平和のために戦争を考える―「剥き出しの非対称性」から (叢書インテグラーレ)
- 丸善出版 (2019年1月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
- / ISBN・EAN: 9784621303559
作品紹介・あらすじ
戦争や、テロ・人質殺害などの悲劇的状況で、命の価値の極端な不均衡――「剥き出しの非対称性」が生じている。命の危機を目の前にした極限の状況で「より少ない悪」を選ぶことは可能なのか。戦闘用ドローンなど現代の「戦争の悪」なども取り上げ、応用倫理学の視点から、「悪」をどう考え、どう向き合うのか、平和に向けあらたな視座を提示する。
感想・レビュー・書評
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2020I022 391.1/Ma
配架場所:A2 東工大の先生の本詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私たちが人質の殺害を道徳的悪と考えるもう1つの理由は自身の死のプロセスや死後のことが、本人の意思にかかわらず他者によって勝手に決定されてしまうことにあるだろう。ある人が、いつ、どこで、どのように死を迎えるかを自ら決定し、実行することは難しいかもしれない。では、もしその人が死を迎えることを自ら決定し、ある特定の日時と場所で、ある特定の方法で死を迎えることができたとしよう。もし自ら選択した自発的な死が他者に深刻な危害を久絶えないのであれば、その死は道徳的非難に晒されるとは限らない。しかし、人質の殺害は全く異なる。人質と人質を取るものとの関係には「剥き出しの非対称性」を見ることができる。いつ、どこで、どのように人質を殺害するかは人質をとる者の手に委ねられており、ほぼ絶対の決定権を有している。逆に人質は人質をとる者の前にはまったくもって無力である。つまり、人質の殺害は、人質の自律、尊厳、自己決定に対する究極の侮辱である。ここに人質を殺害することの道徳的悪がある。
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041||H62||So=17