- Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620105512
作品紹介・あらすじ
この国はいちど滅びるのだ-長文の遺書を残し、陸軍大将・蒲生憲之が自決を遂げたその日、時の扉は開かれた。雪の降りしきる帝都へ、軍靴の音が響く二・二六事件のただなかへ、ひそかに降り立った時間旅行者。なぜ彼は"この場所"へ現れたのか。歴史を変えることはできるのか。戦争への道を転がり始めた"運命の4日間"を舞台に展開する、極上の宮部ミステリー。
感想・レビュー・書評
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人生のベスト10に入る。また読みたい。
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超大作。長い。それでも飽きない。
タイムスリップものは、基本的にあまり好きではないのだけど。
面白かった。
ドラマ「テセウスの船」も、なんとなく見てしまったし。
タイムスリップづいてる春でした。 -
終盤は圧巻だった。
良かった。
主人公の孝史と同じくらい知識のない時代の事件。
あの時代を自分なりの矜持で生きた人たちの思いをミステリを通じて教えられた時間だった。
未来を歴史を知っているからこその思い、歯がゆさ。
各自が選んだ道、平田さんの旅行者として成し遂げた人生、今を生きる大切さ。
全てが心に響く終盤は圧巻。
自分だったら?という問いと言葉にするのが難しい思いが心をめぐる。
記憶をしっかり閉じ込め鍵をかけたようなラストシーンも印象的。
自分まで静かに心に閉じ込めたくなるほどの思いに駆られた。
また再読したい作品。 -
2.26事件は向こうの方で起こっているだけで直接関わらず
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長くかかって読みました!二二六事件の頃の日本の息苦しさ、その中で生きる庶民の息遣い。大作やった。
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二・二六事件。昭和。平成。
受験。浪人。予備校。東京。赤坂。高崎。
タイムスリップ。SF。歴史。
テレビで二・二六事件の番組を見て、読み返したくなった。
いま読むと東京の場所や建物がピンとくる。
あの頃はどう読んでいたんだろう。 -
宮部みゆき全一冊を読んで、読みとばしていた宮部作品のうちこれならというもの(ゲームっぽいのは無理)
を読み始めた。手始めにこれ。
何で読まなかったか…というのが、読み始めれば思い出せるのだが、これもそうで、やばっ!こっち系の宮部作品だったか…と落胆しかけたが、そこは、宮部みゆきだから粘っていると、面白くなって、一気に読んだ…。 -
うっうっ…、泣いてしまった。どういうわけかふとその気になって、すごーく久しぶりに(二十年ぶり?)再読。鮮烈に覚えているある場面があって、それがラストシーンだと思いこんでいたが、違っていた。本当のラストはすっかり忘れていたのだけど、今回読んだら、もうね、その切ないことと言ったらまあ、涙がぶわーっと出た。著者のSF的設定の作品をすべて読んでいるわけではないけれど、やはり最高傑作ではなかろうか。
子どもの頃テレビで見た「タイムトラベラー」以来、タイムトラベルものが大好物で、このジャンルには実に傑作が多いと思う。特に「過去に戻って、すでに起きたことを変えられるか」という問については、いろいろ理屈もあるが、考えるだけで刺激的で、よく練られた小説はどれも面白い。「鮮烈に覚えているある場面」というのはこのタイムトラベルに関わるもので、非常に映像的、かつショッキング。読みながら、あ、ここで出てくる!とわかっていたのに、それでも衝撃的なのだった。
タイムトラベルして過去を変えてしまったら、当然いろいろ矛盾や不都合が生じる。それをどう処理してあるかというのがSFとしての大きな読みどころなのだが、著者は、そういうジャンルSF的理屈にはあまり踏み込まない。「過去に戻って歴史を変えようとしても、大きな流れは変わらない」というのがここでの基本スタンスだ。
しかし、「大きな流れ」は変わらずとも、その時代に生きる一人一人にとっては、たった一度の人生、誰もが明日起きることを知らず、運命に翻弄されながら生きていく。作者の描き方は(いつもながら)そうしたごく当たり前の人たちに寄りそうもので、そこが何と言ってもすばらしい。
主人公の青年孝史は、タイムトラベル能力を持つ平田という男によって炎上するホテルから救われ、過去へ行く。この平田が、自らの能力を封印して生きる理由を述べたくだりが心に残る。
「私は人間になれる。まがい物の神ではなく、ごく当たり前の人間に。歴史の意図も知らず、流れのなかで、先も見えないままただ懸命に生きる人間に」「それがどんなに尊いことであるか知りもしないまま、普通の勇気を持って歴史のなかを泳いでいく人間に」
宮部作品には、こういう「超能力を持ったがゆえの苦悩」がよく登場するが(あ、最近はあまり読んでないけど、以前はそうだった)、それを共感たっぷりに描くところがすごいといつも思う。
主人公の青年孝史が、思いがけず時間をさかのぼって投げ込まれるのは、二・二六事件のさなかにあるお屋敷だ。終わり近く、クーデター鎮圧部隊を見物する人々を見ていた孝史は、突然強い思いがこみ上げて叫び出しそうになる。
「あなたたちは死んでしまう。ほとんどの人が死んでしまう。生き残る人も、それはどれほどの辛い道であることか。これから何が起こるのか、あなたたちは何も知らない」
「これは終わりの始まりなのだ。それなのにどうして、あなたたちは笑う?どうして誰も怒らない?誰も恐れない?どうして誰も立ち上がろうとしないのだ。これは間違っていると。我々は死にたくないと。なぜ止めないんだ」
今読むと、このくだりは胸に突き刺さる。今から数十年後の未来からやって来た人も、私たちにこう叫ぶのではないか。そう思えてならなかった。
ラストで孝史はある人と会う。この場面の切なさは他の名作同様、タイムトラベルに特有のもので、しみじみとした感慨を覚えずにはいられない。孝史が思いを寄せたふきちゃんは、本当に可愛いお祖母さんだったんだろうな。
以前読んだときよりずっと心にしみたのは、蒲生邸のボンボン貴之と珠子お嬢さん。上流階級の甘ったれた子女であった二人だが、貴之は未来を知りながら「臆病者としてこの時代を生き抜く」と覚悟を決め、そのように生きた。暗い目をしていた珠子が堂々たる人生を生きたことを孝史が知る場面では、孝史と共に笑いたくなってしまった。こういう救いがあるところが宮部みゆきだなあ。 -
「事件」とあったから
勝手に殺人事件のミステリーだと思ったよ
まさかのタイムトラベラー
孝史が「ちゃんと生きたい」って思うくらい成長したのは
すごいことだし、安心した
もともと素養があったのだと思う -
すべてを振り返り,知るために読む本