あなたの言葉を

著者 :
  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620328058

感想・レビュー・書評

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  •  辻村深月さんの『図書室で暮らしたい』には、日本経済新聞の週刊エッセイが収められていました。本書は、毎日小学生新聞に約4年間毎月連載した記事をまとめたもの。その新聞のコーナー名をそのまま本書のタイトルにしたのだそうです。
     4章立てで全43編。平易な文章で読みやすく、いつでもどこからでも紐解けます。

     温かく優しい筆致で、語りかける言葉・文章が読み手に染み渡ります。何よりも上から目線ではなく、子どもの目線に立って共に考えてみましょう、というスタンスが心地よいです。
     借り物でない自分の言葉をもつことの大切さを説き、それが将来の自分を支えて気持ちを伝える武器になるのだと‥。共感以外の何ものでもありません。 
     友だち関係で悩んだり、集団の中での自分の立ち位置に迷ったりしている子たちには、心に響き気持ちが軽くなるでしょう。

     大人が読んでも頷ける部分がかなりあって、我が身を振り返り、どれだけ自分の言葉をもち、どれだけ書いたり伝えたりできていたか、全く心許ありません。「内なる言葉」はコミュニケーション以前の言葉で、考えを深めるために大事ですね。年相応の「内なる言葉」をもちたいと思う此の頃です。

  • 図書館に早くから予約しておいたので、早目に借りられた。ありがたい。

    辻村深月さんは、私より一回り以上も年下なので無理な話なのだが、本書は、自分が小学生の頃に読みたかったな。
    私の場合は友達関係のことではなく、親のこと、運動が苦手だったことで色々嫌なことがあった。
    運動が苦手で鈍臭くて、運動会が大嫌いで、短距離走はビリにしかなったことがなくて、水泳もダメだった。
    まさか自分に40歳代になってから長距離や長時間、好きで走るようになる未来が来るなんて思ってもみなかった。
    それは小学校の体育の授業が全部速筋を使い、瞬発力やいわゆる運動神経と言われる類のものを求められるばかりだったせいであって、自分は遺伝的にも遅筋の人であり、持久走なら向いているのだと教えてくれる大人はいなかったからだ。
    (私が小学生の頃には持久走は無かった。
    中学生の時に800m走と10000m走があり、運動で初めてビリではなく真ん中くらいにいけた時は、自分でもびっくりした)
    運動が苦手で大嫌いで鈍臭かった小学生の頃の私に、この本を読ませてやりたかった。

    他にも、同調圧力や「友達」について苦しく思っている小学生にも、この本はきっと救いとなることだろう。

    もしも辻村深月さんが小学校の先生だったり、スクールカウンセラーだったりしたら、彼女の周囲では救われる児童が多くいたかもしれないが、辻村さんが作家であるお陰で、全国の悩める小学生に彼女の言葉が行き渡るって凄いことだし、(ちょっと言葉が変だけど→)一番効率がいいなと思ってしまった。

    元は毎日小学生新聞に連載されていたものということだが、「本」てやっぱりいいよね!を実感した。

  • 辻村さんの言葉が子どもへの愛情にあふれていて、読んでいてすごく癒された。子どもに向けてのメッセージなのだけれど、自分の子ども時代にまでさかのぼって、過去の傷やモヤモヤしたことを優しく包み込んでくれる。

    また、辻村作品の小話や、本を書くこと、本を読むことについても語られているのも魅力的だった。
    『この夏の星を見る』は、このエッセイが新聞に連載されているときに執筆・発表されたもので、私はまだ読んだことがないので(積読本をなんとかしてからになるけれど)読みたいなと思った。

  • 辻村深月さんが毎小新聞で連載しているエッセイをまとめた一冊。小学生を対象に書かれたものですが、年齢に関係なく理解できる•感じられる何かがたくさんあると思います。

    丁寧な言葉のひとつひとつが、するりと胸の内に入りこみ、暖かな気持ちになれました。著者の小説ではいつも緻密な心理描写に驚かされ、「どうすればこんな風に考えられるのだろう?」と不思議に思っていましたが、本作を読んで辻村深月さんの視点が少し垣間見えた気がします。

    これからも一読者として作品を楽しみにしています!

  • 辻村深月さんの毎日小学生新聞連載をまとめたエッセイ集。
    辻村さんは、文章を書くこと、読むことが本当にお好きな方なんだなということが伝わってくる一冊。

    特によかった章をいくつかピック↓
    ・今年はどんな年?
    一つの物事に対して、受け止め方は人それぞれで、周りに合わせる必要はないんだよと、優しく教えてくれる。

    ・水泳の授業
    子どもって大人が思う以上に大人の顔色を伺ってしまう。大人や周りの反応をみて、こういう反応をするのが"正解"だろうと思い、そのように振る舞って徐々に自我を失ってしまいがちだけれど、"正解"なんて無いよということを教えてくれる。

    ・努力できる才能
    "「努力家」はほめ言葉なようでいて、実は「才能がない」と言われているのと同じなのではないか、と思ったのです"これ大共感。私も、才能派のお兄ちゃんに対して、いつも努力家の◯◯だね、と両親から言われ、密かに傷ついついたから、これを読んで少しモヤモヤが解消された。

    ・フェイクとリアル
    "世の中にあふれる、 「うそ」 や 「フェイク」。もしあなたがそう思えるものに出会った時には、どうして今、そんな「うそ」が出てきたのか、立ち止まって考えてみるとよいのかも。その情報が本当に「うそ」かどうかを見極める力も、そういうところから芽生えるのかもしれません"これは大人の私にもいいアドバイスになった。

