幸いなるかな本を読む人 詩集

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  • 毎日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620318936

感想・レビュー・書評

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  • 2008年刊です。
    二十五冊の本をめぐる二十五篇の詩からなっています。

    「檸檬を持っていた老人」(梶井基次郎『檸檬』)
    カジイモトジロウ。人は死ぬが、
    よく生きた人のことばは、死なない。
    歩くことは読むことである。

    「終わりのない物語」(アンデルセン『雪の女王』)
    鏡のガラスの粒が入りこんだ
    少年の目は、もはや何も見なかった。
    それでも目は、言葉をもとめたが、
    読みたい言葉は、どこにもなかった。
    心臓はまるで氷の塊のようだった。
    けれども、寒さは感じなかった。
    心臓に突き刺さった鏡のかけらが、
    ふるえる感受性を奪ったからだ。

    「幼年時代の二冊の本」(ヴァルター・ベンヤミン『ベルリンの幼年時代』)
    いったい、その本の名は何だったのだろう?
    幼年時代のなかには、二度と
    ふたたびは、見いだせない本があるのだ。

    「魂とはなんだ?」(中島敦)
    心憂る日には、中島敦を読む。
    いったい魂とはなんなんだ、と考えながら。

    「深林人知らず」(夏目漱石『草枕』)
    景色に、苦しみがないのは何故だろう。
    苦しんだり、怒ったり、騒いだり、
    泣いたりは、人の世につきものだ。

    「かつ消え、かつ結びて」(鴨長明『方丈記』)
    八百年昔にも、星はおなじことを言った。
    ただ、静かなるを望みとし、
    愁へ無きを楽しみとす、と。

    二十五冊の本のうち、既読なのは、梶井基次郎『檸檬』、アンデルセン『雪の女王』、中島敦『山月記』しかありませんでした。(教科書に出てくる本ですね)
    あと、漱石くらいは読んでいないと恥ずかしいかなと思いましたが、この詩集を読むだけでも、知的になったような気分を味わえました。
    図書館に返却するのが惜しいので、抜き書きしました。

  • 読書エッセイを読んでそこから読む本を探す参考にすることがありますが、この詩集は短い詩の中に作品の世界観や著者の感じた魅力がつまっており、未読の作品でも既読の作品でも楽しめる一冊となっておりました。
    手元に置いておきたくなる1冊です。

  • 梶井基次郎の檸檬、京都丸善、なつかしい。
    「檸檬」という漢字のタイトルにひかれて、買った本、
    京都丸善閉店したんだ。今は丸善&ジュンク堂だそうだ。

  • 長田弘さんの本を探していて見つけた、詩集。
    ジャケ買いじゃないけど、題名にひかれて読んでみました

  • 大きな欅の木の下で、が一番自分のためになったかな、と思う。
    でも、それよりも先にこの作品の基となった古典を読まなければならないな、と痛感。

  • 第24回 2009(平成21)年 受賞作
    請求記号:MP/オサダ/2008
    資料番号:019027713

  • 詩人に愛される本というのは偉大だな、そして幸せだな。

  • 長田弘の季節がやって来た、ということなのですよ。
    触れたくなるなる、長田さん。

    この人の本にまつわるエッセイや詩集に触れるといつも姿勢を正される。
    自分自身の、本に対する姿勢だ。
    こんな姿勢をもって本に向かうのとそうでないのとではずいぶん違う。
    それは、人生の豊かさに、そのまま直結するほどの大切さなのだ。

    今回も姿勢を正される。
    私も、真面目に本と付き合いたい。
    自分が感じることを、決して怠けないこと。
    感じる、ことには努力が必要だ。
    自然に感じられること以上に、対象物にたいする誠実が必要だ。

  • 久しぶりに読んだ長田弘の詩集『世界はうつくしいと』がよかったので、比較的最近の詩集をもう一冊借りてきてみた。

    25冊の本をめぐる25篇の詩は、わるくはなかったけれど、私には『世界はうつくしいと』のほうがよかった。

    「そのように、人は」の最後のところ、


    人は死んでも、また生まれてくる人がいる。
    それは何だと、あなたは思うか?
    わたしは、それが人の歴史だと思う。

    (36ページ)

    ここが私の心に残った。

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著者プロフィール

長田弘(おさだ・ひろし)
1939年、福島県福島市生まれ。早稲田大学第一文学部独文専修卒業。詩人。65年、詩集『われら新鮮な旅人』でデビュー。98年『記憶のつくり方』で桑原武夫学芸賞、2009年『幸いなるかな本を読む人』で詩歌文学館賞、10年『世界はうつくしいと』で三好達治賞、14年『奇跡―ミラクル―』で毎日芸術賞をそれぞれ受賞。また、詩のみならずエッセイ、評論、翻訳、児童文学等の分野においても幅広く活躍し、1982年エッセイ集『私の二十世紀書店』で毎日出版文化賞、2000年『森の絵本』で講談社出版文化賞を受賞。15年5月3日、逝去。

「2022年 『すべてきみに宛てた手紙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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