- Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620324388
感想・レビュー・書評
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私たちは痛いほどわかっていた。今日という日が特別な旅立ち前の最後のひとときであることを。もうこれが「いつも」ではなくなってしまうことを。(「雨の夜」より)――
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本書は日常のちょっとした幸せを描いた楽しいエッセイ…のはずですが、読んでいるとまるで人生終盤に読む手紙のようにしみじみと体に染み込む感じがあり不思議です。
自分が引っ越しという〈非日常?〉にいるタイミングだからか、この街で過ごす何気ない日常が急に特別なものに感じられてきました。
毎日っていいな、と思える本です!
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あとがきに書いてあった言葉そのままだけれど、
どこから読んでもちょっと懐かしい、少し幸せな気持ちになれるようなエッセイ。
今まで読んだばななさんのエッセイは
少し悲しい話も多かったけれど、今回は少し笑えるおもしろいものがたくさんあった。
わたしも段取りを気にしがちだけど、何も予定のない旅をしてみたいな。
変な旅というお話は実際いきたくはないけれど、
思わず声を出して笑った。 -
よしもとばななさんのエッセイを読んだ時の
暖かくしっとりしていて、でもほの寂しい気持ちになるあの感じが欲しくて読みました。
期待通りの読了感。
息子さんが生まれてから結構長い間小説を出すことがなかったあの期間、
こういうことを考えていたのだなぁと思いました。
最中にいる時は語れないよね、やっぱり。
よしもとばななさんの作品は小説もエッセイも
感情の手触りを丁寧に描かれるのだけれど
悲しかったり辛かったりすることについては
「とても辛かった」とか「とても悲しかった」というような
簡素で分かりやすい言葉で表現されるような気がする。
現実は人それぞれ辛かったり悲しかったりするから
その言葉で連想される自分の辛さや悲しさの色でそれを補完して
わざわざ本の中で新しい悲しさを得て落ち込まなくていいように
そしてできればその中から美しいものを見つけて強く生きられるように
そんな祈りのようなものを私は感じるのです。 -
吉本ばななのエッセイを読むと、人と人との縁とか、街との縁とか、お店との縁とか、生と死とか、を考える。
出会いって不思議だ。
生きていると、いろんな人に出会う。私はまだ吉本さんの半分しか生きていない。
でも、年に数回しか会えなくてもずっと縁が切れないだろうなと思う友人がいるし、尊敬していて大好きな、人生の先輩もできた。遠くに住んでいても相談事ができる、絶対的信頼のおける人もいる。もちろん大切な、大切なと敢えて言うのもなんか変な感じがするくらい当たり前に大切な家族もいる。
それってとても幸せなことだ。
悲しいことや嫌なこともあるけど、「毎日っていいな」と思えるように、前を向いて生きていくぞ。 -
そもそもばななさん好きなのだけど、
今回は自分に一番染み込むタイミングで読めたこと
よかったなあ。 -
たまにこの人の本を読みたくなるときがある。
なんと言ったらいいか分からないけれど、この雰囲気にひたりたくなる。 -
毎日新聞日曜版で、連載が終わる頃にいいなあと思って読んでいたので、一冊の本にまとめられたのでさっそくポチ。
仕事上のこととか、世情のこととか、とかく腹の立つことが多い毎日なのだけれど、毎晩寝床で少しずつ読んでいると、そんな腹立ちの知らぬ間に収まって、また明日も頑張ろという気持ちにさせられる。
「うんうん、あるある、こういうことってあるよなあ」と何度も頷かされるお話ばかり。
「冷たくてきれいな水に触れたときのような感じ」という言葉が、とくに心に残った。いい言葉だなあ。 -
毎日新聞の投稿をまとめたもの。小さな喜びが集まってて、静かな沁みる感じの話だった。特に「計画的な人生」が好き。
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前は意識しなかったのだけど、ばななさんのエッセイを読むとき、吉本隆明さんのことがいつもすみっこにあるようになりました。
それとは別に、うまく言語化できないのだけど、ばななさんが書く文章がまとう空気感、すごく落ち着くんです。
それってやっぱり、戦後最大の知の巨人に育てられたことが、大きいんですよね。
日常に溶け込む哲学、いいえ、日常とは哲学たということを、平坦でやわらかなつづりで教えてくれる、どこか深呼吸のようなエッセイです。