訳者と版元とで決められたものに違いない。

     原題はフランス語で「ル・セルクル」、英語に直せば『ザ・サークル』で、作中、いつこのタイトルが姿を現わすのかとやきもきさせられるが、読み進むにつれ、そのタイトルの意味は明らかになる。全作同様に過去に何が起きたのか? が現在何が起こっているのか? という疑問への回答となる、全作の写し絵のような細工の施された大作である。

     前作に比べると劇的とまではゆかない進行度合いだが、途中から例によって加速するのと、ミスリードを幾重にも招いてゆく騙し絵のような迷路構造は、この作家のどうやら本懐とするところらしいから、疾走感を思わせる面白さには十分期待して頂いて構わないだろう。

     前作に増して、弱点いっぱいだがどうにも憎めない主人公マルタン・セルヴァス警部は、その個性をしっかりと出し続ける。主役に負けず劣らずの周囲の個性ある捜査スタッフたちに助けられ、パンクな娘マルゴとの距離感もつかず離れずの微妙な親子関係で味わいを持たせたまま。

     前作に比べ、さらに猫の目のように移り替わる視点により、後半はより読書が加速すること請け合い。最近感心させられたJ・D・バーカーの猿三部作シリーズなどと共通のジェット・コースター性はほぼ全作において保つ作家である。そのストーリーテリングに、文学性趣味も加わって、不器用で痛い思いばかりしてしまう主人公ともども、ますますシリーズ加速化が期待される。

     前作でその生死の謎が期待されるハンニバル・レクターなみの例の人物が本書ではどのように関わってくるのか、も無論かなりの読みどころになっており、ラストのどんでん返しの連続はやはりプロットの妙、そしてなぜこの作家が現代フレンチ・ミステリーの代表格にのし上がっているのかが、理解できると思う。

     現在、四作目の邦訳が待たれる作家としてぼくは相当注目しています。

  • 非常にのろく、伏線が多く、読む人によってはイライラする書き方なのかな?自分はどうもね、作者の、主人公の、世の中に対する物事の捉え方や自身の身の置き方に共感するものがあって、心地よく読め長さも感じなかった。
    後書きなど読む前に作者を女性と思い込んでいたが、男性だった。こういう刑事物は無駄に疲れるかとても入りこめるか、いずれにしても、読んだ後は内容はスッパリ忘れてしまいがちだが、なんかこの作者は自分が読者に求めている何かを持っている気がして、後々印象に残る気がする。このシリーズでもいいが、別の作品が楽しみだ。

  • 色々詰め込みすぎかなー。化ける可能性は大きいかと。
    (QOTSAは好きやからでてきて嬉しかった。)

  • ベルナール・ミニエ『死者の雨 下』ハーパーBOOKS。

    下巻。興味は警部セルヴァズと逃亡中の連続殺人鬼ハルトマンとの対決にあったのだが…上巻での期待は下巻で一気に奈落の底へ。

    セルヴァズの必死の捜査が描かれるが、なかなか真相は見えず、兎に角やきもきする展開が続く。そして、女性教師殺害事件は意外な展開を見せるが、最終的には普通と言うか、無難なところで決着させたようだ。

    連続殺人鬼ハルトマンは本編には直接関わらず、シリーズはまだ続くのだということを確信した。

  • 完成度低い

  • 醜女の深情け、という古い言い回しがぴったりする事件の裏の真相。仇敵となるはずだった殺人鬼がまさかの…。

  • 1作目がけっこう面白かった印象があったので、期待して読み始めたんだけど・・・。
    主人公、こんなにグダグダだったっけ?と思った。いや、確かに切れ者ではなかったのだけど(苦笑)今回ちょっとハマらなかったな。
    あと、事件どうこうというか・・・昔の恋人に引きずられすぎでしょ。うまいこと利用されてるんだろうな~って思ってたら案の定。
    ただ、例の人物に捕らえられてしまったのは、何というか、複雑な心境になったけれども。
    この先、ヤツがどう動くのか。
    気になるので次作に期待したい。

  • 前作を酷評したにも関わらず、直後に2作目を読んでしまった。諸々と確かに酷かったんだけど、1作目という事を考慮すると、この先化けるポテンシャルは充分あると思ったのだが結果は…
    なかなかの良作だった!

    前作の感想でも記したけれど、思いつきか!と疑う程の結末の尻切れ感はかなり影を潜め、伏線の回収も全てとは言えないまでも納得出来た。その上で物語自体は面白かった。

    中でも印象的だったのは、事件の起源となる事故のシーンの描写が実に不気味だったこと。
    湖の水中から覗く一つ目の怪物…絵が浮かびとても哀しく、とても恐ろしかった。

    あとは主人公のキレものなのになんだか頼りにならない感じも少しだけクセになる(笑)。

    ただ、
    相変わらず長い。
    ダラダラとした印象は無いけれど、前作ほどでないにしろ無駄だと思われる伏線が多く、面白くはあるのだが、率直に言って未だ上下で千頁を費やす程の面白さではない。
    作者は自身の思想や嗜好を作中に登場人物の心や口を借りて喧伝しているのだが、消費社会への警鐘やズブズブの仏与野党関係とか、個人的に興味は唆られるが、多岐に渡り過ぎに思える。
    影のテーマは1作品にひとつではどうだろう。

    前にも書いた覚えがある事だが、映画の編集作業において、監督は全体のまとまりの為に不必要なカットを仮に気に入っていたとしても泣く泣くバッサリ切るらしい。作者にも今後そういう手法を期待したい。

    但、この方の最新作は一冊に集約されており、きっとより洗練されている事を楽しみに、これより3作目を読み進める。

    って、このコメ欄も長いなぁ(笑)。

  • セルヴィズ警部シリーズの二作目。一作目は未読だが必要な情報はちゃんと書かれているから、問題なく読むことができる。壮絶な過去のため常に哀しみと怒りを心の底に抱えている主人公セルヴィズは、公平で有能、頭が切れるし信頼できる部下もいる。
    エリートばかりが通う名門高校の女教師が変死体てわ見つかった事件を担当する。容疑者は生徒でかつてセルヴィズが最も愛した女性の息子だった。

  • 長い。まどろっこしい。前作ほどの面白さは感じなかった。主人公とチームを組む二人は好きなのに。

全10件中 1 - 10件を表示

ベルナール・ミニエの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×