散る。アウト

著者 :
  • 毎日新聞出版
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620106892

感想・レビュー・書評

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  • 先物取引に手を出して借金まみれになり離婚、ホームレスに成り果てた37歳の耕平。契約結婚のため訪れたモンゴルの地で出会ったダワ。はじめは金のための書類上だけの夫婦のつもりだったが。

  • ごく普通に暮らして来た木崎耕平は、商品先物取引に手を出し多額の借金を背負う。仕事、家、家族を失い、路上生活者となった矢先に、ある男から偽装結婚の戸籍貸しという儲け話を持ちかけられる。
    日比谷公園から始まり、モンゴル、ロシアと、逃れられない流れに流される耕平が辿りついた場所とは。


    基本的に本はタイトルで買う、中を開きもせずに掴んで帰る派です。
    ちゃんと会計してからですよ。
    この作品は前情報、先入観なしに出会えた予想外ラッキー秀作。

    ハード・ボイルド。
    カテゴリに当てはめるならば、このジャンルになるのだろうが、独特のテンポ感や主人公の設定を考えると微妙にラインの斜め上を行くような気がする。
    耕平と共に流され、章を読み進める度に感じ方は変化していき、完全に感情移入した後のラストは見事にchill outできる。

    耕平という主人公の設定も絶妙で、巻き込まれた末に至る、というストーリーにはなっておらず、読んでいる自分ではない、耕平という男でなければエンディングまで辿りつけなかっただろうというギリギリのバランスで出来あがっている。
    彼は銃の扱いに長けた私立探偵でもなく、咄嗟の機転で愛する者の危機を脱するスーパーヒーローでもない。精密機器の技術開発会社の元社員で、つい先日まで家庭のあった一般人である。
    その経験や技術を駆使して大活躍することもないのだが、何故かこの男でなかったら・・・と唸ってしまう“バランス”があるのだ。

    間違い無くハード・ボイルドなのだが、僅か1ヶ月足らずという短い期間の物語なのだが、長い長いロード・ムービーを観た後のような、安堵と悲しみで涙のこぼれてしまう読後感を与えてくれる不思議な作品。

    流される、翻弄されるとはどういうことなのか。
    そして、それに抗うはどういうことなのか。
    失うことと、棄てることはどれだけ異なることなのか。

    読む人によって様々なテーマが見つかりそう。
    もしかすると、「地球の歩き方」のようなガイド・ブックにもなり得るかもしれない。


    盛田隆二、その他の著書

    ・ストリート・チルドレン
    ・リセット
    ・おいしい水

    などなど。

  • 盛田隆二氏がハードボイルドっぽくロードノベルを書くとこうなるんだ.....って感じで、かなり面白かったです。
    賛否両論あるラストは、「その先は読者の想像に任せる」.....って、盛田氏のお得意のパターンw(「夜の果てまで」も「二人静」」もそうですね)
    私は「実はダワは生きていいて、後日再会をは果たす....」ってのをマジに信じていますwwww

  • 2004 書き下ろし長編小説

  • <--2007/07/13-->

  • 誰もが持つ“人間の弱さ”を肯定的に捉えてる点が読者の胸に響きます…
    <br>詳しい感想は<A HREF="http://torakichi.jugem.cc/?eid=150 ">こちら</A>

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著者プロフィール

一九五四年、東京生まれ。九〇年『ストリート・チルドレン』で野間文芸新人賞候補、九二年『サウダージ』で三島由紀夫賞候補。『ぴあ』の編集者を経て、九六年より作家専業。二〇〇四年に刊行された『夜の果てまで』は三十万部超のべストセラーとなる。著書に『残りの人生で、今日がいちばん若い日』(祥伝社文庫刊)、『いつの日も泉は湧いている』『蜜と唾』など多数。

「2020年 『焼け跡のハイヒール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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