    ・傷つけるのはだれ?
    『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』読みたい。そして、エンパシーに関する書籍もブレイディみかこさん書かれていた気がするのでそちらも読みたいと思う。


    最後に
    辻村さんご自身が子供だった時に感じていたことを心の中に持ち続け、大人になっても当時の目線で物事を捉え、ご自身のお子さんと触れ合っている優しさ、温かさがこちらにまで伝わってきた。
    辻村さんのお子さんを羨ましいなと感じつつ、こうして作品を通してその優しさをお裾分けしてもらえるだけでもありがたいことだなと思った。

  • すごく丁寧に言葉が紡がれています。自分が小学生の時にこの本に出会っていたら、心の拠りどころになっていたに違いないでしょう。もちろん大人が読んでも、あなたはそのままでいいんだよ、自分の気持ち・言葉を大切にねって温かく背中をおされているような本で、読んで良かったと思いました。

  • 矛盾こそこの世の真実って思えた。辻村さんはバランス感覚がいい。シンパシーに注目してたけど、エンパシーかぁ。いじめの加害者が元は正義感から動くって考え方、目から鱗。でもカスハラもそうって聞いたことある。

  • 今月から大学生の私が読むには少し遅かった気もしますが、読みました。
    この本は、毎日小学生新聞の連載記事をまとめたものです。短いエッセイが40以上収録されていてとても読みやすかったです。
    この本を読んで、人の意見=自分もそうであるという前提でしか今まで考えてこなかったことに気づきました。「自分の言葉で」の大切さを知ることのできる本です。
    苦手だけど好き!があってもいいという考えには感動しました。苦手=嫌いと思って私は本を避けていたのかも…そして、お話にもあった、『大人からの「本を読め」に無意識の期待が込められていること』に気づき反抗したくなったからかも笑
    最近、私は学びたいことを決めて将来を見据えた行動を取らなきゃ!無駄なことなんてしてる暇がない!と思っていたけれど、「何かのためとか役に立つ、立たない」とかで物事を決めてはいけないというお話にはハッとさせられました。焦りすぎもよくないですね、、
    主に小学生向けに書いているお話ですが、大人になっても思わぬ気づきに出会える素敵な本だと思います。
    生き急いでしまう時に心を落ち着かせるために読みたいです。

  • 「この本を読む”あなた“が、「あなたの言葉」を見つけていくためのお手伝いをこれからしていけたら、とてもうれしいです」
    毎日小学生新聞の連載記事だったものなので、小学生に向けたあたたかくやさしい口調で書かれている。

    特に、ずっと会っていなくても、久しぶりの再会で昔の距離感に戻れた友達の話が良かった。良かったというか、すごく安心できた。
    私には、何かあったわけじゃないのに連絡を取らなくなって会わなくなってしまう人がたくさんいる。というか、人間関係が3年周期。卒業や異動をきっかけに、そのときの友達や同僚とはつながりがほとんどなくなる。定期的に会うって難しいし、しょうがないのかなと思っていながらも、なんだか寂しくてせっかくできた縁がなくなってしまう気がずっとしていた。
    例えば、結婚式に呼べるような友達って何人いるだろう?とか考えると、全然いない気がしちゃう。たしかにあの頃は仲が良かったけれど、今、呼べるような関係なのかな?と迷ってしまう。その点、周りの人は結婚式にじゃんじゃん友達を招待している。そういう人たちってやっぱり定期的に会って仲良くしている人なのかな?そうするべきなのかなって悩む。
    でも、別れても、ずっと会えていなくても、再会して当時のまま話ができたり歳を重ねたからこその新しい関係を築いていけたりするんだと辻村さんから教えてもらえた。
    すごくホッとした。やっぱり辻村さんは私のバイブルだなぁ

    ◯「自分の言葉」は、無理にのみこむ必要もなければ、同じように口に出すことを強制されるものでもありません。ただ、あなたの中でその成長を止めないように「考えること」「思うこと」にブレーキをかけないで。

    ◯なるべく言葉に頼らず、わかりやすい表現にしようと思うと、かえって、たくさんの言葉を実感として自分が理解していることが必要になってきます。

    ◯人は、同じ一つの事実でも自分の見たいように、感じたいように見る、読む、という無意識の癖のようなものがあるからです。

    ◯憧れ、夢中でまねをするうちに、きっとそれだけにとどまらない自分だけの発想や、自分なりの色が出てくる。

    ◯運動をすると体が鍛えられるのと同様に、本を読むと心が鍛えられます。ただの文字にしか過ぎないはずの文章から、誰かの姿を想像したり、思いを感じ取ったりできるのはすごいことですし漫画や小説のような物語を通じて自分とは全然違う人の人生を生きることができたり、遠い世界の誰かと友達になれたような気持ちにもなれる。

    ◯「何かのため」とか、「役に立つ」「役に立たない」で物事を決めてしまうと、ひょっとしたら、長い目で見たら「役に立つ」ことを今から潰してしまうことにだってなりかねません。

    素敵な言葉ばかり。すごく前向きになれました!


    「この先の未来がどうなるかわからないフアンヤ焦りの中で、その時々の自分が揺れながら決断したからたどり着けたこと、意味があったことがきっとたくさんありました」

  • 辻村さんの言葉は本当に癒されるし、自分の中で言葉に出来なかった想いを的確に掬い出してくれる。
    読んでて『そうそうそれなのよ!』とか『分かるーーー…』と何度もなった。
    共感もあれば、辻村さんの物事を捉える視点って凄くいいな…いいお母さんだなと感じ入る事も沢山あった。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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